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ラジオ批評「逆にラジオ」第4回

「おもしろくてあたりまえ」という壁を越える、若手コント師の傍若無人ぶり『ANNお笑いオールスターウィーク』

 そしてもう一つ、いま芸人がラジオをやる上でハードルとなるのが、テレビの存在である。そんなのは前からあるじゃないか、と思うかもしれないが、いわゆる「芸人のフリートーク」がここまでテレビの中心を占めるようになったのは、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)や『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)以降のことだ。つまり、テレビでも芸人のしゃべりを聴く機会が格段に増えているわけで、そうなると同じ芸人がラジオでしゃべる価値とはいったいなんなんだろう、ということになる。たとえば今回、月曜日の『オールナイトニッポン』を担当した千原ジュニアは、後輩芸人を二人呼んで2時間フリートークのみという番組形態をとっていたが、その中で披露された「女芸人10人と飲みにいった話」は、テレビですでに聴き覚えのある話だった。もちろん、内容的にはやはりおもしろいし、売れっ子なのでトークのネタがかぶることは仕方のないことだろうが、番組全体が、準備してきた話をする『すべらない話』的な空気に包まれており、聴き手との間に「パーソナリティーとリスナー」というよりは、「テレビタレントと視聴者」というべきよそよそしい距離感を感じさせた。

 今回登場した12組の中でも、比較的メジャーな芸人たちからは、いずれもそういった「あまりテレビと変わらない」印象を受けた。それはテレビでの露出が多い以上避け難いことではあるが、ラジオをやるならば、テレビよりも深いか鋭いか、あるいはなんらかの意外な側面や思いきった切り口を見せることで、リスナーとの距離感をグッと詰めてほしい、というのが聴き手側のわがままな本音である。

 その点、まだあまり正体の知られていないマイナー芸人のほうが、固定したイメージのないぶん、奔放にラジオのフィールドを駆け回り、リスナーとの一体感を獲得することができるのかもしれない。結果、この一週間を通じて最も面白かった芸人は、火曜日の『オールナイトニッポン0』を担当した、12組の中で最もマイナーなラブレターズだった。彼らは『キングオブコント2011』決勝における、直立不動でふざけた校歌を歌うシュールなコントで知られる若手二人組だが、正直それ以外にはまだ何も知られていないといったほうが正しいかもしれない。しかし、彼らはその知名度のなさとラジオの自由さを逆手に取るように、「過剰に卑屈でありながら極度に上から目線」という倒錯したキャラクターを2時間にわたり演じきることで、『オールナイトニッポン』の歴史に見事な爪痕を残した。

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