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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.327

人気俳優もスタッフもみんなリストラの対象に!? 映画界の今後を大胆予測『コングレス未来学会議』

thecongress01.jpgハリウッド女優のロビン(ロビン・ライト)は全身をスキャンして、永遠に年をとらないCGキャラクター女優としての道を選ぶことに。

 デジタル化が進み、映画産業の光景は大きく変わった。フィルム上映にこだわった街の映画館は次々と姿を消し、新しくできた巨大シネマコンプレックスに人々は吸い込まれていく。小さな映写室から上映を見守ってきた映写技師たちの多くも仕事を失った。フィルム撮影からデジタル撮影に変わったことで、製作現場でも大勢のスタッフが変革の波に呑まれた。当然ながら、俳優たちも無傷ではいられない。CGキャラクターが大活躍するジェームズ・キャメロン監督のSF大作『アバター』(09)を観た人は、「生身の俳優じゃなくても充分面白いじゃないか」と感じたのではないか。モーションキャプチャーが普及すれば、イケメン俳優の価値はなくなってしまう。「Hulu」のCMのように故人をCGで蘇らせることも可能だ。これから映画産業はどうなっていくのか? そして、映画という娯楽を享受してきた我々の生活もどう変化していくのか? アリ・フォルマン監督の『コングレス未来学会議』は、映画産業の20年後、40年後を大胆に予測してみせる。

 イスラエル出身のアル・フォルマン監督は前作『戦場でワルツを』(08)で自分が軍役時代に遭遇したレバノン内戦の悲惨な記憶をアニメーションとして再現してみせた。『惑星ソラリス』(72)の原作者として有名な作家スタニスクフ・レムが1971年に発表したSF小説『泰平ヨンの未来学会議』で描かれた未来社会を、フォルマン監督は再びアニメーションとして映像化してみせる。『戦場でワルツを』はモノトーンな色調のアニメーションだったが、本作では今敏監督の『パプリカ』(06)を思わせる極彩色の夢の未来社会を登場させる。フライシャー兄弟の『ベティ・ブープ』を彷彿させる懐かしくかわいらしい絵柄のアニメーションだが、描かれる世界は強烈なトリップ感をもたらす過激なものになっている。

 『戦場でワルツを』がフォルマン監督の自伝だったように、本作は主演女優ロビン・ライトのセミドキュメンタリーとして物語が始まる。ロビン・ライトはロブ・ライナー監督の『プリンセス・ブライド・ストーリー』(87)で映画デビューを果たし、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)の怒濤の生涯を送るヒロイン・ジェニー役で注目を集めたハリウッド女優。テキサス生まれらしい芯の強さを感じさせる彼女は大女優になることを期待されていたが、ハリウッドの問題児ショーン・ペンと交際、結婚、そして出産し、女優としての活動はペースダウンしていく。その後ショーン・ペンとは離婚するが、ドキュメンタリー映画『デブラ・ウィンガーを探して』(02)でロザンナ・アークエットが「40歳を過ぎた女優には、それまでのキャリアに見合った仕事は来なくなる」と主張したように、もう若くはないロビン・ライトも女優としてのターニングポイントに立たされる。と、ここまでがロビン・ライトの実話。そんなロビン(ロビン・ライト)は長年付き添ってきたマネージャーのアル(ハーヴェイ・カイテル)からリストラを勧告されることに。

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