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「口から出まかせばかり」2007F1日本GP訴訟第七回口頭弁論傍聴記

 2007年9月に富士スピードウェイで開催されたF1日本グランプリのずさんな運営により、「劣悪な環境の中、長時間のバス待ちを余儀なくされ、精神的苦痛を受けた」として観客109名が富士スピードウェイ(以下、FSW)に対し損害賠償を求めた裁判の第七回口頭弁論が、5月28日1時20分より東京地裁で行われた。

 今回、被告であるFSW側から「2008年F1日本GPのカイゼンについて」「(シャトルバス運行計画の)陳述書」「交通輸送計画実施報告書・抜粋」「(路面陥没事故・修復作業に関する)報告書」など具体的資料の提出がなされた。

 これまで被告から具体的な反論・認否がなされないこと、バスの運行計画や実際の状況が分かる資料等が一切提出されないことから、前回原告が文書提出命令を申し立てたことを受けてのことで、ようやくといった感である。

●これまでの経緯
【第1回】“ずさんなF1″訴訟──富士スピードウェイに反省の色なし
【第2回】「どなたが失禁を?」F1日本GP訴訟 第二回口頭弁論傍聴記
【第3回】「今年は天国、ただしガラガラ」2007F1日本GP訴訟第三回傍聴記
【第4回】再び「どなたが失禁?」F1日本GP訴訟第四回傍聴記
【第5回】「トヨタやる気なし!?」2007F1日本GP訴訟第五回口頭弁論傍聴記
【第6回】「進まぬトヨタの具体的認否」2007F1日本GP訴訟第六回口頭弁論傍聴記


 まず陥没事故について、裁判長が被告に対して「(バス誘導路は)簡易舗装ではないか」という質問をしたところ、被告側弁護士は「私は現地に行って見ていないが、アルファルト舗装である」と改めて強調した。その上で9月29日から30日にかけての降雨により雨天で路面が滑りやすくなっていたためにアスファルト舗装がはげて、陥没にいたったと主張した。

 一方原告側弁護士からは「9月28日は晴天であり、降雨は始まる前の9月29日8時6分にはすでに道路に穴があいていた」と証拠写真(参照)を提示して釈明を求めた。

 しかし原告弁護士はこの穴を「写真のシミのようなもの。陥没には見えない」と弁明、仮に陥没だとしても陥没場所が異なる、さらには「対向車線側のもので交通には影響がない」と弁明した。しかしこのバス誘導路は一方通行の上、バスが1台しか通れない道幅であったため、当然対向車線など存在しない。被告弁護士は適当に言い逃れをしているようだ。

 ところで2007年10月の事件直後、富士スピードウェイ側の説明では陥没が起きたバス誘導路は「簡易舗装」と呼んでいたにかかわらず、裁判では耐久性がありそうな「アスファルト舗装」と呼ぶなど、裁判対策を講じている。裁判長は被告に陥没事故が起きた場所の舗装工事の資料提出を求め、原告側にはその上で「どのような舗装をすべきだったか」を立証するよう求めた。

 一方、前回期日にて決まった資料開示の日程、場所の調整は未だついてない。

 原告が示した土日は、被告側はイベント開催があり多忙として拒否。交通の便がよい富士スピードウェイ東京営業所で平日に行うことを提案した。これに対し原告は、資料が膨大で提出できないと被告が主張しているのだから、東京にすべての資料を持参してくるか分からない、万が一必要な資料がなかったとしたら二度手間になるだけであるとして、富士スピードウェイ本社での資料開示を希望した。ところが被告側弁護士が「持病の腰痛があり御殿場は遠いので行きたくない」と主張し、議論は平行線をたどった。裁判所は「どっちでもいいので、早く進行できるように」と当事者に任せた。

 さて被告から提出された「交通輸送計画実施報告書・抜粋」により、ようやくバス運行の実態が明らかになってきた。提出された抜粋資料には9月29日、30日の往路のバス運行状況に関して、毎時間に何本のバスが運行されたかの詳細が記載されている。バス配車本数は計画に対して29日が82%、30日が72%の運行と大きく計画から下回っており、輸送能力が低下しているのが見て取れる。

 さらに驚くべきことに、復路に関しては混乱が生じたためとして詳細な運行記録が存在しない。その上、調査をバス運行を担当した株式会社ジェイコムに依頼しているが、今後出てくる見込みはないとしている。

 9月30日の復路に関しては、「交通輸送計画実施報告書・抜粋:交通問題の事実まとめ」の表に記載されているコメントが唯一の資料となる。バス運行終了時刻に関して、「東富士P、山中湖Pが最後まで残り、22:30頃終了」「御殿場雪が最後まで残り22:30頃終了」「新富士駅にて最終電車乗り遅れが23名発生。20名は名古屋へバスで送り、3名は宿泊は手配」「富士急ハイランド駅でも20名強の乗り遅れ発生。富士急社員が大槻駅までコースターで送った」と残されていた。

 しかし奇妙なことに被告第二準備書面において、「東富士パーキングの最終シャトルバスは午後9時である」とし、原告番号1番が10時にバスに乗ったという主張を認否しているのだが上記の「東富士P、山中湖Pが最後まで残り、22:30頃終了」との表記に反する。しかも詳細の運行記録が存在しないわけだから、「最終バスは午後9時」という根拠がない。これにより被告が行き当たりばったりに口からでまかせを言っているのが段々と明白となってきた。

 原告によると、「今後の資料開示において、さらに被告主張の辻褄が合わない点が明るみになるだろう。特に交通輸送計画実施報告書の残りの部分にはバスの乗車率が掲載されているなど、非常に有用な証拠となりそうだ」という。

 なお、原告弁護士がこの交通輸送計画実施報告書の全部コピーを求めたところ被告弁護士は俄かに表情が曇り、明らかに受けたくなさそうな気配であった。やはり都合の悪い証拠・記録が記載されていそうで、今後の資料開示で全貌が明らかになることが期待される。

 二次訴訟については一次訴訟を後追いする形で進行しており、一次と同じく資料開示の日程調整が行われた。ここでも再度被告弁護士が自分は腰痛なので御殿場には行きたくないと弁明したため原告側がなかば諦め、全部資料を持ってくるのであれば東京でもかまわないと返答している。

 それにしても被告弁護士は富士スピードウェイ現地に行っていない、陥没箇所も見ていない、さらには行きたがらない、準備書面は読まずに裁判に臨むなど、非常に手を抜いている。おりしも親会社トヨタが富士スピードウェイでのF1開催を撤退することを検討しているとの報道もあったが、この被告弁護士も裁判を撤退するのではないだろうか。

 一次訴訟の次回弁論は7月16日、二次訴訟の次回弁論は7月31日に東京地裁で行われる予定。

トヨタが消える日 利益2兆円企業・貪欲生産主義の末路

消えるのか。

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最終更新:2009/06/04 08:00
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