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ラジオ批評「逆にラジオ」第4回

「おもしろくてあたりまえ」という壁を越える、若手コント師の傍若無人ぶり『ANNお笑いオールスターウィーク』

 金切り声が特徴的なツッコミの溜口は、冒頭から自分たちを、売れっ子芸人が並ぶ今回のラインナップ中の「ローテーションの谷間」だと卑屈に認め、かと思えばリスナーからの温かい励ましのメールを「普通のメールだなぁ~」と一刀両断。「リスナーを育てるのがパーソナリティーの役目だから」と分不相応な上から目線を提示した上で、「覚悟を決めてメールを送ってほしい」「簡単に送りすぎ」「質の高いメールを」と厳しいリクエストを次々とリスナーに突きつける。さらにはリスナーから大喜利の答えを募集しつつ、寄せられた答えにはダメ出しを連発、なのに最後に自ら提示する模範解答は人一倍ショボいという、傍若無人なスタンスでグイグイと聴き手を巻き込んでいく。『キングオブコント』で見た優等生的な印象(単に学ランをきっちり着ていたから、というだけかもしれないが)からはまったく想像もできない荒くれぶりで、爆笑問題や伊集院光を通り越してもはや毒蝮三太夫に向かっているのではないか、というくらいの思い切った毒舌をまき散らすその様子には、不快感どころか爽快感しか感じない。それを止めるでもなく流すでもなく適度に泳がせる相方の塚本の手綱さばきも見事で、リスナーも嬉々としてその設定に乗ることによって、溜口の奔放なキャラを中心に番組が形作られていく感触があった。時にラジオにおいては、パーソナリティーの強引さが、聴き手にカリスマ性と身近さを同時に感じさせることがあるが、この番組はまさにその好例といえる。

 芸人はラジオで、テレビの裏話や自らの近況報告をするものだ、と思っている向きは多いかもしれない。特に『オールナイトニッポン』はビートたけしやとんねるずの時代から、そういう傾向が強かった。しかしその一方で、このラブレターズのように、2時間まるまる強烈なキャラクターを演じきって全体をコントとして成立させてしまう、という手法が、テレビとは違う面白さを生み出す可能性だって充分にある。果たしてこのキャラクターを毎回演じきれるのか、売れっ子になってもやり続けることができるのかというのが、レギュラー化へ向けての壁になるだろう(一回限りの面白さというのも確実に存在する)が、「おもしろくてあたりまえ」という芸人に課せられたハードルを越えて、ラブレターズがラジオの自由さと前向きな展望を見せてくれたのは間違いない。
(文=井上智公<http://arsenal4.blog65.fc2.com/>)

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