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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.301

“伝説の俳優”松田優作の魂を受け継ぐ『百円の恋』デブニートが放つ、下流人生から起死回生の一撃!

hyakuennokoi01.jpg“伝説の女優”のレベルに達しつつある安藤サクラ。松田優作賞を受賞したシナリオ『百円の恋』を自分の肉体を使って具象化してみせた。

 熱い映画だ。体中のアドレナリンがざわめく、見る強壮剤と言っていい。見終わった瞬間に、劇場から走り出したくなる。11月から公開されているロードムービー『0.5ミリ』で“映画菩薩”と化した安藤サクラが、最新主演作『百円の恋』では“女阿修羅”へと変貌を遂げる。本作で安藤サクラ演じるヒロイン・一子が戦いを挑む相手は“人生に対する諦め”だ。たぷたぷしたお腹の贅肉にきっぱり別れを告げ、自分の前に立ち塞がる“どうにもならない人生”とボコボコの死闘を繰り広げる。生半可な覚悟では勝てないこの強敵を相手に、ずっと下流人生を歩んできた一子はリング上で堂々と打ち合う。一子のこの大勝負は観客を魅了し、興奮のるつぼへと引き込む。他人事とは思えず、拳を突き出している自分がいることに気づく。

 一子(安藤サクラ)は32歳、独身。小さな弁当屋を営んでいる実家で、ニート生活を送っている。離婚して子連れで帰ってきた妹・二三子(早織)の息子と1日中ずっとTVゲームをしている。弁当屋を手伝う気はまるでなく、腰回りにはだらしなく肉がまとわりついている。一子のあまりの自堕落さに、二三子がブチ切れた。ジャージ姿のまま実家を飛び出した一子は、仕方なく100円ショップの深夜勤務に就き、近所の安アパートでひとり暮らしを始める。深夜の職場はダメ人間が集う下流社会の縮図だったが、それでも初めての労働は一子に心地よい刺激を与えた。そんな中で一子はバナナマンと呼ばれる客と出会う。いつもバナナしか買わない狩野(新井浩文)は引退を間近に控えたプロボクサーだった。最後の試合でボロ雑巾のように叩きのめされる狩野を観て、一子は自分の体の奥で火が点くのを感じた。狩野が辞めた後のボクシングジムに通い、無謀にもプロデビューを目指してトレーニングを開始する―。

 30年以上生きてきて、熱くなれるものに一度も出会うことのなかったヒロインが、生まれて初めて命懸けになれるものに出会うという極めてシンプルなストーリーだ。2012年に新設された脚本賞「松田優作賞」の第一回受賞シナリオの映画化。下流人生からの一発逆転を狙う一子と同様に、脚本家の足立紳、武正晴監督にとってもこの作品は起死回生を狙った勝負作である。

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