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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第50回】

“毒まんじゅう”に蝕まれた相撲界と政界 常套手段に騙されるな!

motoki0629.jpg「週刊ポスト」7月8日号

●第50回(6月22日~6月29日発売号より)
 
第1位
「菅直人総理、嘘をつくな!『消費税10%』で日本は崩壊する」(「週刊ポスト」7月8日号)

第2位
「ヤクザ組長の幕内力士『SEX漬け』現場!」(「週刊アサヒ芸能」7月8日号)

 「朝日」の読者投稿欄「お便りクラブ」に、今回の相撲界の野球賭博問題についていいことが書いてあった。投稿した工藤寛行之氏は、テレビのワイドショーに出てくる相撲評論家なる人たちが、したり顔で批判しているのを見て苦々しく思うとして、こう書く。

「彼らはそうした事実をまったく知らなかったのでしょうか? 知らなかったのなら評論家失格でしょうし、知らぬ顔をしていたのなら彼らも同罪で、協会を批判する資格などないはずです。彼らに限らず、テレビのコメンテーターと称する人たちの右顧左眄ぶりを見るにつけ、テレビの報道はもうダメではないかと思います。週刊誌にこそ期待をしています」

 テレビで、武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)と特別調査委員会の会見を見てびっくりした。彼らは、テレビカメラがうるさい、目障りだと文句を付け、カメラマンたちも、何もいわず後ろへ下がっているのだ。

 特別調査委員会の座長伊藤滋・早大特命教授の横柄な態度に、何様のつもりだと反発したくなった。武蔵川理事長の、今回の問題も、自分の監督責任にあることを認識しないで、記者やカメラマンに八つ当たりする「無責任」さに、どうして記者たちは反論しないのだろう。

 これは、先の工藤氏が言うように、相撲記者クラブ所属の記者たちの多くは、野球賭博だけではないバクチの横行と暴力団との「黒い交際」を、以前から知っていたに違いないから、自分たちに火の粉が降りかかってこないよう、黙りを決め込んでいるのではないかと、私は推測する。

 昔から、「裸芸者」と言われるように、相撲取りたちは、タニマチといわれる旦那たちに呼ばれると、どこへでも出かけて行き、ごっつあんですと鯨飲馬食、帰りには車代をもらって帰るのがしきたりになっている。財界人や作家、文化人も、贔屓の関取を呼んで、散財したが、タニマチのなかには、当然のことながら、暴力団の親分や幹部たちもいた。いや、そのほうが多かったのではないか。

 そうした席に、記者クラブの人間が同席したことはないのか。親しい相撲取りたちと、高額な麻雀や花札賭博をやったり、そうした場面を目撃した記者は皆無なのだろうか。

 「ポスト」で、上杉隆氏が、官房機密費をもらった新聞記者や政治評論家を追及しているが、ほとんど名乗りでない。今週は、元NHK政治部官邸キャップが実名告白しているが、1960年代の話であり、自分はもらわなかったと言っている。もらったという証言はまだ一人もないが、私が知っている田中番(田中角栄総理・当時)の各社の大物記者たちは、取材に来ている私に、角さんからもらったとうれしそうに、万年筆やネクタイを見せて自慢していた。さすがに現金を見せびらかすことはなかったが、カネを渡されて、拒んだ人はそう多くはないだろう。

 「毒まんじゅう」を一緒に食わない人間は、仲間とは見なされないからだ。

 これは、そのまま相撲界にも当てはまるのではないか。大新聞やスポーツ新聞が、今更知って驚いたような顔をして紙面を作っているが、腹の中では、そんなこと知っていたが、書かなかっただけだと思っているのではないか。

 ヤクザの世界のことなら、「アサヒ芸能」を読むのがいちばんだ。先週から、ヤクザと大相撲の「密接な関係」を連載しているが、今週は、タニマチのヤクザの親分が、力士たちをSEX漬けにする現場報告である。

 コンパニオンをあてがわれたり、ソープランドを2軒貸しきって、好きなだけヤッてこいといわれた力士たち。

 力士を喜ばせるためには「お米」(祝儀)と「女」と「メシ」があればいいと言われるが、「お米」の桁がヤクザは違うと、元力士のY氏がこういう。

「ご祝儀なんて、通常は幕下力士には数万円がいいところを、ヤクザは何十万円という金を財布から取り出して、そのまま『遊んで来い』なんて調子ですからね。実際には、こうしたヤクザが裏から角界を支えているのが現状なんです」

 また、ある関東の博徒組織の幹部は、相撲はもともとヤクザとの縁が深かったのだと、こう話す。

「今の相撲の興行というのは、江戸時代に確立されたんだが、もともと力士はカタギじゃなかったんだよ。つまり、俺たちと同じだった。ヤクザを角界から追放せよとか言っている人たちは、そういう歴史を知っているのか」

 ベテラン相撲ライターがこう明かす。

「かつて東京には相撲取り上がりのヤクザが徒党を組んでいたといいます。特定の代紋はなく、大組織の先兵として働いていた。組織のヤクザにとっては、何が起きても代紋を汚さなくて済む。体のいい”防波堤”になってくれるから、便利屋として使っていたようです」

 このようにヤクザと相撲界とのつながりは、根深い歴史を持つ。そうした中から、八百長も、賭博も、大麻も出てくるのだろう。武蔵川理事長と特別調査委員会の、蜥蜴のしっぽ切りのような大甘な処分では、この問題の根っこにある病巣を取り除くことはできない。ましてや、それを追及する立場のメディアまでが、そうしたことを知りながら、見て見ぬふりをしているようでは、なおさらのことだ。相撲界浄化は、これからが本番である。

 菅直人総理大臣の「消費税! 0%アップ」発言で、楽勝ムードだった参議院選がにわかに混戦模様になってきた。これだけ景気が低迷していて、何の有効な対策も打てず、無駄な役人や政治家の削減もできずにいるのに、この上、財源がないから国民にいっそうの負担を押しつけようというのだから、ほとんどの週刊誌が、挙って「空き缶よ、値上げ反対」しているのは当然だ。

 中でもポストの怒り方が真っ当で、的を射ているから、今週の第1位に推す。

 菅総理は、官僚の言いなりだとして、「財政危機」「日本がギリシャになる」「子孫に借金を残す」は大嘘だと厳しく批判する。

「財務省が煽る財政危機論にはトリックがある。900兆円近い借金の金額だけを宣伝し、日本政府が社会補償基金や特別会計の内外投融資など505兆円の金融資産を持っていることが議論から抜けている」(日本金融財政研究所所長の菊池英博氏)。差し引きで計算すると、日本の国家の純債務は367兆円くらいで、他の先進国と変わらないという。

 相澤幸悦埼玉大学経済学部教授は、日本とギリシャを同等に語る政治や行政の見識を疑うとして、こういっている。

「日本はギリシャと違って独自通貨を持つから、財政危機に陥ればまず市場で株や債券が売られ、円安になる。そうなれば輸出産業が活気づくという調整機能が働く。(中略)日本は国債のほとんどを国内で消化し、逆に外国に金を貸している。日本の対外純債権は260兆円もある」

 大マスコミまでが書きたてる財政破綻プロパガンダを、悪戯に危機感を煽り立てているのだと退ける。子や孫の世代が苦しむというのも違うというのだ。

「日本には政府資産とは別に、国民が持つ預貯金などの金融資産が約1450兆円ある。その75%は50歳以上が保有している。日本が高度経済成長で世界第2位の経済大国になった冨の蓄積といってもいい。世代別のバランスシートで見ると、親の世代は、作った国の借金より多くの資産を子や孫の世代に残すことになるのである」

 かつて橋本内閣は、財政再建を旗印にして、97年に消費税を3%から5%に引き上げ、深刻なデフレに陥った。

 今、実感する不景気感は、それ以上に深刻である。消費税を上げて社会保障費に充てるというが、年金や医療、介護などの制度をどう改革するのか、案さえ示していないのだ。

 なんだか分からない「財政再建」という言葉が一人歩きし、党内論議もまだしていない消費税値上げをされてたまるか。サッカーWCに浮かれている間に、そっと自分たちの財源になる消費税値上げを忍び込ませる。官僚たちの常套手段に騙されてはいけない。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

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最終更新:2010/06/29 21:00
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