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多忙を極める磯光雄監督も登壇!『電脳コイル』夏期特別授業開講

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 9月9日、新宿バルト9で「電脳コイル Blu-ray Box 発売記念『電脳コイル探偵団集まれ!”夏期特別授業”開講!』」が開催された。

 2007年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞のほか、日本SF大賞、星雲賞メディア部門など幾多の賞を総ナメにした不朽の名作『電脳コイル』を、1時間のトークショーと2時間のBlu-ray版上映でたっぷりと味わおうという、かなり濃厚かつ素朴なイベントである。トークショーに登壇したゲストは磯光雄(監督)、泉津井陽一(撮影監督)、野村和也(絵コンテ・演出)というそうそうたる顔ぶれ。泉津井はジブリ作品の魅力を支えるスタジオ・ジブリCG部に所属し、野村は監督作品第2弾も決定と、活躍の場を広げており、磯監督も冗談交じりに惜しみない賞賛を述べるほどの出世ぶりだ。

 肝心の Blu-ray Boxは11月25日の発売(※限定版の受注締切は10月11日正午)に向けてリテーク、リマスター作業が大詰めの段階。磯監督は徹夜でリテーク作業の後25、26話のコメンタリーを収録、そのままタクシーで会場に急行したということでかなりお疲れの様子だった。それでも満席のファンを前にサービス精神は旺盛で、冒頭、リテーク箇所についての解説を始める。

「本当はこっそり空いている穴をふさぐ作業なのであまり言いたくないのですが、20話、既に雑誌に出ているひげ増量(12話「ダイチ、発毛す」)と似たような増量系で、9話(「あっちのミチコさん」)のアイコの絵が設定と違っていた部分を直したりしました」

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 自身が描き下ろした限定版ボックスのパッケージイラストについては「こういうDVDやBlu-rayのイラストを描くのは初めてなので描き終わるまで気付かなかったのですが、ものすごくキャラクターのサイズが小さい……。顔やバストのアップじゃないと、Amazonなどに貼られるとまったく絵が分らない。ヤサコ(小此木優子、主人公)の等身が高いことにも終わってから気が付きました」と反省。それでも、細部に至る凝りよう、本気度がいかにも『電脳コイル』らしい。

 Blu-ray化にあたってひとつ問題となったのは、5年前の作品なのでデータの行方が分からない、ということだった。

「昔のデータを引っ張り出してきてテクニカルな撮影ミスを直したり、監督のオーダーを反映する作業なのですが、まず元のデータがどこにあるか分からない。撮影用のデータはそれに付随するセル、背景、CGの素材が全部バラバラなので、探してリンクをつなげて読み込む作業をしないといけない」(泉津井)

 なにやら電脳世界に迷い込んだ作中のキャラクターを救う手順のような話になってきたが、問題点はそれだけではない。

「ソフトウェアのヴァージョンが上がっちゃってるんですね、当時と比べると。その当時に設定したものを今のヴァージョンで開くとうまく反映しないので、一つひとつを探し出してプラグインをかけなおしたり、設定を全部やり直したり」(泉津井)

 膨大な素材から「どれに何をしたか」を探すだけで非常に手間と時間がかかる。磯監督も『電脳コイル』内の世界観、設定に喩えて「素材が一部だけ壊れていたり、こちらの操作がおかしいのか素材がおかしいのか分からないことも多く、まるで”古い空間”をさまよっているようでした」とその労苦を漏らすほどだった。まさに作品の因果が子に報い。

 素材がなければ描いてしまった方が早いと、磯監督が新規に描いたものもあるが、これはテレビシリーズ制作当時も同様だった。『電脳コイル』後半の作業部屋は、ちょうど登壇した3人がすぐ傍にいる配置になっており、泉津井の要望に応じて磯監督や野村が即座に足りない絵を補える環境にあった。普通は1~2日空くところ、30分で望みのカットが上がってきたという。

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「夜明けの朝日を浴びてコンテ作業を終え、ようやく帰れると思ったら、磯さんがそこで『じゃあ、直すか』と言い出す。二人三脚でやったことはいい経験になりました」(野村)

「僕らは”コイル部屋”と呼んでいたんですけど、途中で僕の席の後ろに磯さんがいて、通路があって隣に野村さんがいて挟まれるような感じ。すぐ話ができるのはよかったんですけど、ただ、あるときから磯さんが僕の使っているパソコンに”モニターのケーブル”をつなげと言い出して。僕がやっている作業をモニターで監視しようという。”あと3ミリ右”と後ろから指示が飛んで来る(笑)」(泉津井)

 15話から絵コンテで参加した野村。磯監督から寄せられた注文は「俯瞰で引いたアングルは避けてほしい」ということだった。

「物事を引いて絵をとらえていると最初に指摘されて。この作品ではキャラクターに寄せて、キャラクターの感情をもっと画面に映り込むようにしてほしいと注文されたんです。それが、寄りや引きを意識するきっかけになりました。それに『電脳コイル』の特別な仕様だと思うんですが、俯瞰の絵をなるべく使わない。これは磯さんにきつく言われていて。なるべく子ども目線で物事をとらえてくれと。その2点は最後の最後まで意識してやっていました」

 そうした集中力が作品の迫力につながったのは間違いない。この後さらにトークショーは続き、プレゼント抽選を経た後、全話を通した「おさらい講座」のほか、1話、12話、20話、最終26話が上映された。大スクリーンで鑑賞できる滅多にない機会とあって、集まったファンは食い入るように見つめていたが、終了後は拍手が起きるほどだった。

 なお1話はBlu-rayにも収録されないスペシャル版。古い空間に迷い込んだデンスケを電脳ペットのオヤジが救うBパートが出色の回だが、オリジナル版ではオヤジは言葉をほとんどしゃべっていない。ここに目をつけ、スペシャル版ではここだけのサービスとして、ボーカロイドで声をアテてしまったのである。

 「シモベイウナコラ」「ホナヨロシュウ」「(ヤサコに向かい)メンコイナァ」「ラジャー」「クンカクンカ」「ナンカヨウカ」「マダナンモミツカラヘンデ オモッタヨリヒロイワココ」「フヘェー オタスケー」と、かわいい人語を連発、狙い通りにウケていた。オンエア時よりも大幅に増量した12話のヒゲにも大爆笑が起きていたことはいうまでもない。

 すべての上映を終えた後は「スペシャルキャスト オヤジ:リング・スズネ」のクレジットが。盛りだくさんな夜だった。
(取材・文=後藤勝)

電脳コイル Blu-ray Disc Box

11月25日発売。

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最終更新:2013/09/11 16:06
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