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その若者は北の荒野に何を見たか『イントゥ・ザ・ワイルド』

tokyokaseryo.jpg『イントゥ・ザ・ワイルド』/(C)MMVII by RIVER ROAD ENTERTAINMENT,LLC and PARAMOUNT VANTAGE,A Division of PARAMOUNT PICTURES CORPORATION.All Rights Reserved.

 スクリーンに映し出される登場人物たちの人生を見て、時に自分の人生について思いをめぐらせることができるのも、映画の魅力。それが実在した人物の物語であるならなおさらだったりもする。今週はそんな映画を紹介する。『ミスティック・リバー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞した名優ショーン・ペンが監督した『イントゥ・ザ・ワイルド』(公開中)だ。

 映画は、ジョン・クラカワーのノンフィクション『荒野へ』(集英社刊)が原作。1992年4月、アラスカの荒野で餓死したひとりの青年が発見される。青年の名は、クリストファー・マッカンドレス。裕福な家庭に育ち、大学を優秀な成績で卒業したクリス青年は、何故アラスカの荒野で果てたのか? 著者はクリスの足跡を追い、彼が旅の途上で出会った人々にインタビューし、クリスがたどった軌跡を克明に綴った。

 主人公クリスは、免許証などの身分証明書を全て焼き捨て、家族にも黙って姿を消した。彼は社会の中で優秀であったが、その社会が欺瞞に満ちていることを知り、本当の自由を求めて旅に出た。一見すると恵まれた家庭環境のように見えるが、両親は外聞を重視し、仲違いを繰り返す。そうした家庭は現代でも珍しくはなく、彼の生き方、考え方はともすると若者の単なる理想主義に見えてしまうかもしれないが、しかし、自暴自棄になるのではなく、あくまで自力で真実の自由を求めた姿は高潔でもあり、心洗われるものがある。

 また、彼は決して”自分だけが社会からのはみ出し者”と思って他者を拒絶したのではなく、旅の途上で出会った心の触れ合う人々との熱い交流があり、その様子がまた観客の心を揺さぶりそうだ。

 人間社会で人は様々なストレスを抱え、誰もが多かれ少なかれ生きにくいと感じながらも、その中で生きているし、生きていくしかない。そうした思いを一度でも感じたことがある人なら、どこかしらに共感を見出せる映画である。この映画を見て青年の生き方について友や恋人と語らうもよし、秋の夜長にひとりで人生について思いをめぐらせるもよし。あるいは本当に自分探しの旅に出てしまうのもよし? ともかく、じっくりと人生を見つめたくなる1本だ。
(eiga.com編集部・浅香義明)

作品の詳細は以下より。
『イントゥ・ザ・ワイルド』

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ショーン・ペンならこの作品は外せません。

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最終更新:2008/09/12 15:00
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