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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.238

失われた文化が息づく“ユートピア”としての台湾90’s青春グラフティ『あの頃、君を追いかけた』

anokimi_01.jpg落ちこぼれと優等生との恋愛を描いた台湾映画『あの頃、君を追いかけた』。アキレスと亀のように2人の想いはなかなかひとつに重ならない。

 日本映画からストレートな青春ものが消えて久しい。リアリティのある若者像を描くためには、『桐島、部活やめるってよ』(12)のようにレイヤー化された学園生活を俯瞰して見つめる視点か、もしくは仲里依紗主演の『時をかける少女』(10)のように青春という言葉がまだ輝きを放っていた時代にタイムスリップするなどの設定が必要となってくる。日本では空席状態となっているこの席を近年温めてきたのが『サニー 永遠の仲間たち』(11)や『建築学概論』(12)といった韓国映画だろう。台湾で2011年に大ヒットを記録した『あの頃、君を追いかけた』も日本映画が失ってしまった“キラキラした青春”を描いた作品。本作でデビューを果たしたデギンズ・コー監督は1978年生まれ。『ドラゴンボール』『ジョジョの奇妙な冒険』など日本のコミックやアニメと共に育った世代だ。コー監督の自伝的ストーリーだが、日本人がデジャヴ感を覚えるほど親しみを感じさせるものになっている。

 『あの頃、君を追いかけた』は、90年代の台湾高校生たちを主人公にした青春グラフティもの。台湾の中西部にある街・彰化で暮らす高校生コートン(クー・チェンドン)は勉強はろくにせず、『ドラゴンボール』や『はじめの一歩』といった日本の格闘漫画に夢中になっている。同じクラスの仲間であるアハ(スティーブン・ハオ)やマタカキ(ツァイ・チャンシエン)たちも『スラムダンク』は欠かさず読んでいる。もうひとつ、コートンたち男子が夢中になっている存在が、クラスでいちばんの優等生チアイー(ミシェル・チェン)だ。教室でふざけてばかりいるコートンたちを子ども扱いしているが、そんな澄ました表情もまたコートンたち男子をグッとさせている。

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