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VODで観たい映画レビュー「劇場と配信のあいだ」

これが「おらが国の『ブラックホーク・ダウン』映画」! ロシア映画なのにハリウッドを感じる『バルカン・クライシス』

文=加藤よしき(かとう・よしき)

────劇場か、配信か。映画の公開形態はこのどちらかに偏りつつあるが、その中間が存在していることを忘れてはならない。VODで観られる劇場未公開の傑作を加藤よしきが熱烈レビュー!

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 2000年代前後、2本の映画が戦争映画の新しいジャンルを作った。『プライベート・ライアン』(1998年)、そして『ブラックホーク・ダウン』(2001年)である。

 特に後者の影響は大きい。ソマリアの街中で孤立した米軍が、絶え間なく押し寄せる民兵たちと激戦を繰り広げる。シンプルなプロットながら、いち兵士としてそこにいるような「戦場」の臨場感、そして永遠に続きそうな敵兵の襲撃による疲労感。この2点は強烈だった。

 あまりの面白さに人々は胸を打たれ、今日でも多くの映画人が「俺の『ブラックホーク・ダウン』」を作り続けている。その結果として『ブラックホーク・ダウン』映画という、ひとつのジャンルができてしまった。

 例えば、時折テレビ地上波でも流れる『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(11年)は、舞台をアメリカ、敵を宇宙人に置き換えた『ブラックホーク・ダウン』だ。『トランスフォーマー』(07年~)シリーズで知られるマイケル・ベイだって、リビアを舞台にした『13時間 ベンガジの秘密の兵士』(16年)を作ったが、これも『ブラックホーク・ダウン』映画だろう。こうした「俺の『ブラックホーク・ダウン』」を作りたいという思いは万国共通で、ついには太平洋を超え、皮肉にも原産地のアメリカとは犬猿の仲であるはずの国にも届いた。

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 今回ご紹介する『バルカン・クライシス』(19年)である。本作はロシアから飛んできた「おらが国の『ブラックホーク・ダウン』」だ。

 なお日本では東京テアトル主催の「未体験ゾーンの映画たち2020」というイベントで劇場でも上映されているが、東京限定の、しかも短期間のイベントの中の1本としてスクリーンにかかっただけなので、ここは長渕剛的な東京のバカ野郎マインドで、未公開作品として取り扱いたい。

 この映画は「実際に起きた事件をモチーフに」、「苛烈な戦場で」「絶え間なく押し寄せる敵を相手に」「ア~アアア~エイヤ~~~みたいな民族音楽が挿入されつつ」「壮絶な戦いを繰り広げる兵士たち」……などなど、『ブラックホーク・ダウン』映画のルール(?)をキッチリ押さえている。しかも特筆するべきは、ロシア映画なのに、ハリウッド映画よりハリウッド映画的なマインドがあることだ。で、ハリウッド映画的なマインドって何よ? というと……。

 映画は、1995年、紛争末期のボスニア・ヘルツェゴビナ領内で、主人公たちのチームが何らかの作戦に参加しているところから始まる。キリっとした隊長、常に歌うのが癖の三枚目、タバコが大好きな男、戦場でも愛する妻と子の写真を優しく見つめる秒で死にそうな若手、飄々とした爆発物のエキスパートのオッサン、そして凄腕の女スナイパー……妙にキャラが立ったメンバーが揃っているが、上の不手際によって任務は大混戦に。

 辛くも標的の人物を拘束、ヘリでの脱出に成功するが、チーム内に殉職者を出してしまう。悲しみに暮れるメンバーだったが、NATO側の人間は、苦労して捕まえたターゲットを理不尽にも今すぐ解放しろと言い出した。あまりの理不尽さに隊長のシャタロフ(アントン・パンプーシュニー)は、ブチギレてターゲットをヘリから放り捨てる。この事件をキッカケにチームは解散、メンバーはそれぞれ地下に潜るのだった。

 時は流れて1999年、世界はコソボ紛争に揺れていた。そんな中、かつてのチームの上長ベック(ユーリ・クッシェンコ)に、コソボの重要拠点・プリシュティナ空港を占拠せよとの極秘指令が下る。するとベックは「この任務は、アイツら以外には務まりません!」と、バラバラになったチームを再結集させ……。

 合間合間に当時の実際のニュース映像や、病院がNATOの爆撃でメチャクチャになる、罪もない人々が虐殺されるなど、悲惨なシーンが頻出する半面、ベックのキャラは完全にノリが『特攻野郎Aチーム』や『エクスペンダブルズ』(共に2010年)のそれ。

 ちなみに、このベックを演じるユーリ・クッシェンコは未公開作品ではよく見かける顔で、ロシア映画では『奪還2』(09年)や『バイオソルジャー』(08年)などのアクション映画で活躍し、米露合作映画の『ダーケストアワー 消滅』(2011年)にも出演する一方、YouTubeで調べると怖い顔面に反して、着ぐるみ姿で歌って踊っているなど、謎が多い人物だ。私は勝手にロシアの安岡力也と呼んでいるが、ともかく覚えておいて損はない俳優だろう。ちなみに本作ではプロデューサーとしても名を連ねている。

 そんなノリのクッシェンコに応えるように、地下に潜ったチームのメンバーも、こうあってほしいうらぶれ方をしている(たとえば女スナイパーはメリケンサック片手に売春宿の用心棒をしている)。

 メンバーはクッシェンコの呼びかけに応じて空港占拠に同行するが、そこに偶然のめぐり合わせもあって、シャタロフと彼の友人たちも合流。一行は空港にいた過激派のザコを難なく制圧するが、しかし、その空港は単なる空港ではなく、コカインや銃火器、大量虐殺の証拠が隠された過激派のアジトだった。

 かくして数百人の過激派が『ブラックホーク・ダウン』よろしく襲い掛かってくる地獄の戦闘が始まった。半端じゃない火薬量を使った爆破と銃撃戦、そして『ランボー 最後の戦場』(08年)的な人体損壊描写も炸裂。

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