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次世代技術の結晶「初音ミク」を、“文化”にまで昇華させた者は単なるオタク?

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次世代技術の結晶「初音ミク」を、“文化”にまで昇華させた者は単なるオタク? – Business Journal(2月7日)

フィギュア『キャラクター
ボーカルシリーズ01 初音ミク』
(グッドスマイルカンパニー)

 前々回の『初音ミクを生んだ“革命的”技術を徹底解剖!ミクミクダンス、音声、作曲…』、前回の『キャラ設定はない?ボカロPが語る「初音ミクの作り方」〜AKBファンと同じ?』に続き、今回も「初音ミクとは何か?」に迫るべく、楽器メーカーのエンジニア、初音ミクのファンやボーカロイド愛好家に行った、インタビューの内容を書かせていただきます。

 そして本シリーズの最後として、「なぜ初音ミクは、最高水準の技術に支えられるまでに至ったのか?」「なぜ文化にまで昇華されたのか?」などについて、まとめさせていただきます。

【楽器メーカー技術者Oさん(仮名)へのインタビュー】

ーー最近の楽器メーカーは、ボーカロイド(ボカロ)という新しいメディアの登場を、どのように考えているのでしょうか?

Oさん 正直、「現状では、状況を見守る以上のことはできない」が答えになると思います。

 初音ミクで採用されている、ボーカロイド音源については、ヤマハさんが事実上の独占状態ですし、ヤマハさんが、初音ミクでこれからどのようなビジネスモデルを展開する予定なのかは、わかりません。

ーー情報処理技術を前提とするボーカロイド音源やMIDI音源によって、従来の楽器は、その存在意義を失なっていくことにはならないでしょうか?

Oさん 確かに、マイコン等によって音声が自由につくられる以上、未来の楽器が、従来のギターやドラムのような有体物である必要は必ずしもない、ともいえそうですね。

 しかし、演奏の世界においてボーカロイド音源やMIDI音源を中心とする楽曲作成は、まだまだメジャーにはなっていないと思います。

 ですから、我々は現在、「アコースティック感覚の電子楽器」の製品開発を行っているのです。

ーーアコースティックとはなんですか?

Oさん 電気的な処理によって作り出された音ではなく、楽器本来の音のことです。多くの人は、ドラムを叩けば1つ音しか出ないと思っていますが、実は、ドラムは叩き方の強弱やスピード、叩く位置によって、無限のパターンの音をつくり出すことができるのです。ピアノもギターも同様です。私達はこのような、楽器本来の音を再現できる電子楽器の開発を進めています。

 併わせて、現実のピアノやギターと同じ演奏感覚で扱えるようなインターフェースの研究も行っています。楽器は、決められた音を出すだけの道具ではなく、楽器からの振動を、直接身体で感じて楽しむものでもあるからです。

ーーでは、当面はアコースティック感覚の電子楽器の開発に注力していくのですか?

Oさん 難しい質問ですね。「楽器は音が出れば良く、インターフェースなどは、どうでもよい」と考える世代が現れていることを考えると、このような製品開発にはリスクがあるかもしれません。だからといって、従来の楽器が完全になくなっていくと考えることも難しいのです。

 何しろ、楽器とは数百年の時を経て、なおかつ生き残ってきた究極のインターフェースですからね。

ーーアコースティック感覚の電子楽器を志向するということは、演奏の形もこれまでと同様のままであるということになりますか?

Oさん 必ずしも、そうとも言えないと思います。まず、巨大ディスプレイに表示される初音ミクはもちろんですが、

・自分の素顔をまったく見せないままで演奏
・自分のシルエットだけを見せて演奏
・楽器の形をした物体を「持っているだけ」、演奏する「フリすらしない」

など、ボカロでない演奏であっても、その表現方法は実に多様化しています。

ーーそれでは最後に。ボカロは次世代の楽曲として主流となると思いますか?

Oさん わかりません。ボカロが当然となっている若い世代にとっては、ボカロは別段異様なメディアではありません。このような世代もいずれは中高年世代となるわけですから、ボカロと従来の楽曲は、今後も矛盾なく併存していくのではないかと思っています。

ーー本日は、お忙しい中、ありがとうございました。

【ボカロファンへのインタビュー】

 さて、ここからは、ボカロを愛好しているAさん、Bさん(ともに仮名)へのインタビューを紹介します。別段「隠れていた」というわけではないでしょうが、少し探してみると、私の周りにも結構な数の初音ミクファンを見つけることができした。

ーーこれは「隠れ蓑(みの)」ならぬ、「隠れミク」だななどと考えつつ(後で調べたら「隠れミク」は慣用名称となっていました)、インタビューをさせていただきました。

ーーボカロに対して、どのような魅力を感じますか?

Aさん 独特のリズムに魅了されます。特にアップテンポの曲は人気があり、変拍子の曲も面白いです。

ーー変拍子ですか?

Aさん 厳密に言うと曲の途中で拍子を変えることですが、例えば7/4拍子などでつくられた曲などもあります。

ーーそんなリズムの曲が成立するのですか?

Aさん 複雑なリズムがもたらす感覚は、好きな人にはたまらないものなのです。理解できない人には、永遠に理解できないとは思いますけど。

ーーほかには、どのような魅力があるでしょうか?

Aさん 歌詞というか、言葉に魅了されます。これまでの歌では決して表現されることのなかった言葉が胸を打つのも、ボカロならではの魅力であると思います。

 このような言葉がメディアミックスを生み出してもいます。例えば、ボカロ曲の内容を受けた小説が発刊されたり、演劇になったりもしてもいます。

ーーさいたまスーパーアリーナで開催された、1万人の観客を動員した初音ミクコンサートに行かれたそうですが、やはり男性が多いのですか?

Bさん 先日行ったコンサートは、初音ミクだけではなく、アニソン(アニメソング)の歌手も出演されていたこともあり、男女比率は7:3くらいでした。初音ミクだけのライブだと9:1となり、やはり男性が多いです。時間は3~4時間程度でした。

ーー観客の世代としてはどうでしょうか?

Bさん そうですね。入場料が7000円程度ということもあり、大学生、若手の社会人の世代が多かったように思います。全体としてはハイティーンから30歳代前半といった感じだったと思います。もちろん年配の方もいらっしゃいましたが。

ーー初音ミクのファンであることをカミングアウトするのは、恥ずかしいことなのですか?

Aさん まだ一般的に受け入れられていないため、少なくとも初対面の人には言いづらいです。少しでも自分を知っている人でないと、あらぬ誤解を受けそうという恐怖はあります。

 なぜなら、中高生時代には、いわゆる「『オタク』というレッテルを貼られること=いじめの対象」となるという現実的な脅威がありました。自分は、その時代の恐怖体験を今なお引きずっているのだろうと思っています。

Bさん 私は、初音ミクの文化を認めないなら、そこで生まれた優れた音楽を自己否定することなり、自分がその音楽を楽しむことができなくなります。そんなことは嫌です。

 私自身は、初音ミクのファンであることを恥ずかしいと思いませんが、それをカミングアウトするか否かは、次元の異なる話ではないか、と考えています。これは、「私がどう思われるか」という話ではなく、「相手がどう思うか」という問題だと思うのです。

 相手がいわゆるオタク文化に寛容であれば、ボカロ好きを隠す理由はありませんが、相手がそうでない場合は、オタク文化に触れていること自体を隠す(=ボカロ好きであることも隠す)ことになっても良いのかな、と。

 なぜなら、オタク文化に不寛容な人に、わざわざ苦痛(不快な気分にさせる等)を与える必要はないと思うからです。

ーー 色々なご意見をいただき、誠にありがとうございました。

●まとめ

 今回、3回にわたり初音ミクについて考察してきましたが、最後に筆者が至ったボカロに対する感想を述べさせていただきます。

【1】初音ミクを具現化しているボカロ技術は、最先端マルチメディア&ネットワーク技術の集大成である。

 前回、前々回でご紹介させていただきました通り、初音ミクを支える三大技術は、エンジニアとしての私を震撼させるすごい技術です。

 ・歌唱音声技術は「コンピュータにしゃべってもらう」程度の技術とは次元の異なる高みーー「コンピュータに歌ってもらいたい」ーーというエンジニアたちの執念の産物です。

 ・また、動画映像技術は「絵心」を母親の胎内に置き忘れてきた私にすら、たった一枚の絵を描くことなく初音ミクのアニメーションの作成を可能にさせました。

 ・そして、ソフトウェアのインストール後30分で、生まれて初めての作曲を完了してしまったという、作曲演奏技術に至っては、もう「魔法」と断言してよいと思います。


 加えて、あまりに高速になったパソコンの演算能力と、優れたマルチメディアデバイス、膨大な情報転送を可能とするインターネット回線、そして情報圧縮転送技術がなければ、初音ミクは、あなたの自宅にやってくることもなかったでしょう。

【2】かかる最先端技術を、研究機関などに閉じることなく、(サブ)カルチャーとの見事な融合を果たし、アミューズメントの一大産業にまで発展させたのは、若い世代の人間である。

 このようなコンピュータの人工歌唱を「気持ち悪い」と切り捨てることは簡単なことですし、「そんな市場はない」との経営的な判断をする方が楽に決まっています。

 しかし、我が国には、

・この得体の知れないボーカロイドという技術を信じ、それを文化として昇華するまでコンテンツ(ボカロなど)をつくり続けたボカロP
・そのボーカロイド技術を心の底から愛して研究開発を続けたエンジニア
・技術開発に出資を決断した経営者
・信じられないほど高機能なソフトウェアを無償で公開するプログラマー
・ボカロのコンテンツを発表する場を提供するプロバイダ
・N次創作を支えるコミュニティメンバー

そして、

・その文化を、辛抱強く、しかし温かく見守り続けたファン

の、初音ミクを守る「7人のサムライ」がいたのです。

 彼らの、技術力、企画力、創作能力、コミュニティ力、そして、新規の文化をすぐに取り入れられる柔軟性、そしてN次創作を許容できる認容性。

ーー本当にすごいじゃないか、この国の若者たち。

 彼らは、世界に対して胸を張って自慢できる若者たちであると、私は断言します。

【3】ボーカロイドや初音ミクコンサートなどを異端視する人は多い。しかし、その理由は観念の域を出ず、論理的でない

 第一にボカロを異端視する人は、きちんとこのボカロ文化と正面から向き合っていないのではないかと思います(それを一概に「悪い」とは言いませんが)。

 私は、このコラムの執筆が決まってから、中学2年生の娘に、初音ミクの歌を5曲選曲してもらい、人生最初のボーカロイドの試聴に挑戦しましたが、結論から言いますと「歌詞が、全くわからん」という感想でした。楽曲の嗜好以前の問題でした。初音ミクの歌より「TOEICリスニング」のほうがはるかに簡単と思えるくらいでした。

 私は、娘に対して、

「YouTubeとかニコニコ動画では、歌詞がタイトル(字幕)で出てくるから、みんな歌詞を理解できるのだよね。最初から歌詞は聞き取れないよね」

と言ったのですが、娘はキョトンとした表情をして、不思議そうに尋ね返してきました。

「なんで? 字幕なんかなくても、最初から歌の内容は聞き取れるよ」

 そう言った娘の顔は、特別な勉強をすることなく、毎回TOEICスコア900点台を叩き出していた、あの同僚の顔とそっくりでした。

 なんてこった。娘は「ボーカロイドに愛される中学生」であり、私は「英語」ばかりではなく「ボーカロイドにも愛されないエンジニア」であったのです。

ーーなんか、面白くない。

 私は、昨年のコラムの執筆開始時から、正月休みの全期間を通じて、娘の選曲した5曲、

『千本桜』
『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』
『はちゅねミクのうた』
『ブラック★ロックシューター』
『初音ミクの暴走』

を、何度も何度も聞きまくり(多分、200回以上は繰り返したと思う)、ようやく歌詞の9割を聴取できるに至りました。

 何事も「正面から向きあうこと」でなんとかなる(場合もある)のです。

 歌詞が理解できてくれば、「おお、これはこれで、実に味わいのある歌だ」と、縁側でお茶菓子を嗜むご老公のような気分で、初音ミクを楽しむことができるようになりました(もちろん、私にははなはだしく聞くに堪えない曲もありますが)。

 さて、話を戻しまして、ボカロ曲を「気持ち悪い」、初音ミクのコンサートで「愛しているよー!ミクー!!」と絶叫する観客を「怖い」と思う人がいるのは、当然だと思います。正直、これだけの徹底した調査とインタビューを実施したと考える、この私でさえも、まだ「引きます」。


 しかし、初音ミクが気持ち悪くて、アニメ映画やアイドルのコンサートなら気持ちが悪くない、というのは論理的に筋が通らないのです。これに対しては、「それは、『質の問題』ではなく『程度の問題』なのだ」とおっしゃる方もいると思います。

 そこで、以下に一つテーゼを提示しますので、ぜひ皆さんのご意見をお聞かせください。

「私は、ディズニーランドで、嬌声を上げながら、ネズミのぬいぐるみに抱き付いていく成人女性に対しても、同程度に『引きます』」

【4】あなたが「初音ミク」を理解できないのは仕方がない。しかし彼らの邪魔をしてはいけない。

 私が生まれて初めてワープロで実験レポートを提出した時、友だちは私をオバケのように見ました。

 私が電子メールの便利さを周囲に説いて回ったとき、「オタク」のレッテルを貼られて、大変冷たい対応をされました。

 また、私が、自分のパソコンで統計処理ソフトを自作して、バイト先の学習塾の生徒の成績管理に使った時、人でなしのように言われました。

 上記と同様に、みなさんが、新しい技術または文化である「初音ミク」を理解できなかったとしても、それは仕方のないことだと思います。

 しかし、初音ミクの技術は、未来の情報処理技術の根幹です。

 さまざまな分野(人工同時通訳、自動音声応対システム、VR(Virtual Reality)遠隔医療、QOL(Quality Of Life技術)への適用が考えられ、それらの技術の進歩は、人類の幸福に資するはずです。一人のエンジニアとして、これらの技術の発展を邪魔するものを、私は許しません。

 そして、新しい文化をつくり出して、発展させ続けている若者たちに、冷水をぶっかけるようなマネをしないでください。新しいメディアの先行者であり続けようとし、そして常に冷遇され続けた私には、もうわかっているのです。

 間違っているのは、いつだって、新しい技術とメディアを忌避する「あなた」です。
(文=江端智一)

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。

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最終更新:2013/02/08 14:00

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