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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.263

“オナニー”は恋人と神に対する冒涜行為なのか? 古来よりの命題に挑んだ笑撃作『ドン・ジョン』

donjon01.jpg『ドン・ジョン』を初監督したジョセフ・ゴードン=レヴィット。ビッチなヒロイン役は当初よりスカーレット・ヨハンソンをイメージしたもの。

 世間的にはまったくどうでもいい問題だが、男性にとっては重大な問題がある。それは奥さんや恋人がいる男性がこっそりエロコンテンツを鑑賞してオナニーをした場合、浮気になるのかどうかということ。多分、女性に質問したら「バッカじゃないの!」と一笑に付されるのがオチだろう。しかし、女性が「もうお腹いっぱい」と言いながらも「デザートは別腹だから」とスイーツに手を伸ばすように、男性にとってオナニーはセックスとは異なる別腹みたいなもの。かといって奥さんや彼女に「あっちさえちゃんとやってくれれば別に構わんよ」と公認されるのは、ちと違う。あくまでも内緒の秘め事、密やかな愉しみでありたいのだ。こんな男性にとって切実でありながら、今まで誰も口にしなかった問題を堂々と映画化したのが、ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演・監督作『ドン・ジョン』。『(500)日のサマー』(09)や『インセプション』(10)などに出演したイケメン俳優のジョセフが、大マジメかつユーモアたっぷりに“オナニーの自由化問題”を論じているなんて親近感が湧くではないか。

 独身青年のジョン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は甘いマスクで清潔好き、ジム通いが趣味というマッチョ野郎。シャツの上からも分かる筋肉質のボディで、女性たちを虜にしてしまう。男友達と夜ごとクラブに繰り出しては、お目当ての女性を口説き落とせるかどうか賭けを楽しんでいる。まぁ、だいたいの女性はモノにできる。現代のドン・ファンこと“ドン・ジョン”が彼の愛称だ。日替わりの美女たちとベッドを共にするジョンだったが、もうひとつ欠かせない日課が彼にはあった。それは自宅のパソコンのエロサイトを鑑賞しながらのマスターベーション。もちろん生の女性とのセックスもいいが、マスターベーションだと自分の好きなタイプの女性を相手に、自分の好きな体位で、しかも自分の好きなタイミングでイクことができる。ジョンに言わせれば「正常位なんて、女の子の胸がぺちゃんこになるサイテーの体位」らしい。ジョンにとっては、オナニーこそがイマジネーションの世界で自由自在に楽しむことができる至福の時間なのだ。

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