トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 「受刑者人気ナンバー1は田代まさし!?」これが本当の”刑務所の中”『囚人バカノート』

「受刑者人気ナンバー1は田代まさし!?」これが本当の”刑務所の中”『囚人バカノート』

syujin.jpg『囚人バカノート』(扶桑社)

 誰もが存在は知っているし、大体どんなところなのかということも分かっている。しかし、大多数の一般人にとっては一生足を踏み入れる機会はないであろう、現代のミステリースポット・刑務所。

 一般社会から完全に隔離された世界であるだけに、中で受刑者たちがどんな生活を送っているのか多くの人の興味をそそるのだろうが、花輪和一の『刑務所の中』(青林工芸舎)や、安部譲二の『塀の中の懲りない面々』(新風舎)など、刑務所内の様子を描いた作品からは数多くのヒット作が生まれている。

 実はボク、出所中の田代まさし(また入っちゃいましたが)と仲良くさせてもらっていたもんで、「今ごろどうしてるのかな……?」と、ムショ内でのマーシーの生活に思いをはせるべく、最近この手の刑務所作品をたくさん読んでいるのだが、その中でもこの『囚人バカノート』(扶桑社)は異彩を放っていた。いわゆる刑務所を舞台としたフィクションや、実録モノといった類の本ではないのだが、ある意味、もっとリアルで生々しい受刑者たちの実態に迫れる一冊なのだ。

 テレビもある程度見られる、雑誌や新聞を読むことも可能と、外界からの情報をインプットすることはわりとできるものの、ブログやTwitterなどのインターネットはもちろん不可、話す相手も限られていて、出せる手紙も月に4通までと、アウトプットの手段は極端に制限されている受刑者たち。そんな彼らが自らの脳内に渦巻くさまざまな思いを自由にぶつけられるのは自分用のノートだけ!

 普通だったら書いた本人しか読むことがないであろう刑務所内で使用されたノートたちを、どういうルートで入手したんだか、大量に集めて、ツッコミがいのある部分ばかりをピックアップして肉筆のまま掲載してしまったのがこの『囚人バカノート』だ。

 ノートの内容は日々の出来事を記録した日記や、思いついたことのメモなどが中心となっているのだが、書いてる場所が刑務所&書いている人は受刑者というザ・非日常コンボによって、ただの日記やメモが爆発的な面白さを放ち出している。

 具体的にどんなことが書かれているのか例を挙げると、なぜか突然思いついちゃった「出所後にコレやったら大儲け間違いナシ!」という画期的な新ビジネスの企画書(どう考えても失敗しそう)。まずいムショ飯も一手間加えるだけでこんなにおいしく! というアイデア・レシピ集(ホントにおいしくなるのか大いに疑問!)。オカズに使った雑誌リスト&ランク付け(ホントはオナニー禁止なんだけど)などなど……、人はヒマ過ぎるとこんなにバカなことばっかり考えるものなのかと感心してしまうほどのバカノートっぷり。

 新聞などで知った時事ネタへの感想も多く書かれているのだが、特に興味を持たれているのは有名人が逮捕されたというニュースのようだ。やはり、よく知っている有名人が自分と同じ立場に墜ちてくるとなると「いらっしゃい!」という気分になるのだろうか。

 そんな墜落有名人の中でも受刑者人気ナンバー1なのが我らが田代まさし! 元々の知名度+その後の没落っぷりが受刑者たちのハートをガッチリつかんだのだろうか? なにも、こんなところで人気者にならなくてもという気はするが……。ちなみに、マーシーが男風呂をのぞいて逮捕されたと報道された段階で「あの痩せ方は絶対にシャブを打ってる!」と言い当てていたノートもあったりして、やはり犯罪者は仲間のニオイを鋭くかぎ分けるんだなぁ、と変なところで感心してしまった。

 また、思いの丈を書き留めるだけではなく、ノートをもっとさまざまな方法で活用しようと考える受刑者もいるようだ。自作のパズルや自作の迷路を書いてみたり(それを自分で解いて面白いのか?)、自作自演でオカズを作り出そうとしたのか、異様に上手い南明奈の似顔絵や萌え萌えなメイドさんのイラストを描いている受刑者(さらにジャイ子のイラストを描いている人もいたが、あれもオカズだったのか?)。詳細な四国地図を書き込んで、脳内お遍路参りを繰り広げているノート。さらには、ブラインドタッチの感覚を忘れないようイメージトレーニングをするためなのか、ノート上にリアルなキーボードを描いたものや、中にはコンピュータのプログラムをビッシリと書き込んであるものまであったりして、ただの紙であるノートから無限の可能性を生み出している受刑者たちのミラクルな想像力にはまったくもって感服するばかりだ。

 このように、どれもこれもツライ刑務所生活を少しでも楽しいものにするために創意工夫を凝らしたノートばかりなのだが、逆にコレだけ面白いノートを大量に見せられると、本当にコイツら反省しているのかよ? と思わずにはいられない。だって、ホント好き勝手書いてるんだもん。……そんなボクの疑問を解決してくれるノートが掲載されていたので、最後にご紹介しよう。

『刑務所での会話と言えば、犯罪手口公開と犯罪武勇伝がメインです。(中略)「二度と刑務所には来たくない」という人は居るけど、「二度と悪い事はしない」と言っている人は、あまり居ないね』

 ……ま、結局そういうことなんだよな。
(取材・文=北村ヂン)

囚人バカノート

パねぇ!

amazon_associate_logo.jpg

最終更新:2013/09/11 12:20
ページ上部へ戻る

配給映画