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一瞬で人生が変わる!? 往年の名作のオマージュが光る、大人のおとぎ話『マイ・ファニー・レディ』

main1217(C)STTN Captial,LLC 2015

 今週取り上げる最新映画は、一風変わった愛が巻き起こす騒動を描く「大人のおとぎ話」ともいうべき2作品。片や往年のハリウッド恋愛喜劇を想起させるウェルメイドの娯楽作、片や幸福と不幸のはざまを独特のユーモアで描く新感覚の邦画と、対照的な2本でもある(いずれも、12月19日公開)。

『マイ・ファニー・レディ』は、『ペーパームーン』(1974年)の名匠ピーター・ボグダノビッチ監督による群像コメディ。演出家のアーノルド(オーウェン・ウィルソン)は舞台公演を控えたある夜、初対面のコールガール・イジー(イモージェン・プーツ)をデートに連れ出し、今の仕事を辞めることを条件に3万ドルをプレゼントする。女優になる夢を取り戻したイジーが新作舞台のオーディションに行くと、そこにはアーノルドと、彼の妻で主演女優のデルタ(キャスリン・ハーン)がいた。アーノルドの困惑に反し、イジーが役を得たことで、思わぬ騒動が繰り広げられる。


 有名ブランドのモデルに抜擢される抜群のスタイル、派手な目鼻立ちの美女なのに天然のファニーな愛らしさも備えるプーツに、イジーは、まさにハマり役。ウィルソンとハーン、セラピスト役のジェニファー・アニストンも、少しずつズレたキャラクターを熱演して笑わせる。往年の名作やスターたちへのオマージュがちりばめられ、カメオ出演の顔ぶれも豪華。私生活では婚約者と死別したボグダノビッチ監督、自殺未遂歴のあるウィルソン、ブラッド・ピットと離婚したアニストンら、どん底からの再起を果たした面々が贈る、愛に満ちた人生賛歌としても味わい深い。

『友だちのパパが好き』(R15+指定)は、CM、演劇など多方面で活躍する山内ケンジ監督の長編第2作となる風変わりなラブコメディー。女子大生の箱崎妙子(岸井ゆきの)は、自分の父親・恭介(吹越満)に対する恋心を親友のマヤ(安藤輪子)から突然告白される。その話を聞き、母のミドリ(石橋けい)は笑い飛ばすが、恭介はうれしさを隠しきれない。しかし、恭介には長年の愛人がいて、そのため夫婦は離婚を決めていた。マヤが恭介へ猛アタックを開始したことで、箱崎家の3人と周囲の人間関係が大きく揺らぎ、崩れ始める。

 不倫していながら第3の女性に心ときめかせるダメ男、父親の不実を許せない娘、常識外れのアプローチを仕掛ける人物といった具合に、山内監督のデビュー作『ミツコ感覚』(2011年)と多くの要素が共通する。それでいて、まったく異なるストーリーに仕立て、予想外の展開で観客を驚かせる手腕が見事。女たちの薄幸そうな表情を淡々と描き、そこに生まれる微妙な空気を笑いへ転化するセンスが抜群だ。数々の恋愛エピソードもカリカチュアライズされつつ、どこかしら普遍性を残していて共感を呼ぶ。愛人役の平岩紙、ミドリに言い寄る同僚役の宮崎吐夢という2人の大人計画所属俳優も、いいアクセントになっている。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『マイ・ファニー・レディ』作品情報
<http://eiga.com/movie/81148/>

『友だちのパパが好き』作品情報
<http://eiga.com/movie/83128/>

最終更新:2015/12/18 23:00
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