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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.331

基地問題が抱える“いちばん恐ろしいもの”とは? 辺野古の実情を追うドキュメント『戦場ぬ止み』

ikusabanu01.jpg辺野古ゲート前では、基地建設の抗議運動が連日続いている。反対する側もゲート内への資材搬入を守る沖縄県警もどちらも同じ沖縄県人同士だ。

 すでに沖縄では戦争が始まっていた。いや、そうではない。沖縄ではずっと戦争が続いたままだったのだ。沖縄の基地問題を沖縄県外の人にも分かりやすく解いたドキュメンタリー映画『標的の村』(13)が異例のロングランヒットとなった三上智恵監督の最新作『戦場ぬ止み(いくさばぬ とぅどぅみ)』は、辺野古の基地建設が進む沖縄は剣が峰に立たされたギリギリの状況であることを伝えている。そして、それは沖縄だけの問題ではなく、民主主義国であるはずの日本の根幹を揺さぶるものであることに気づかされる。

 前作『標的の村』は、琉球朝日放送でキャスター兼ディレクターを務めていた三上監督がテレビ朝日系列の30分のドキュメンタリー番組『テレメンタリー』向けにもともとは作ったものだ。2012年9月に全国放送された後、沖縄ローカルで60分バージョンを放映。テレビ業界内でいくつもの賞を受賞し、それで終わるはずだった。だが、2013年8月に91分バージョンの劇場版を東京のポレポレ東中野ほか全国各地で上映したところ、口コミで予想外の大ヒットとなる。テレビ放送では届かなかった沖縄で暮らす人々の怒りと悲しみが、劇場から全国へと伝播していった。オスプレイ配備に反対するやんばる東村高江集落の人々の抗議活動を萎縮させるために国が悪質な“スラップ裁判”を仕掛け、7歳の少女まで容疑者扱いしていたこと。辺野古移転は普天間基地の代替案ではなく、もともとベトナム戦争時に米軍が計画していたものだったこと。米軍の予算不足で断念していた案が、日本の予算を使って永続的な基地として完成するという国にとって不都合な事実をスクープしていた。そして何よりも、基地周辺で暮らす人たちの息づかいがスクリーン越しに伝わってきた。全国ネットのニュースから、大切なものがボロボロとこぼれ落ちていることを痛感させるドキュメンタリーだった。

「テレビと映画では訴求力がまるで違うことに、私自身が驚きました(笑)。『標的の村』は何とかオスプレイ配備を世論の力で阻止したいという想いで作ったものです。テレビ版を観て、怒りを覚えた方もいたと思うんですが、放送枠が深夜や早朝だったため、見終わった後に寝てしまったり、朝ご飯を食べているうちに怒りが薄れてしまう。その点、劇場版は1日のスケジュールを調整して、電車賃を払って、わざわざ映画館まで観に来てくれた人たちばかり。映画の中で描かれていることを自分のものとして受け止め、さらに口コミで広めていってくれた。実際に沖縄まで来て、反対運動に参加してくれた人たちが大勢いたんです」(三上監督)

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