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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.267

札幌で大ヒット! お金で買えない幸せの在り方『KAZUYA 世界一売れないミュージシャン』

kazuya01.jpg札幌でソロミュージシャンとして歌い続けるKAZUYA。映画出演料=呑み代だったため、いつもホロ酔い状態でインタビューに答える。

 メロディはキャッチーだし、声もいい、ルックスだってかなりイケてた、地元のライブハウスを賑わせ、周りからは「きっと全国区に駆け上がっていくだろう」と期待されていた。でも、結局はメジャーデビューを果たすことなく、やがてバンドは解散してしまった。多分、そんなミュージシャンたちはごまんといるはずだ。彼らがプロデビューできなかったのは何故だろうか。時代のニーズに合っていなかったのだろうか、それとも「何が何でもプロデビューしてやる」という執念が足りなかったのだろうか。『KAZUYA 世界一売れないミュージシャン』はプロデビューすることなく地元・札幌で地道にライブ活動を続けている元PHOOLのボーカリスト・KAZUYAを1年5カ月にわたって密着取材したドキュメンタリー映画だ。インディーズシーンで勢いのあったPHOOL時代と違って、KAZUYAのソロライブにはわずか数人しか客は集まらない。月収は3万円あるかないか。実質、同棲中の彼女に食べさせてもらっているというヒモの生活。でも、51歳になったKAZUYAの弾き語りは何とも言えない味わいの境地に達している。売れることの意味、自分の好きなことを続けていく喜びと煩わしさ、そんな諸々のことをじんわりと考えさせてくれる映画である。

 まず映画はKAZUYAがプロデビューできなかった理由を探っていく。KAZUYAを中心にしたPHOOLは1990年代の札幌で絶大な人気を誇っていた。確かにバンド時代の曲を聴くと耳馴染みのよいメロディとナイーヴな歌詞に惹き付けられる。札幌のファンはみんなプロデビューすることを疑っていなかったし、バンドのメンバーも東京のレコード会社から声が掛かるのを待っていた。でも、KAZUYA以外のメンバーは仕事があったため自分たちから積極的に打って出ることはせず、ライブ活動は道内に限定していた。KAZUYAが「東京に出て、勝負しようぜ」とメンバーをけしかけていたら違った状況になっていたかもしれない。カメラの「なぜ、全国ツアーに出なかったの?」という質問に対する答えがKAZUYAという人物のパーソナリティーを物語っている。「ライブは楽しいと思うよ。でも、知らない街に行くのが怖かった(苦笑)」。そうこうしているうちにバンドの人間関係がぎくしゃくするようになり解散へ。KAZUYAはソロミュージシャンとして弾き語りを続けるが、10年前にソロアルバムを1枚出したきり。どうやら、面倒臭いことは極力やりたくないという性格であることが分かる。

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