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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.499

JOJOの新しい冒険は日本版ニンフォマニアック!? SM大河『私の奴隷になりなさい第2章 第3章』

『私の奴隷になりなさい』の新シリーズとなる第2章『ご主人様と呼ばせてください』。明乃(行平あい佳)はタブーのない女へと調教される。

 恋愛はまるで鬼ごっこのようだ。鬼から逃げているはずだったのに、いつの間にか自分が追い掛ける側に回っている。男女の関係はまるでオセロゲームのようだ。優位な立場にいると安心していると、知らない間に立場が逆転してしまっている。関係の変化に戸惑いつつも、心のどこかで受け入れている自分もいる。壇蜜初主演作としてスマッシュヒットを記録した官能映画『私の奴隷になりなさい』(12)のシリーズ最新作となる『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』が連続公開されることになった。オーディションで抜擢された新人女優の行平あい佳、杉山未央を各章のヒロインに起用。『快楽交差点』(15)、『舐める女』(16)、『恋の豚』(18)とピンク映画界で快作を連打している城定秀夫監督が、SMを介した男女の関係性を赤裸々に綴ったR18作品に仕上げている。

 シリーズ第1章では平凡なOL(壇蜜)が先生(板尾創路)によって調教され、SMの世界に目覚めていく様子がスタイリッシュに描かれた。城定監督が手掛ける第2章&第3章は同じく覆面作家サタミシュウのSM小説シリーズをベースにしているが、かなりオリジナル度の高い映画となっている。

 第2章『ご主人様と呼ばせてください』では、主人公・目黒(毎熊克哉)がSMという快楽地獄にどっぷりハマっていくことになる。大手広告デザイン会社に勤める目黒は、美しい婚約者・希美(百合沙)との挙式を間近に控えていた。幸せな結婚生活がもうすぐ手に入るはずの目黒だったが、ノーマルなSEXしか受け入れない希美との夜の生活はマンネリ気味。そんなときに出逢ったのが、人妻・明乃(行平あい佳)だった。貞淑そうな明乃だが、どこか淫らな雰囲気を感じ取った目黒は強引に口説き落とし、ホテルで関係を結ぶ。ところが、そのことは明乃の夫(三浦誠巳)にすっかりバレバレだった。

 莫大な慰謝料を要求されるかとビビっていた目黒だが、会社に現われた明乃の夫から思いがけない交換条件を持ち掛けられる。明乃を奴隷として調教し、その詳細をメールで報告せよというものだった。明乃の夫から遠隔操作されながら、明乃の調教に日々励む目黒。タブーなき主従関係にすっかり陶酔していく目黒と明乃だった。

希美(百合沙)との結婚を直前に控えていた目黒(毎熊克哉)だが、SMで味わった快感を忘れることができずにいた。

“ロマンポルノ界の聖子ちゃん”として1980年代にアイドル的な人気を博した寺島まゆみの実の娘である、第2章『ご主人様と呼ばせてください』のヒロイン・行平あい佳。白石和彌監督の渾身作『止められるか、俺たちを』(10月13日公開)など話題作への出演が相次ぐ売り出し中の毎熊克哉を相手に、生々しいベッドシーンに挑んでいる。さらに第3章『おまえ次第』では、明乃とはまたタイプの異なる清純そうな書店員・繭子(杉山未央)が登場。奴隷願望のある繭子を目黒は新たに調教することになる。出逢ったときは冴えない下着を身に着けていた繭子だが、目黒とのハードプレイを経て、恋の奴隷として美しく開花していくことに。全裸姿の繭子が濡れタオルで何度も叩かれるシーンは驚くほどの輝きを放っている

 ピンク映画やオリジナルビデオ作品も含め、監督作はすでに100本を越えているだろう城定監督(本人も正式な本数を把握できていない)。売れっ子“映画職人”城定監督にとって、KADOKAWA製作&配給となる『ご主人様と呼ばせてください』『おまえ次第』は初の大手映画会社からのオファー作となった。

城定「脚本の石川均さんは第1作をあえて観なかったそうですが、あれだけ話題になった作品なので僕は観ました。SMの世界を亀井亨監督はスタイリッシュに描いており、同じ土俵では敵わないなと(笑)。違う切り口にしたいと考え、また原作者のサタミシュウさんが覆面作家ということもあって細かい打ち合わせができなかったので、脚本の石川さんやプロデューサーと話し合いながら、オリジナル度の高い映画になったと思います。ドライだった第1作に比べ、かなり人間くさいドラマになっていると思います。今回は2本同時の撮影だったので、ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』(13)みたいな二部構成の物語として考えたんです。主人公の目黒を演じた毎熊克哉さんは第2章では調子に乗ってSM調教に励んでいたのが、奴隷たちは想像以上に潜在能力を秘めており、第3章ではあたふたすることになってしまう。奴隷の世話をするご主人様も大変なんです(笑)」

 低予算で撮影日数も限られているピンク映画では主にセクシー女優を、オリジナルビデオ作品ではグラビアアイドルをメインキャストに起用してきた城定監督。演技キャリアのあまりない若手女優たちから、生きた芝居を引き出す巧みな演出ぶりはJOJOマジックと称されている。また、テアトル新宿で8月に先行上映された最新作『恋の豚』では子豚が登場するなど、城定作品は生きた動物がよく出てくることがJOJOファンの間では知られている。

城定「モルモットやアヒルは一時期よく使っていましたが、『ご主人様と呼ばせてください』では初めてガチョウを使いました(笑)。羊やヤギがよく出てくるエミール・クストリッツァ監督の作品を僕が好きということもあるかもしれませんが、動物ってこちらが思っていなかった動きをする。僕が想像していた以上に面白い絵が撮れるんじゃないかと期待してしまうんです。基本、絵コンテは描かないですね。今回はラインコンテだけ引きましたが、濡れ場はいっさいコンテを用意しませんでした。僕がどうこう指示するよりも、ベッドシーンは男優と女優のそのときの情感が占めるものが大きいと思うんです。今回、オーディションで選んだ行平さんと杉山さんは普通の女優がいう“体当たりで頑張りました”レベルではないものを見せてくれました。演技は水物。事前にきっちりイメージを固めるよりも、現場で役者さんたちと一緒に作っていくほうが僕には面白く感じられるんです」

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