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「クリティカル・クリティーク」特別編 つやちゃん×韻踏み夫

反レイシズム以外の政治的ラップにフェミニズムとの対峙… HIPHOP批評家バトル勃発!

文=つやちゃん

 ライター・批評家の韻踏み夫氏による書籍『日本語ラップ名盤100』(イーストプレス)が話題を呼んでいる。国内のヒップホップ作品について名盤100枚+関連盤200枚を掲載した充実のディスクガイドだが、興味深いのはその選盤と簡潔にまとめられた紹介、そして鋭い批評だろう。膨大な作品に描かれた政治性を1枚ずつ丁寧に暴いていくことで、そこで表現されてきた音楽に価値づけを行い、これまで見えてこなかった新たな日本語ラップ史を紡いでいく。

 女性のラップ/ヒップホップ作品を論じていく本連載「クリティカル・クリティーク」では、今回特別編として韻踏み夫氏へのインタビューを実施。『日本語ラップ名盤100』に投影されているフェミニズム視点はもちろん、この書籍がどのような価値観のもとで書かれたのか、あらゆる方向から紐解いていった。

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『日本語ラップ名盤100』 韻踏み夫(イーストプレス)

※――はつやちゃんの発言です。

――まずは、今回書籍を刊行されるに至った背景を教えてください。

韻踏み夫 2017年6月号のミュージックマガジンで、日本のヒップホップ・アルバム・ベスト100という企画があって。自分も含めたくさんのライターが決めたランキングを機械的に集計したものだったんですが、結構偏りを感じたんです。そこで選評に「これとは別に、編集された日本語ラップのランキングも必要である」という旨を書いたんですが、それを(今回の出版元である)編集者の方が見たらしくて。じゃあ書いてみますか?と声をかけてもらったのが始まりです。最初は誰かを誘って複数人で書くことも考えたんですが、それだと時間もかかるし、自分で責任を持って書こうと決めました。

――執筆にあたり、どのような書籍にしようと思いましたか?

韻踏み夫 新しく日本語ラップに入門する人に届けたい、これを読んだらヘッズの仲間になれる本にしたい、と思いました。なので、日本語ラップオタクの価値観を尊重したいと。

――実際に書き進めるにあたり、特に難しかった点はどこでしょうか。

韻踏み夫 やっぱり選盤ですね。セレクトだけで1カ月かかりました。初めは新書で出す予定で100枚を選んでいたんですよ。でも、文章もしっかりしてるし単行本で出しましょうという話になって。そこで関連盤としてプラス200枚を掲載できることになったことで、ちょっと苦しみからは解放されました。

――とは言え、そうなるとメインの100枚に入れるのか、関連盤の200枚に入れるのか、という基準も出てきますよね。

韻踏み夫 他の掲載作品との兼ね合いも関係してきますよね。作品の出来が悪いからとかではなく、そういった兼ね合いの結果、関連盤に掲載するしかなかった作品もあります。例えばSquash Squadは最初はメインに入れようと思ってたんですよ。KOHHの登場を準備したようなところもあったし。でも、これを入れるとこっちのカラーが弱くなるな、とかバランスを見ながら選んだ結果、最終的な並びに落ち着いた感じです。

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Squash Squad『THE SQUALL』(2010年)

――同じラッパー/トラックメイカーの多数の作品の中でどの作品を選ぶか、という悩みもあります。

韻踏み夫 7~8割は、先述の『ミュージック・マガジン』や雑誌『blast』(シンコーミュージック。現在は廃刊)や個人ブログ等も参考にしながら選んでいくことで自然と決まってはいきました。SEEDAだったら『花と雨』以外ないし、KREVAだったら『心臓』で決まっている。一方で、悩んだのでいうとZeebraを1st『THE RHYME ANIMAL』と2nd『BASED ON A TRUE STORY』どちらにするか、とか。自分は完成度だったら1stの方が評価は上ですが、後世への影響という点だと2ndを推したい。

――メインの枠は1人(組)1枚、というルールなんですよね。それがなかったら、自分はZeebraだと4thの『The New Beginning』も入れたいくらいです。

韻踏み夫 そうですよね。SEEDAは『HEAVEN』も入れたいし、とか。

――そうやって選び抜かれた300枚全てに対して書かれた、鋭い紹介文にも感銘を受けました。「教科書」と「批評」をいかに両立させるか、あるいはいかに「教科書」に「批評」を忍ばせるか、という点についてはかなり戦略的に考えられたのではないでしょうか。

韻踏み夫 『日本語ラップ名盤100』という本を書こうとなったときに、自分以外にも書ける人はいるな、ということをまずは考えました。実際、約1,000字のレビューのうち、7~8割は誰が書いても同じような基本的な情報になっている。だからこそ、残りの2~3割は自分の書きたいことを書こうと思ったんですよ。自分はこれまで文芸批評を隣に置いて参考にしながら日本語ラップを聴いてきたところもあったので、そういった視点で書こうと。あと、文芸批評がなぜ豊かな歴史があるかというと、ちゃんとアカデミズムにおいて文学研究というものがなされてきたからですよね。つまり、文学研究と文学批評という両軸があった。それが、つやちゃんさんの言う本書における「教科書」と「批評」だと思います。日本語ラップはまだまだどちらも不十分なので、教科書的なことも書きつつ違う角度で見る批評も書くという、両方をやらないといけない。

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