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タイ人の想像力はハンパない! 究極のB級スポット満載『HELL 地獄の歩き方』

Wat-Muang1.jpg(c) Kyoichi Tsuzuki

 デフレ不況に空前の円高と、低迷が続く日本の景気。そんな世の中に不安を抱いてか、若い女性を中心にパワースポットめぐりがブームになっている。神様仏様にもすがりたくなる気持ちは分からないでもないが、そんなパワースポットとは真逆をゆく、世界初(!)の地獄の歩き方を記した写真集『HELL』(洋泉社)が発売された。著者は、日本、そして世界のロードサイドに埋もれたアート、カルチャーを追い続けている都築響一氏。そんな都築氏が今回注目したのが、地獄庭園だ。

 地獄とは最強にネガティブな場所、それ以外のなんでもない。しかし世の中には、そんな誰もが絶対に行きたくないスポットNo.1である地獄を、わざわざ手間ヒマかけて再現している人々がいる。彼らはプロのアーティストではなく、地元のコンクリート職人や寺の信者たち、そして時には子どもたちというケースも。まったくの素人ゆえ、”止まりどころを知らない”強烈な地獄の世界が作り上げられているのだ。

 日本をはじめ、世界各国にはさまざまな地獄めぐりスポットはあるものの、そのなかでも群を抜いているのが、微笑みの国・タイだ。タイは国民の約95%が仏教徒というほどの仏教国。在家信者に向けた通俗仏教書と言われる「トイプーム」によると、宇宙には3つの世界(三界)、「欲界」、「色界」、「無色界」がある。「欲界」は、天、人間、阿修羅、餓鬼、畜生、地獄に分かれており、地獄庭園のジオラマもこの三界の説く世界観に基づいている。在家信者が守るべき戒律「五戒」を守らなければ悪いことが待っている、という因果応報観を現しているのだ。

Wat-Saen-Suk3.jpg(c) Kyoichi Tsuzuk
wat-pha-lak-loi3.jpg(c) Kyoichi Tsuzuk

 本書の中には16カ所の地獄庭園が紹介されているが、どの庭園の造形物もグロテクス極まりない。「プレート」と呼ばれる死者の霊、冥界の人間たちが悶え苦しむ姿が、これでもかというほどリアルに表現されている。とくに彼らの目の据わり方、血走り方はハンパない。「こんな地獄に行きたくない」と身が引き締まる思いがするのは確かだが、その強烈なインパクトに腹の底から笑いがこみ上げてくる。

 そして先日、この本の発売を記念したトークイベントが、青山ブックセンター六本木店で行われた。
 
 そもそも、都築氏と地獄庭園の出会いは10年以上前。バンコクのホテルで現地の雑誌を眺めていると、ページの片隅におどろおどろしい立体地獄庭園の写真が載っていた。その写真に衝撃を受けた都築氏はすぐさまフロントで場所を突き止め、その足で現地に向かったという。

tuzuki0001.jpg独特の語り口調で地獄庭園の魅力を語る、
都築氏。会場は爆笑の渦だった。

「地獄庭園は『地球の歩き方』にはもちろん載っていないし、『ロンリ―プラネット』にも載っていない。『タイの田舎めぐり』みたいなタイ語のガイドブックでも一言も触れられていない。僕らにとってはB級の面白スポットだけれど、タイ人にとってはB級以下。観光地でもなんでもない、見下されるかわいそうなスポットなんです。本の中で紹介している場所はどこも情報がまったくなかった。それでタイ人の友達を総動員して、最初はバンコクに住んでる友達に聞くんだけど、英語が通じるような高い教育を受けているようなヤツらは、こういうものを知らない。『昔聞いたことはあるけど、行ったことはない』『なんでそんな場所に行くの? タイにはもっときれいな寺院はいっぱいあるよ』と言われる始末」

そこで、友人たちに各地の観光案内所に片っ端から電話をかけてもらい、地道に一カ所ずつ探しあてていったという。まるで宝探し状態。タイ人からみれば、さぞかし変わり者の日本人だったことだろう。イベントではタイ以外にも日本や台湾、そして中国本土にある”地獄スポット”もスライドショーで紹介された。

「聖書だろうが仏典だろうが、どこの宗教でも考えることは大体一緒。天国はバリエーションがあまりなくて、キレイな女の人がいるとか、おいしいごはんがタダでいっぱい食べられるとか、寿命が永遠みたいな感じ。退屈で平凡な描写しかできない。でも地獄にはバリエーションがある。みんな痛いのは嫌だから、なるべく痛いこととか嫌なことを考えていくと、人類は一つのところに行きつくのかもしれない。だからどこの地獄にも力が入っている。これって人間の不思議なところ」

Wat-Phai-Rong-Wua2.jpg(c) Kyoichi Tsuzuk

 「タイしかり台湾しかり、ごはんとエステがよければ地獄もいい」というのは都築氏の持論だが、それにしても観光名所でもなんでもなく、タイ人にさえ知られていない地獄庭園。一体誰に向けて作られたものなのだろうか。

「地元の人が子どもを連れていって、そこで戒律を教えるわけです。『生き物を大切にしなさい、親の言うことは聞きなさい。そうしないとこうなるよ』という教育の場所なんです。子どもを怖がらせるために作られているんだけど、実際、子どもは大喜びして走りまわっている場合がほとんど。これで泣くのは4歳まで」

 地獄庭園のコンセプトは寺の一番偉い僧侶が考えるらしいのだが、仏教のほかタイの精霊信仰とも絶妙にミックスされ、もはやなんだか分からない境地に達している場所も少なくない。また、小銭を入れると造形物が動き出す細工がされているものもあり、もっぱら寺の小銭稼ぎの場となっていることも。 

「素人がやっているだけに、止まりどころを知らない。ここまでやることはないだろう、っていうのが多い。思いついたらとにかく作っちゃう。この考え方がすばらしい。グロもあるけどもちろんエロもある。タイは厳格な上座部仏教徒ですが、売春産業は盛ん。でもポルノはダメ。それなのに性器なんかばっちり作っている。あんまりにもリアルに作りすぎちゃうから地元のおばあさんとかから反感もあるけど、地獄のリアリティを出すにはこれは欠かせないということで説得したとか。それくらいちゃんと作っている。プロジェクト・イン・アビリティ精神というか、やる気がなくなるまでやり続けるって精神はすばらしいですね」

Wat-Kai1.jpg(c) Kyoichi Tsuzuk

 こういった地獄庭園はバンコク周辺にはなく、たいてい田舎に作られている。だだっ広い土地に無数の「プレート」たちが何の脈絡もなく作られ、誰に見られるわけでもないのに、現在も延々と拡張され続けている。それらは例外なくまったくケアされておらず、それが地獄庭園の独特な雰囲気をさらに演出するのに一役買っているのかも知れない。

「これがタイの田舎にあって誰も行かないから六本木で笑われているけど、これが東京都現代美術館みたいなところにあったらパーフェクトに現代美術なわけよ。で、タイ人の名前なんかつけてりゃ、「おぉー」ってことになる。地獄庭園ってすごく面白いけど、素人が作って場所も場所だってことで、ぜんぜん美術だと思われていないものの典型。考えてみると、僕はここ30年ほどずっとそんなことをやってきた。秘宝館、ラブホ、暴走族しかり、バリエーションに過ぎないのかもという気もする。アートって不思議だよね。場所によってB級になったり、美術館にあると笑っちゃいけないものになる。一体基準はどこにあるのかって毎回思う」

 これまでと同じアプローチでタイを旅したらどうなるか、ということで誕生した今回の写真集『HELL』。ただし、地獄庭園への具体的な住所や行き方は記載されていないのでご注意を。都築氏いわく、「この寺に行きたいってホテルのフロント係に言ったときに、『あぁ、それね。はい、パンフレット』って言われた時点で君の旅は負け」だそうです。
(取材・文=編集部)

HELL ~地獄の歩き方<タイランド編>

続編にも期待!

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最終更新:2010/11/12 11:26
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