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週刊アニメ時評 第34回

うらやまけしからん! 2ちゃん発祥『まおゆう魔王勇者』のラブラブすぎる主人公たち

 類まれなる美貌と巨乳を持ついわゆる「いい女」な魔王は、その一方で学問一辺倒の寂しい生活を送りながら、いつか自分に会いに来る勇者とイチャイチャすることを妄想していた……という、残念な素顔を持つことが第1話で明らかとなる。その後、勇者と協力関係を結ぶことに成功した彼女は、堰を切ったように憧れの君へとラブモーションをかけまくるどころか、気がつくとすっかり恋人どころか夫婦のようなラブラブぶりを見せつけまくるのだ。学問に青春を捧げてきた才女が、意外なほどあっさりと結婚して周囲を驚かせる……なんてエピソードも時折耳にするが、まさにそんな感じである。

 男性なら誰もが憧れるであろう高嶺の花である魔王(と、その恋敵である女騎士)に言い寄られる勇者こそ、全男性視聴者にとって嫉妬の対象であると同時に、夢と希望の塊だ。戦いはプロフェッショナルながらも、童貞気質で女性の心理には疎い彼と積極的なアプローチを繰り広げる魔王の甘~いやりとりには、見てるこちらもニヤニヤするやら壁をパンチしたくなるやら大忙し(特に魔王と女騎士をはべらせてベッドインした勇者の姿に、思い切り壁ドンした視聴者諸兄は多いことだろう)。

 それでも毎回放送を見終えた後になんとも言えない幸福感を感じてしまうのは、やはり「恋する女性はかわいい」からだろう。ビジネスの場ではクールな表情を見せる魔王が、勇者を思って頬を赤らめる姿はどんなヒロインよりもかわいらしく、その幸せそうな表情と声は視聴者の心をもほっこりさせてくれる。つまり「かわいいは正義!」なのだ。

 演じる小清水亜美の声も、どこか品のある落ちついた淑女を思わせつつも、ウブな少女らしさを感じさせてキャラクターにピッタリだ。交渉や戦場に立った時のクールな姿と、勇者と一緒に寝ようと枕を持って寝室に忍び寄るようなウブな姿のギャップを見事に演じ切っている彼女には、全力でスタンディングオベーションを送りたい。

 彼女の演じたキャラクターといえば、過酷な運命を背負いながらも普通の恋を希求し続けた『交響詩篇エウレカセブン』のアネモネや、長い生の中で人間から迫害も崇拝も受けてきた『狼と香辛料』の狼少女・ホロなど、ハードな設定を持ちながらも少女らしい可憐さを失わない強い少女キャラクターが多く思い浮かぶが(『狼と香辛料』監督・高橋丈夫とシリーズ構成・荒川稔久は『まおゆう』の監督、シリーズ構成も務めている)、『まおゆう』の魔王もまたその系譜に連なるキャラクターだといえる。小清水の代表的キャラクターとなることは間違いない。

 そんなわけで、男性アニメファンの皆さんは(女性アニメファンも、もちろん無問題!)ぜひ『まおゆう』を見ながら、全国の同志と一緒にニヤニヤしつつ、壁を思い切りパンチしよう(お隣さんの迷惑にならない程度に)!
(文=龍崎珠樹)

「週刊アニメ時評」過去記事はこちらから

最終更新:2019/03/01 18:31
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