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紳士たれ! スパイを志す青年の成長譚を痛快に描く!! 今週公開の2作品『キングスマン』 『天空の蜂』

kingsman_movie04fri.jpg(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

 今週取り上げる最新映画は、痛快ヒット作『キック・アス』(2010年)の原作者&監督コンビが放つ刺激と笑いが満載の英国製アクションと、江口洋介&本木雅弘共演で原発テロ犯との戦いを描く和製サスペンス。いずれもスリリングな展開が持ち味だが、前者が毒のあるユーモア、後者が家族愛を強調している点はそれぞれのお国柄といったところか。

 『キングスマン』(公開中、R15+指定)は、マーク・ミラーのコミックを原作に、マシュー・ボーン監督が『英国王のスピーチ』(10年)のコリン・ファース主演で映画化したスタイリッシュで過激な新感覚スパイアクション。ロンドンの高級スーツ店を隠れみのにする独立諜報機関、「キングスマン」のエリートスパイ・ハリー(ファース)は、かつて自分の命を救った亡き同僚の息子エグジー(タロン・エガートン)から連絡を受ける。無軌道に生きていたエグジーを、ハリーはキングスマンの新人試験に推薦。候補生たちが危険な選考試験で絞り込まれる頃、IT富豪のヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が、秘かに人類抹殺計画を進めていた。


 英国紳士然として華麗に敵を倒すコリン・ファースと、やんちゃな熱血青年に扮する映画初出演のタロン・エガートンの組み合わせが、スパイ物というジャンル映画の温故知新に挑む本作のスタンスを端的に示している。ある事情でハリーが暴走する長尺のアクションや、とある状況下で大物たちの首が次々に飛ぶ終盤のスペクタクルなどは、残酷なのに絶妙なブラックユーモアのおかげで爆笑してしまう。ヴァレンタインの片腕で両足の義足が鋭利なブレードになっている美女ガゼル(ソフィア・ブテラ)も、『殺し屋1』を彷彿とさせる踵(かかと)落としが恐ろしくも魅力的な強烈キャラ。今年はスパイ映画の話題作が続々封切られているが、その中でも過激さと笑いの点で群を抜く大傑作だ。

 『天空の蜂』(9月12日公開)は、東野圭吾が1995年に発表した同名小説を、『20世紀少年』シリーズの堤幸彦監督が映画化したサスペンス大作。95年8月、自衛隊用の最新大型ヘリコプター「ビッグB」を開発した設計士の湯原(江口洋介)は、妻と息子・高彦を連れて納入式典の会場を訪れる。高彦がこっそり乗り込んだビッグBが、何者かにより遠隔操作されて飛び立ち、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止。犯人は国内の全原発を破棄するよう要求し、従わなければ爆発物を積んだビックBを原発に墜落させると脅してくる。湯原は新陽の設計士・三島(本木雅弘)と協力し、高彦の救出と大惨事の回避を試みる。

 まず驚かされるのは、今から20年も前に原発テロを題材とする小説を書き上げていた東野圭吾の先見性。安保法制をめぐる議論で原発テロのリスクも指摘される昨今、実にタイムリーな劇場公開となった。堤監督による演出は緊張感のコントロールが巧みで、実力派俳優らによる気迫のこもった演技も画面を引き締める。仲間由紀恵、綾野剛、柄本明ら共演陣も豪華。3・11を経験した私たちに、絵空事とは思えない切実なテーマを突きつけてくる意欲作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『キングスマン』作品情報
<http://eiga.com/movie/81623/>

『天空の蜂』作品情報
<http://eiga.com/movie/80517/>

最終更新:2015/09/11 23:00
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