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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.322

人工知能搭載ロボットに生存権は認められるか? サイバーパンクなホームドラマ『チャッピー』

chappie_01.jpg日本ではPG12での公開となる『チャッピー』。スラム街で生きるロボット・チャッピーの体験学習は日本のティーンたちの目にどう映る?

 パッと見、ロボットのチャッピーはあまりかわいくない。元々、廃棄処分になっていたロボットに人工知能ソフトをインストールしたもので、生まれて間もないのに中古感が漂う。『機動警察パトレイバー』のイングラムみたいにウサ耳型センサーがぴょこんと出ているけれど、表情は乏しい。ボディにはセンスの悪い落書きがあちこちに施してある。正直なところ、チャッピーはドラマの主人公としては感情移入しづらいキャラクターだ。でも、そんなチャッピーが自分に残されているバッテリー(=寿命)があと5日間で切れると知って、叫ぶ。「ボクは死にたくない!」と。ロボットの悲痛な叫びに、観ている我々人間の心の中で何かがカチッと動き始める。映画『チャッピー』は人工知能が搭載された一体のロボットの生存権をめぐるSFドラマであり、同時に新しい家族が誕生する過程を追った新感覚のホームドラマでもある。

 脚本&監督は、『第9地区』(09)で衝撃的なデビューを飾った南アフリカ出身のニール・ブロムカンプ。『第9地区』はアパルトヘイト問題を人間とエイリアンの関係に置き換えたアイデアが秀逸だった。『チャッピー』も治安の悪さで知られる南アフリカの首都ヨハネスブルグを舞台に、ロボットのチャッピーの目を通して現代社会を鋭く洞察する。時代設定は2016年とすぐそこ。明日、起きてもおかしくない出来事が描かれている。

 人間の創造主が誰なのかは曖昧だが、チャッピーの創造主(メーカー)ははっきりしている。兵器製造を手掛ける大企業トテラバール社に勤めるインド系の若い科学者ディオン(デーヴ・バデル)が生みの親だ。ディオンはヨハネスブルグでもさらに犯罪率の高いスラム街をパトロールするロボット警官チームの開発者。死を恐れずに犯罪に立ち向かい、汚職に手を染める心配のないロボット警官は、人材不足に悩む警察庁に大喜びで迎え入れられた。ミッシェル社長(シガニー・ウィーヴァー)に褒められ、ディオンは鼻高々。次は警官ロボットに人工知能を搭載することで、より高度な人間のパートナーにしようとディオンは考える。だが、ミッシェル社長は「ロボットに知能は不必要」と却下。そこでディオンは会社に無断で廃棄ロボットに人工知能をこっそりセットしようとする。

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