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優勝は…羽生結弦!? 嵐、三代目JSB、AKB、和田アキ子、紅白歌合戦をレビュー

――女性向けメディアを中心に活躍するエッセイスト・高山真が、サイゾーの記事を斬る。男とは、女とは、そしてメディアとは? 超刺激的カルチャー論。今回は新年スペシャルバージョンでお送りします!

1601_takayama.jpgNHK紅白歌合戦公式HPより。

 サイゾーはじめ、さまざまなメディアでオンエア前から話題になっていた紅白歌合戦。なんだかんだ言っても国民の4割ほどの人間が見ている番組です。「じゃあ実際のとこ、本番はどうだったのか」ということにふれないわけにはいきません。

 底意地の悪いゲイが、同じくらいに底意地の悪いゲイ友たちと一緒に紅白を見ると、どうなるか。それを出演順にたどってみましょう。

 先に断っておくと、私は非ジャニオタ。しかし、「だからこそ見えてくるものがある」と自らに言い聞かせ、あえてジャニーズメンバーを中心にレビューしてみたいと思います。

■Sexy Zone/歌唱曲『ニッポン Cha-Cha-Cha チャンピオン』
 Sexy Zoneの5人が3人体制になったとき、私は別のサイトで連載しているコラムで、「AKB方式(中日スポーツによる表現)だと、『アイドル』というものを切実に信じているファンの女の子たちは翻弄されるばかりじゃないかしら。ファンの子たちまでもてあそぶようなやり方に胸を痛めるわ」と書いた覚えがあります。今回の紅白では5人そろって、色違いの「平等感」あふれる衣装での出場。「ファンの子たち、よかったね」と、すっかり親戚のオバちゃん(ファンの子たちの親戚ね)の気持ちになって見ていました。

 が、戦慄したのは、次の出番だった伍代夏子の応援パフォーマンスに移ってから。ファンの皆さんはご存じなのでしょうが、中島健人、あれは大変な逸材です。ルックスだけの問題ではありません。決して有名な曲とは言えない伍代夏子の歌の、3回あったサビ部分、すべて微妙に歌詞が違うのに、完璧に口ずさみながら踊っていました。

 ちなみに、その後、藤あや子や細川たかしの応援パフォーマンスをしていたAKBやNMBグループの誰ひとり、他人の曲の歌詞まで覚える時間がなかったのか、こういうことはしていません。また、トップバッターだった郷ひろみの出番で、歌い出しから視聴者にもわかるようにハッキリと歌詞を口ずさんでいたのは、司会のイノッチ以外では松田聖子と木村拓哉だけです。

 80年代までの紅白では、「ほかの人の曲を一緒に口ずさむ」というのは一種の風物詩でしたが、いまそれをやれるのは、聖子や拓哉のような芸能界の怪物(褒め言葉です)だけ…。そう思っていた私ですが、「ジャニーズってのは、こんなに若いうちから『日本の芸能界の、ある種のお約束』を自然に身につける子がいるのか」と目を見張る思いです。


■miwa/歌唱曲『fighting-Φ-girls』
 バナナマンの日村が、OL姿の女装(女装時は「ヒムコ」と呼びたい)をしてバックコーラスを務める…というのが一つの目玉だったはずです。が、正規のバックコーラスの中にヒムコ以上の破壊力を持つ人が…。

 7年前のダウンタウンの大晦日特番『絶対に笑ってはいけない新聞社24時』(日本テレビ系)で、その番組に初登場したマツコ・デラックスがひざ丈タイトスカートのOL姿を披露して、すべてをかっさらっていったのですが、それを彷彿させるボリュームと衣装の黒人さんが、この紅白ではすべてを持っていってしまいました。ヒムコ、miwaちゃん、アンタたち脇役になっちゃったよ…。

■氷川きよし/歌唱曲『男花』
 氷川きよしが大量のラガーマンとからむ…。すごい(いろんな意味で)。

 いったいNHKは何を考えているんでしょうか。いえ、考えた末のコレならば、意地が悪いにも程がありますが。ただ、精いっぱい好意的に解釈するのなら、NHKは、北島三郎の『まつり』に代表される「演歌による盛り上げ役」を、氷川きよしに継がせようとしているのかな、と。

 しかし、ただの「跡継ぎ」で終わらないのも氷川きよしの底力。ツーコーラス目になってから、氷川きよしの真正面から強風が吹きつけ、髪や衣装が舞い上がる…。この演出、日本ではT.M.Revolutionが有名ですが、同じことを氷川きよしがやると、なぜかビヨンセのライブ演出のほうに寄っていくという、摩訶不思議な空間の出来上がり。キヨンセ、キレイだったわよ!

■和田アキ子/歌唱曲『笑って許して』
 曲が始まる前の舞台袖での司会者とのトークもなく、細川たかしの曲終わりにかぶせるようにイントロがスタートし、ステージ後方から登場。このアッサリ感、NHKももう和田アキ子をそれほど重要な歌手だと考えていないのでは…と深読みしたくなる演出でした。

 歌は……ため息しか出てきません。「笑って許して」の歌い出しの「わ」から、すでに音を外している。前回のコラムでも書きましたが、ここまで下手になってしまった和田アキ子の姿は、「昔は好きだった」というファンまでをも悲しい気持ちにさせます。

 間奏部分で、和田アキ子とキッチリとダンスを踊ってみせた木村拓哉と、最初からキッチリと一緒に歌っていた松田聖子が、先ほど言及した郷ひろみの件に続き、その凄腕を惜しみなく披露。「芸能」で主役を張り続けるって、こういうことなんだね…。

■関ジャニ∞/歌唱曲『前向きスクリーム!』
 出番前のことですが、副音声ブースでトークをしたTOKIOの国分太一、関ジャニ∞の横山裕と丸山隆平が、そろってアニマルプリントのジャケットを着ていました。この「力の入り方の大きさ」と、「力の入れ方の方向性」がもう、20年前の演歌歌手の勝負衣装のようで、思わず画面を三度見くらいしてしまった私です。誤解を恐れずに言うのなら、この「力が入りすぎているがゆえに『ダサい』へと寄っていく。しかし、それを恐れない」姿勢こそが、芸能の王道であり、紅白のような「ダサいからこそ根強い支持を誇る番組」ともっとも相性がいいものでもあります。紅組でそのポテンシャルをいちばんに発揮できたのは、出場できていたら、ももクロ以外ありえなかったでしょう。

 で、関ジャニ∞の衣装。妙ちきりんな柄の入った、ジャケットと半ズボン(ハーフパンツとは言いたくない感じ)。素晴らしくダサかった。もちろん褒め言葉です。当時20歳を超えていたのにポシェットぶら下げて『ブギ浮ギI LOVE YOU』とか歌っていた田原俊彦とか、ハッピ姿で『スシ食いねェ!』とか歌っていたシブがき隊に匹敵する、古き良きジャニーズの姿です。

■天童よしみ/歌唱曲『人生一路』
 美空ひばりの東京ドームコンサートでの衣装に非常に似ている赤いドレス姿で、ひばりの『人生一路』をカバー。この曲を美空ひばり自身が最後に紅白で歌ったのは1979年、3曲メドレーの最後の曲でした。で、天童よしみ、そのときのひばりの『人生一路』に、節回しまでかなり忠実に寄せて歌っていました。これができるってのは、やはり歌自体が上手いということ。しかし、これができてしまう「器用さ」は、同時に、「才能を便利使いされかねない」という危険性もはらみます。歌い終わり、「黒目しか見えない」目をカッと見開いてのドヤ顔を見ながら、「もっと自分の歌を歌わせてあげて」と、いらぬ心配までしてしまう私です。

■三代目 J Soul Brothers/歌唱曲『Summer Madness』
 出番の直前に、朝ドラ『あさが来た』の出演者たちと軽いトークあり。そのときの、「トークに対してトークで返せず、ニコニコ笑ってお辞儀を繰り返すだけ」の、ある種の「それで許されてる感」というか、「小芝居にとことん慣れていない感」が逆に新鮮。ジャニーズの面々が、古き良き芸能に対して「なじみまくり感」さえ漂わせているのとは対照的でした。ただ、こういう「歌とダンスオンリー」な感じ、そういった空気感を熱烈に愛でている層がいるのも、逆説的に理解できるような。

 ただ、私個人は、前回のこのコラムで「三代目 J Soul Brothersにはぜひ、ハッピに超ミニ丈の半股引姿で、演歌歌手の後ろで太鼓とか叩いてほしい」と書いた気持ちは変わらず。そろそろ「古き良き芸能」に馴染ませてもいい頃合いだと思うのですが。

 ちなみに歌のときは、ライティングのあまりの暗さに顔がハッキリ映らないメンバーもいました。もっと「顔」を売りたい事務所なら、この演出にノーと言ったはず。ホント、「歌とダンスオンリー」なのね……。

■水森かおり/歌唱曲『大和路の恋』
 クレーンで浮き上がりながらの歌唱。なのにこの興奮のなさ。逆に特筆ものでした。さかのぼること約20年、すでに1997年の紅白で、同じような装置を使って美川憲一が『慕情』という曲を歌っているのですが、あのぶっ飛び具合、あの「ダサ派手」な世界観の、爪の垢でも煎じて飲んでいただきたい。

■TOKIO/歌唱曲『AMBITIOUS JAPAN!』
 しかしなんでしょう、山口達也のノースリーブ&あきにあいた胸元は……。あそこまで徹頭徹尾ノースリーブを貫く人は、今回はもちろん過去までさかのぼってみても、紅組にすらいません。で、パフォーマンスは生歌で通したTOKIO、リーダーの「俺はここでは目立つつもりはないんやで」と言わんばかりの、蚊の鳴くようなコーラスも大変味わい深い……。この味わい深さは、「歌手」というよりは「タレント」としての優秀さです。CDの売り上げよりも視聴率のほうがはるかに優秀、というTOKIOの姿とかぶります。

■嵐/歌唱曲『New Year’s Eve Medley 2015』
 スター・ウォーズとのコラボ。実際問題、いまの芸能界でスター・ウォーズをかませて成立する「自力」を持っているのは嵐なのかもしれません。いろんな意味で安定感バツグンのステージ。ただ、「意外とマッチョ」(マツコ・デラックス談)な櫻井翔だけ、ボトムをブーツインしていたのですが、それがどうにもゴム長に見えてしまって…。スタイリストさん、ブーツはふくらはぎにキツめにフィットするものを選ぶべきよ…。

■AKB48/歌唱曲『AKB48 紅白2015 SP ~10周年記念メドレー~』
 前田敦子と大島優子が「サプライズ」という触れ込みで登場。

 AKBよりはるか前、本当の意味で「国民的」だったピンク・レディーは、現在までに再々々々々々々々々々々々々くらい結成している(カウントは適当。しかし適当であってもたいして問題ナシ)のですが、そのピンク・レディーよりも最初の「再結成」が早い。

 現在は「未唯mie」というのが正式な芸名であるらしいミーちゃんと、同じく何度かの改名をして「増田惠子」に落ち着いたケイちゃんが、「芸能界」ではなく「ピンク・レディー」という箱の中でいちばん輝いたように、前田敦子と大島優子も「芸能界」ではなく「AKB48」という箱の中がいちばん輝けるのでしょうか。つーか前田敦子、以前よりキレイになったみたいだったし。でもこれ、現役メンバーに芸能人としてのプライドみたいなものがあるのなら、危機感を感じるか怒るかしなきゃいけないんじゃないの?

「マジックなどのパフォーマンスに失敗したら、高橋みなみの卒業延期」という縛りがあったようですが、見たところ失敗なし。よかったねえ(ファンにも、ファン以外にも)。

■V6/歌唱曲『ザッツ!V6メドレー』
 もしかしたら、今回出場したジャニーズのグループの中で、「歌唱力」という点でいちばん安定していたのはV6だったかもしれません。おそろいの上着をわざわざあつらえ、花を添えた黒柳徹子の気遣いもファンには嬉しかったのでは。

 そうそう、「安定感」ということで言えば、司会のイノッチの安定感たるや。紅白では、ここ10年以上、NHKアナウンサー以外の司会者たちが、カメラではなくカンペを見ていることを隠そうともしない状態が続いていたので、こちらも「それがフツー」だと感じつつありました。イノッチ、カンペにほとんど視線を送らず、いつでも自然なカメラ目線。しかも「尺調整で沈黙、またはムダにトークしている感じ」を、結局最後まで見せなかった。いやあ驚いた。

 そんなイノッチ、司会での最大のヒットは、中継でつながった福山雅治とのトーク部分。いきなり「おめでとうございます!」と言って、少し間をとり、福山の「ありがとうございます」という返答のボリュームを一気に下げさせ、視聴者を「結婚のことを言ってるのか!?」と画面に釘づけにさせる手腕。そして「今年デビュー25周年を迎えられたということですけれども」と続ける、この緩急自在ぶり。すでに名人芸の域でした。朝の帯番組、現在の相方は有働アナですが、向こう30年はNHKのアナウンサーを転がして、MCで食っていけるわ。

■小林幸子/歌唱曲『千本桜』
 日本の芸能について回る、ある種のくさみ、エグみ、「力が入りすぎているがゆえにダサい方向へ突っ走る。しかしそれを恐れていない」度合いにおいて、格もケタも違います。やはり水森かおりは幸子の後釜を狙えるタマではありませんでした。

■レベッカ/歌唱曲『フレンズ』
 前の出番の美輪明宏の『ヨイトマケの唄』が終わり、舞台袖で拍手を送る綾瀬はるかと、黒いドレス姿の島津亜矢。と思ったら、綾瀬はるかが島津亜矢に向かって「レベッカさん」と呼び掛けて、腰が抜けそうなほど驚きました。そっくりじゃないの…。いえ、そりゃね、誰だって年をとりますよね…。声は健在。さすがでした。

■SMAP/歌唱曲『This is SMAPメドレー』
「それをやったら、絶対に決まった形でネタにされる」ものを「お約束」と言います。で、紅白における最大のお約束が、中居正広の生歌です。「歌手」として見た場合、あの歌唱力にざわついたり眉をひそめる視聴者もいるはずですが、あれをダチョウ倶楽部のような完成された「ツッコミ待ち」として捉えた場合、一気に安心感へと傾く不思議。ざわついたり眉をひそめるのも「定型」なら、安心感漂う風物詩として鑑賞するのも「定型」です。

 正直、口パクで通そうと思ったら、それをNHKに認めさせるくらいの力は持っている事務所でしょう。が、それをやらずに、生歌のヘタさ加減をくさしたりネタにしたい層、アンチ層にまできっちりサービスを届ける。このやり方を採用するには、ある種の覚悟が必要なものです。

 今年、中居は裏番組の『絶対に笑ってはいけない名探偵24時!』(日本テレビ系)に、「裏かぶり」のない形で出演し、ダウンタウンたちと同じように「笑ったらケツバット」というルールにのっとりゲームに参加していました。そこでスーツの尻部分を裂けさせ、バットをくらいながら、『らいおんハート』を生歌で歌い、「全然(音程が)合ってないやん」「持ち歌なんですけどね」と散々な言われようで笑いを生み出していました。歌唱力より覚悟のほうを伸ばしていくことに腹をくくった中居は、今後まったく声が出なくなったとしても歌を歌い続ける「資格」を得たと思います。

■森進一/歌唱曲『おふくろさん』
 顔、というか肌。それに尽きます。「そもそもこれは『肌』と呼んでもいいのだろうか」というレベルにまで進化していました。紅白は、森進一の肌の質感を定点観測できる貴重な場でしたが、今回が最後の出場だったせいか、NHKもアップを多用してくれたような気がします。おかげで「ざわつき」どころではすまない、凄いものを受け取ることができました…。いまさらホラー映画などでは心が動かない、性格のねじ曲がったオカマたちがテレビ見ながら絶叫しちゃったもの…。

■松田聖子/歌唱曲『赤いスイートピー』
 私は、全盛期だった80年代の松田聖子のファンです。で、そういうファンは全員、松田聖子の「タメを作らなきゃ歌えないのか問題」を悲しんでいます。加えて今回の声の細さ…。「あれだけのキャンディボイスが、あれだけ凄まじい圧で出てくる。あれだけのキャンディボイスが『線』ではなく『面』とか『壁』で出てくる」のが聖子の真骨頂だったのに…。なんとも悲しい大トリでした。

***

 以上、ざっくり語ってきましたが、審査員側で尋常ではないポテンシャルを発揮したのは、「大人の魅力」を飛び越えて熟女感すら漂わせていた長澤まさみでも、ゴールデンボンバーの出番で仕込みコントを披露したピースの又吉でもなく、羽生結弦でした。出場したすべての歌手たちと比べてもいちばん肌がキレイ。ステージ上で歌手たちと一緒に『花は咲く』を歌えば、「天童よしみ、羽生より後ろにいるのに顔の大きさが倍……」ということを知らしめ、ニコニコ動画で火がついた小林幸子の『千本桜』を一緒になって口ずさみ(熱心なニコ動ユーザーでないのなら、審査員を引き受けてからの短期間で、どの歌手の出番でカメラに抜かれてもいいよう、歌詞を覚えたということです)と、そこらの歌手などが裸足で逃げ出す「芸能」への対応力を見せつけました。ほんと凄い子だよ……。

高山真(たかやままこと)
エッセイスト。著書に『愛は毒か 毒が愛か』(講談社)など。2016年1月に新刊が発売予定。

最終更新:2016/01/03 13:54
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