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「働かないという選択肢があってもいい」 “リア充ニート”phaが考える社会とのかかわり方

pha.jpg日本中のニートの憧れ!? リア充ニート・pha氏。

 長引く不況で、一向によくならない失業率。どんな大企業もいつ倒産するか分からない──。誰もが「職」に対して不安を抱えながら暮らしているこんな時代に、あえて「働かない」という選択肢を選び、ゆる~く現代の波間をさすらう謎の男がいる。その男の名前はpha(ファ)。ネット界隈を中心にその特殊な生き方に注目が集まり、今年に入って各メディアがこぞって彼を取り上げ始めた。アルバイト的なソフト開発やメディア出演、ネット上で呼びかけたカンパで生活する彼の”リア充ニート”とも言えるライフスタイルは、およそ現代人の感覚からすると理解しがたいものがある。

 pha氏は現在31歳。京都大学卒業後、人並みに就職したものの28歳の時に出会ったインターネットとプログラミングに衝撃を受け退社。その後は「圧縮新聞」などのWebサービスを開発したり、毎日グダグダしながら”日本一のニート”を目指しつつ、日々ブログを更新したり、プログラマーなど理系の人材が共同生活を営むシェアハウス「ギークハウス」を運営している。

 いったい彼は何を考え、このようなライフスタイルを貫いているのか。その真意に迫った。

──そもそも、ニートといわれる生活に入ったに至った経緯は、「インターネットがあれば生きていける」と思って仕事を辞めたことがきっかけだそうですが。

pha ネットで遊んでいたら友達がいっぱいできるし、孤独にはならない。人とのつながりとか社会のつながりとか、そういうものに困ることはないなぁと思ったんです。よく、「ネットでのつながりはフェイクである」的な論調ってありますが、僕はそうは思わない。逆にネットの方が深くコミュニケーションできることもあります。僕は家に居ながら、Twitterやチャットで何百人としゃべっている。そうすると一日中誰かと繋がっているわけです。そういうつながり方ってネットがなければ全くできなかったことだし、そういう面ではネットの方が優れていると思うんですよね。

──ネット上ではニートに対し、「働かない奴はだめだ」「自分本位すぎる」などという否定的な意見がありますが、こういう意見に対して、ニート側からのリアクションってあんまりメディアに出てこないですよね。phaさんとしては、どのように感じていますか?

pha そんなに人を攻撃してくるっていうことは、その人がすごく大変そうだな、と思いますね。その人自身がすごく苦しんでいるんだなぁと。働かなきゃいけないということにすごく囚われて、それで苦しんだりすごく辛かったり、自殺してしまったり……。もうちょっと肩の力を抜いて楽になればいいのに、と思います。

──働いて社会に認められたい、地位や名声を得たいという欲求って、誰にでも少なからずあると思うんですが……。

pha そういった欲求はあんまりないですね。僕の満足感って植物的というか、ぶらぶら散歩してごはんがおいしかったとか、いい天気で気持ちよかったとかで十分な感じ。よく、「働かないに生活に満足しているのか」という意見もありますが、僕は満足していますね。

──今、月収はどれくらいですか。

pha だいたい10万円ちょっとくらいです。ブログのアフィリエイトやちょっとしたネットサービスを公開していたり、ネットで本を売ったり。それから時々原稿を書いたりしているのでパラパラと細かい収入があります。年金は滞納してますが……。

──と言うと、いわゆるフリーのエンジニアさんですよね? そこをあえてニートと名乗るのはどうしてでしょうか? phaさんの場合、プログラミングの知識を生かしてある程度稼げる、という確信のもとに会社を辞めているわけで、ニートではなくて、独立という形なんじゃないかと思うのですが。
 
pha  仕事を辞めて2年ぐらいは本当にニートだったんですが、いまは厳密に言えばニートじゃないと思います。本当はもっと完全なニートになりたいけど、まだそうもいかないので、ちょこちょこ小銭を稼いでいます。でも、毎日何もせずにプラプラして暮らしていきたいというのは常にあります。ブログを始めたときに、「働かなくてもいいんじゃないか」という主張をネガティブではなく、肯定的に発したかったんです。それで、ニートってキャッチーで伝わりやすいなって思ったんですよね。

──自分がメディアに出ることでの影響力といったものは意識していますか?

pha うーん……あんまりはっきりとは意識していないですね。ただ、ブログを書いていたら時々取材のオファーが来るので、ある程度の需要があるんだろうとは思いますけど。でも、ネットの世界を超えて広がっていくというのはあんまり考えていませんでしたね。

──なんだかphaさんって、ウッドストックに集まっていたヒッピーみたいですね。俺たちみたいに自由になろうぜ」っていう主張をしているけど、彼らだって本気でみんな自由になればいいと思っているわけじゃない。でもみんなガツガツしすぎだから「たまには僕らの歌を聞きなよ」というメッセージを発信している感覚にすごく近い。みんなでギターを弾いて歌っているというのと、インターネットというツールを使ってみんなで集まって話をしようよっていうのは、同じようなことなんじゃないかと思います。インターネットというツールがあったから、なんとなくニートというパッケージができちゃった、というか。自分では、そういうパフォーマーとして、切り売りしているという感覚はあるんですか?

pha  phaっていうコンテンツを自分でプロデュースしている感覚は多少あります。最初はブログでごくごく普通のことを書いていたんですが、ニートっぽいことを書いたらやけにウケて、そういうものを求められているんだったらやろうかなぁと。

 僕の知り合いのエンジニアにネット上で面白いことをやってる奴がいて、そいつはすごい借金を抱えていたんですよね。で、彼が借金を苦に死んでしまうのはもったいないって、ネットで知り合った人が100万円くらい彼に貸してあげたんですよ。結局、「ヤバい」とか「面白い」とか、何か本当に伝わるものがあれば、困ったときは誰かがきっと助けてくれる。そういうインターネットの力を信じている部分はありますね。

──でもそれって、同時にネットの中にいる人たちに対して、存在をアピールし続けなければならない、という現実がありますよね。要は社会に参加し続けていなければセーフティネットも働かないので、その互助システムが動作する状態をキープし続ける。それはもしかしたら労働と呼べるものじゃないのでしょうか。

pha うーん。僕はあんまりお金自体にこだわりがないから、「金くれ」と気さくに言ったり、余ったら自分より金のないやつにあげたりもするし。そんな感じでお金に執着せずに生活ができるように支えてくれる保障があったらいいなぁ、と思います。だからベーシックインカムみたいなのはあったらいいなぁって思いますね。

──例えば日本憲法で一応、強制ではないにしろ労働の義務が書かれています。結局、Phaさんはそもそも、そういうルールのある日本という国で生きているわけじゃないですか。

pha 憲法に書いてあるから働かなくちゃいけない、とはあんまり思いません。別に働きたい人は働いたらいいけど、働くのに向いてない人が無理して働いてしんどい思いしているほうが、基本的人権が侵されている感じがしますね。

──将来に対してビジョンってあるんですか。

pha 動き続けていたいですね。今やっていることにこだわって、それをやり続けるとかじゃなくて、自分が心動くものを追いかけていきたいっていうのがあります。だから、歳とったらどうなるかなんてあんまり考えていない。歳をとったらとったで、自分の肉体が変化したり、経験を積んだりして考え方も変わるかもしれない。その時自分が何考えるのかわからないので、あまりイメージできない。

──ある意味ポジティブというか、ロックンロールですね。

pha もう3年くらいニートって言い続けているので、ちょっと飽きているんです。でもまぁ、僕がニートをやることに需要があるからやってもいいかなぁという感じ。僕みたいな生き方も世の中にはあるし、いま何かで追い詰められて煮詰まっている人も、もっと別の生き方を見たらちょっと楽になるんじゃないかなぁとか。そういうのが伝わればいいなと思いますね。別にニートじゃない人たちを否定するわけではないです。それぞれ向き不向きはあるので。ニートに向いている人、向いていない人はいるし、適材適所ってやつですかね。ニートの状態だと落ち着かないし、社会から必要とされていない気がして不安だとか、そういう人はいると思う。だから、そういう人が働きすぎてしんどくなってしまったら、ちょっとニートもアリだろって目で見てくれればいい。それで楽になればいいなと思います。
(取材=有田シュン/構成=編集部)

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最終更新:2010/08/25 17:11

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