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ドキュメンタリー映画『相馬看花』公開記念インタビュー

「ニュースからこぼれ落ちたものに人間性が宿る」福島でカメラを回す松林要樹のドキュメンタリー論

matsubayashi00.jpg南相馬の避難所に泊まりながら撮影を続けた『相馬看花 第一部』が
公開される松林要樹監督。
今も東京の三畳間と南相馬を往復する生活が続く。

 この春、同じ監督の名前がクレジットされた2本のドキュメンタリー映画が相次いで公開される。2本とも東日本大震災の被災地を題材にしたものだが、映像から感じられる印象はまるで違う。その1本である『311』は森達也、綿井健陽、松林要樹、安岡卓治の4人による共同監督作。震災から2週間たった被災地を車で縦断するロードムービースタイルのもの(参照記事)。被災者ではなく、被災者に向かってカメラを回す彼ら自身の“ジャーナリストの業”が浮かび上がるという毒々しい作品だ。都内で3月から公開が始まり、賛否を呼びながらロングラン上映を続けている。もう1本は、『311』に名前を連ねた4人の中で最年少である松林要樹監督が単独で取材撮影を続けた『相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶』。わずか6日間の日程で撮影した『311』に対し、『相馬看花』は松林監督が福島第一原発に近い南相馬市の避難所で被災者たちと寝食を共にしながら約4カ月にわたってカメラを回し続けた。6日間とあらかじめ決められていた日数で現地を駆け抜けた『311』と、現地で生活する人たちと関係性を結んだ上でカメラを回した『相馬看花』とでは、当然ながらカメラと被写体との間の空気感が大きく異なる。そこにはドキュメンタリーを撮る上での大切なことが隠されているようだ。現在も南相馬での取材を続ける松林監督に『311』と『相馬看花』の違いについて語ってもらった。

 オウム真理教を題材にした『A』(98)『A2』(01)の森達也、戦場カメラマンとして知られる綿井健陽、松林監督にとって日本映画学校時代の教師であり、デビュー作『花と兵隊』(09)のプロデューサーでもあった安岡卓治ら映像業界でのキャリアで大きく上回る3人に対し、『311』のトークイベントでは、「カバン持ちみたいなつもりで」取材に同行したと語っていた、現在32歳の松林監督。『311』の反響をどのように感じているのだろうか?

souma.jpg福島第一原発に迫る松林監督。20キロ圏内は
無人化し、防護服に身を固めた自衛隊と飢えた犬
たちの様子がカメラに映し出される。
(c)松林要樹

松林要樹監督(以下、松林) 「『311』に関しては、悪く言ってもらったほうが安心します。褒められると“それは違うんじゃないか”という気がしてしまうんです。ボロクソに言ってくれたほうが、“なるほど、そうだよな”と思えますから。擁護しようとすればするほどダメだと思うんです。『311』はああいう形で公開してしまったので、何を言われても仕方ない。撮り終えた後も、映画が完成してからも、消化不良の気分でした。6日間の撮影では現地の人と関係性を作った上で作品を撮るのはムリだと最初から分かっていたので、『311』では自分は被災地の風景を撮っていたんです。あと、撮っているスタッフ、森さんが面白いなあと感じられたので、2日目からは“森さんを撮るしか、これは形になりませんよね”と車中では話していました」

■『311』の中で、森達也は悪役レスラーだった

 4人の監督による共著『311を撮る』(岩波書店)の中で、松林監督は正直に記述している。『311』の一回目のラッシュを観た後、松林監督は居酒屋でこう叫んだ。「こんな森さんの自傷映画、誰が楽しむんだよ! スタッフばっかりが目立って、まったく被災地の外に意識が向かわない。こんなの観る必要のない映画だよ! 楽屋落ちのくそ映画じゃねえかよ! うんこだよ」。酒が入っていたとはいえ、松林監督の本音だった。被災地に足を踏み入れ、何もできなかった自分自身への苛立ちでもあったはずだ。

松林 「酔っぱらうと、ボクは癖が悪いんです(苦笑)。暴言を吐いた後もボクが謝らなかったので、森さんからプロレス技のスリーパーホールドを決められました。かなり本気で絞められたんで、“あぁ、森さん怒ってるんだな”と分かりました(苦笑)。森さんは、ドキュメンタリーを志した頃の自分にとっては憧れだった人。もちろん、今も憧れの人です。『311』を一緒に撮って、森さんに対する見方が変わったとかはないんです。『311』の現場からは学ぶことがすごくありました。森さん、ああ見えてもすごく慎重な人。あぁ、こんなふうに相手に突っ込んで話を聞くんだなとか、傍から見ることでよく分かりましたしね。『311』での森さんは、あえて開き直った形で悪役レスラーを演じているんです。そうしないと『311』は作品にならなかった。『311』の公開後も、森さんが非難の矢面に立ってくれているわけです。ボクのところには、それほど非難中傷は届いていません。昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で『311』と『相馬看花』は続けて先行上映されたんですが、“『311』を撮った監督の作品は観ない”と言われたぐらいですね」

 『311』での苦い6日間の撮影旅行を終え、松林監督は一度東京に戻るも、トンボ返りで『相馬看花』の舞台となる福島県南相馬市へと向かった。南相馬市は福島第一原発の北に位置し、20キロ圏内から30キロ圏内にまたがる町だ。原発事故によって生活必需品やガソリンが枯渇した“陸の孤島”と化し、3月24日には桜井勝延市長がYouTubeでSOSを訴える事態に陥っていた。

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