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「部落解放運動幹部でヤクザ」飛鳥会事件・小西邦彦の人間力『ピストルと荊冠』

 また本書には、メディアにおいてタブー視されている同和対策批判も盛り込まれている。

 飛鳥会事件を「エセ同和行為」として切り捨てようとする部落解放同盟。結果的にその立場を利用して罪を犯してきたものの、小西は40年にわたって、支部長として運動を続けてきた。また、空疎な報道批判を繰り返す同盟に対し「被害者、被差別者を前面に押し立てた報道批判は、真面目な同盟員や差別の助長・再生産にしか依拠できない部落解放運動の空洞化を如実に示していた」と苦言を呈し、「被害者意識ばかりを言いつのる運動団体は、もはや百害あって一利なしではないか」と、その存在意義を問う。著者もまた、被差別部落に生まれ育った一人だ。

 行政の事なかれ主義と、部落問題という“触らぬ神”の間の子として育った小西邦彦という怪物は、大阪の街を我が物顔で闊歩した。部落解放運動も下火となり、彼のような人間は、もう二度と出てくることはないだろう。しかし、その特殊な状況が生み出した人間くさい魅力には、どこか惹かれてしまうものがある。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

●かどおか・のぶひこ
1963年、兵庫県生まれ。ノンフィクションライター。関西学院大学卒業後、新聞記者などを経てフリーに。著書に『ホルモン奉行』(新潮文庫)など。『カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀』(講談社)で第33回講談社ノンフィクション賞を受賞。

最終更新:2013/01/04 12:00
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