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清武英利への直撃インタビュー

清武英利元巨人軍球団代表が『巨魁』に込めた本当の思いとは? 出版差し止め請求とナベツネが書いた大きな嘘

■「携帯電話の履歴を開示しろ!」 嘘の陳述書も書かせる読売の手口

──マスコミの報道では、「ナベツネ同様の権力志向」「現場がわかっていない」など、清武さんに対して否定的な意見も見かけますね。

清武 マスコミといっても、どこのマスコミかによりますよ。スポーツ関連の媒体を持っていないところで行ったあるアンケートでは、僕への支持率が圧倒的というのもありましたし。でも先ほど言ったように、スポーツマスコミは村社会だから、巨人の意向に反したことはなかなか書けない。それとテレビのコメンテーターなんかは日テレにも出る可能性があるから、渡邉さんのことを悪く言えない。彼らは印象で語っているとしか思えないけどね。

──仮に渡邉さんに反論があったとしても、読売が清武さんにスラップ【編註:SLAPP・大きな企業や団体が、個人や比較的弱い団体に対して恫喝的訴訟を行うこと】を繰り返しているところをみると、まるで説得力がありませんよね。

清武 僕個人に対して3つ(1つは取り下げ)、僕らの本を出した七つ森書館に対して3つ訴訟を起こされました。特に僕個人に対しては「契約金の問題が報道されたのは、意図的に僕が秘密書類を暴露したのだから、僕の私物の携帯電話の履歴を開示しろ」とまで訴えたわけです。取材源の秘匿が生命線である新聞社が、そんなことをやるなんておかしいですよね。

 しかしそのおかげで、同様に反感を持っていた読売の中の人たちが、自分にもやられるんじゃないかってビビってしまった。それだけじゃなく、僕の友人や関係者がみんな恐怖心を抱く。裁判を起こせば僕らは疲弊するし、向こうは漏洩防止と批判の封じ込めになるわけです。

──七つ森書館に対しての3つの訴訟は、清武さんたちが社会部時代の00年に新潮社から出した『会長はなぜ自殺したか』の復刻を差し止めようと、「契約の無効」「著作権」「名誉権」を持ちだして、今年4月に行われました。同書は総会屋への不正融資をめぐる第一勧銀・宮崎邦次元会長の自殺の真相と当時の金融腐敗を追った内容であり、今回の一連の騒動とはなんの関係もありません。読売側は何を根拠にしているんですか?

清武 契約の無効については、復刻本の窓口になっていた当時の社会部筆頭次長が、復刊に関して会社の許可を得ていなかった、ということを根拠にしています。著作権についても、すでに締結していたものでしたが、これも締結はしていなかった、と。彼は、「上司に相談せずやってしまった」という陳述書を書かされたようですが、そんなことあるわけがないでしょう。でも彼以外にも、清武班と呼ばれた僕の元部下たちが、新聞記者としての矜持を捨て去って読売の意図に沿った陳述書を書いているんです。私の告発前に、すべて許可は取れていた話なのに。七つ森書館は5人くらいの小さな出版社で、訴訟費用を考えると本当に気の毒だと思いますよ。

 それから、すでに七つ森書館が勝訴した名誉権については、昔の事件なのに実名が出てくることが問題だと言い出したんです。15年前の事件なのに、実名を出すことはプライバシーの侵害に当たると。そんなことを言っていたら、田中角栄だって実名で書けなくなりますよ(笑)。ノンフィクションだけじゃなく、すべての出版物が当てはまってしまうし、新聞の縮刷版だって全部黒塗りにしなきゃいけなくなる。大新聞社がそんな馬鹿馬鹿しいことを言っちゃダメでしょう。

──ちなみに、今号はタブー破りの本特集なんですが、今回の件を踏まえ、巨人や読売、渡邉さんのタブーについて迫った本は何かありますか?

清武 読んでもらいたいのは、前澤猛さんの『表現の自由が呼吸していた時代ー1970年代読売新聞の論説』(コスモヒルズ)。前澤さんは読売新聞の論説委員だったんですが、渡邉さんと論説委員会で戦って飛ばされた人なんです。渡邉さんは「俺は裁判で負けたことがない」って豪語しているけど、前澤さんとの裁判は実質負けている。とても根性がある方だと思いますし、非常に冷静に書かれている本です。

 それと魚住昭さんの『渡邉恒雄 メディアと権力』(講談社文庫)も立派な本ですね。僕は、魚住さんとは対談もしていて、単行本にまとまる予定です。

──渡邉さんの『わが人生記~青春・政治・野球・大病』(中公新書ラクレ)には、渡邉さんのプロ野球改革論が掲載されています。「プロ野球は文化的公共財だ」とも書かれていましたが、この論文をどのように感じられましたか?

清武 その続きを書いてもらいたいものですね。物事は、言い続けたり書き続けたりしないと意味がない。でも本人はすぐ忘れちゃうんです。ある時は文化的公共財だというけど、ある時はまったく逆のようなことをいう。『君命も受けざる所あり~私の履歴書』(渡邉恒雄・日本経済新聞出版社)には「私の後継者の本命が内山(斉・元読売新聞社長)君」と書いてあります。でも去年辞めさせられてしまいました。本当にプロ野球を改革しないといけないと思うなら、改革し続けないといけないんです。僕が渡邉さんを告発して9カ月です。僕がやり始めたことが広がって、おかしくなっている読売の実態をわかってもらえた部分もあると思います。でもまだまだ8カ月では短い。2年かかっても3年かかっても、最後まで続けていこうと思っています。

(文/大熊 信)

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清武英利(きよたけ・ひでとし)
1950年、宮崎県生まれ。立命館大学卒業後、読売新聞社に入社。社会部記者として、警視庁、国税庁などを担当。04年に読売巨人軍球団代表兼編成本部長に就任し、11年からは、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を務めた。著書に、『会長はなぜ自殺したか』(共著/七つ森書館)、『「巨人軍改革」戦記』(新潮社)など。

『巨魁』
清武英利/ワック出版(12年)/1600円
11年11月11日、当時読売巨人軍球団代表であった清武氏は、巨人のコーチ人事をめぐり、ナベツネこと渡邉恒雄球団会長が不当介入したことを告発した。本書では、同氏が自身の球団代表就任からナベツネに対する内部告発に至った経緯と、巨人軍、そして野球への思いを綴っている。

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最終更新:2023/06/12 20:01
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