『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』出版──現場にいたアイドルヲタクの雑感
人は、自分の経験しなかったことを想像するとき、得てして大げさに考えてしまいがちだ。
例えば「バブル景気」にしても、日本中の誰もがお金を持っていて、好きなものを何でも買えたようなイメージを持たれることがあるが、そんなことはない。
確かに、私も新入社員の頃、バブル景気を経験し、「移動は常にタクシーだった」「残業代はすべて申告してよかった」というようなことはあったが、それでも無駄遣いをしてお金のない時には、100均のラーメンをすすって食いつないでいたこともある。
ちょうど同じようなことが「アイドル冬の時代」にも言える。
その時代を知らない若い世代(もしくは、当時アイドルに興味がなかった中高年)のアイドルファンは、当時について「可愛いアイドルがいなかったのでは?」「魅力のあるアイドルソングがなかったのでは?」と思っているかもしれない。
だが、決してそんなことはない。アイドル冬の時代にも魅力的なアイドルはいたし、クオリティの高い楽曲もたくさんあった。そして、何よりも、あの時代のアイドルファンも、それなに楽しかったのである。
9月8日、シンコーミュージック・エンタテインメントから『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』(著:斎藤貴志)という本が出版された。今まであまり光の当てられてこなかった「アイドル冬の時代」を検証し、その時代の真実を書き残そうという意欲作である。
今回は、この本の内容を紹介するとともに、当時現場にいた一アイドルヲタクであった私の雑感を書いてみようと思う。
まず、前提となる「アイドル冬の時代」の定義である。
この本では「おニャン子クラブ以降、モーニング娘。以前の10年間」と定義している。具体的にいうと1988年から98年まで、世間的にはバブル景気の始まりから、バブルの崩壊を経て、不景気へと突入していく頃までである。
この定義について異論はない。個人的にはSPEEDがブレイクし、広末涼子(※デビューは95年)が登場した96年頃には「早春」ぐらいにはなっていたと思うが、やはり今のようなグループアイドルが出てくるには、モーニング娘。を待たなければいけないだろう。
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