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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 【逆襲のスター列伝】有働由美子

【逆襲のスター列伝】第3話「有働由美子~羽化した優等生~」

asaichiudo.jpg『NHKあさイチ きれいメンテ 40代からの美女力UP術』
(主婦と生活社)

過去に辛酸を舐めながらも自力で這い上がり、芸能界で光り輝くあの著名人の魅力を、心に茨を持つサラリーマンブロガー・真実一郎が斜め斬り!

 NHK朝ドラ史上に残る大傑作『カーネーション』は、毎日15分間では終わらなかった。その後に続く情報番組『あさイチ』の冒頭で、メインキャスターの井ノ原快彦と柳澤秀夫、そして有働由美子アナウンサーが感想を言い合う、そこまで含めてのコンテンツだった。

 特に有働アナのリアクションは回を重ねるごとに無防備になり、完全に一視聴者のスタンスではしゃいだり泣いたりしていたので、公共放送のアナウンサーがここまで感情を表に出していいんだ、と驚かされたものだった。彼女の横で毎日一緒にテレビを見ているような、茶の間が地続きでスタジオとリンクしている連帯感によって、朝ドラの楽しみ方は確実に増幅された。『カーネーション』のDVDは、有働アナたちの毎回のオープニング・リアクションと、コシノジュンコの服を着て満面の笑みを浮かべながらポーズをとる彼女のファッションショーを、ボーナストラックとしてぜひ収録すべきだったと思う。

 有働アナは昔はこんなキャラではなく、どちらかというと「華のない学級委員長」という印象だった。NHKへの入社は1991年。スポーツやニュースを担当し、オリンピックのキャスターも務めるなど、地味ながら堅実な実力を認められていた。2000年にはプロ野球選手宅へ変装して訪問する姿をスクープされ、略奪愛と騒がれたものの、エビジョンイルと呼ばれたNHK会長・海老沢勝二氏に寵愛され、3年連続で『紅白歌合戦』の司会に抜擢。名実ともにNHKの顔となる。

 しかし、2004年に相次いで発覚したNHK不祥事により海老沢氏が辞任すると、後ろ盾をなくしてアメリカ総局に異動。約3年間の海外勤務を経験することになる。その間に後輩の青山祐子が台頭し、他局では高島彩や中野美奈子が活躍するなど女子アナ界の世代交代が進み、有働アナは完全に過去の人になったかと思われていた。

 そこにきての『あさイチ』だ。2010年に開始されたこの番組は、“タブーをなくす”というコンセプトのもと、「セックスレス」「子宮」「生理」といった炎上上等の特集を次々と敢行。視聴率は絶好調で、もう長いこと各民放の朝番組を上回る。ここで有働アナはブレイクした。

 もはや伝説となった「セックスレス」の回では「セックス」「膣」というデリケートな単語を連呼し、あまつさえ骨盤底を鍛えるという膣トレ・マシーンに乗って「あっ! あ~」とアヘ顔を披露。NHKアナウンサーという優等生の鎧を脱ぎ捨て、むきだしの有働由美子という存在が解禁された記念すべき瞬間だった。

 彼女はこの番組で、まるで自分だけ無礼講パスを保持しているかのように奔放に振る舞うときがある。松坂桃李がゲスト出演した際は手をつないで入場し、いつもはイノッチが座るはずのゲスト横の椅子に勝手に座ったりと、終始はしゃぎっぱなし。確実に何かが吹っ切れている。この『あさイチ』での快進撃に関して、彼女は「NHKアナウンスルーム」のインタビューでこう答えている。

「ニューヨークでは『NHKです』といっても、『だから?』といった感じなんですよね。それを乗り越えるためには、私自身の情熱とか気持ちを伝えるしかないんです。本音をぶつけていくしかない。取り繕って生きていける環境ではなかったんですよね。それからは、”何事も正直ベースでとにかくぶつかっていこう”と考えるようになりましたね」

 渡米前は取り繕ったかりそめの姿であり、今の姿こそが真の有働アナだということだろう。「成長」というより「羽化」したのだ。

 取り繕わないハートの強靭さは、一連の「脇汗」騒動で存分に発揮された。「うどうさんの脇汗は見てられません」と書かれたFAXを自ら読み上げて釈明するという大規模な羞恥プレイに晒されながら、各種イベントで脇汗に関してコメントを求められるたびに堂々と応じ、笑いに転化しているのだ。ノーガードでカウンターを打ち返してくる力石徹のごとき凄みすら感じてしまう。

 キャラ変革を経て復活した有働アナは、いまや「人気女子アナランキング」の上位に名を連ねるまでになった。だが彼女が支持される理由は、ほかの女子アナたちとはちょっと違う。華やかさはないが、あけっぴろげで飾らない、そのままの姿が愛されているのだ。
(文=真実一郎<http://blog.livedoor.jp/insighter/>)

最終更新:2013/01/29 11:40
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