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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第6回

あなたが価格を気にしない顧客であれば要注意?ビッグデータとポイントカードの怖い話

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

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あなたが価格を気にしない顧客であれば要注意?ビッグデータとポイントカードの怖い話 – Business Journal(4月9日)

「Thinkstock」より

 数多くの大企業のコンサルティングを手掛ける一方、どんなに複雑で難しいビジネス課題も、メカニズムを分解し単純化して説明できる特殊能力を生かして、「日経トレンディネット」の連載など、幅広いメディアで活動する鈴木貴博氏。そんな鈴木氏が、話題のニュースやトレンドなどの“仕組み”を、わかりやすく解説します。

 消費者を相手にビジネスをしている会社にとって、いい顧客とはなんだろう?

 高額な商品を買ってくれる顧客? ちょっと惜しい。正解は価格をそれほど気にしない顧客である。

 それはそうだろう。価格敏感度の高い顧客は、ほかにもっと安い商品を見つけたら、すぐにそっちのお店に出かけてしまう。ネットでそういう人ばかり相手にしている会社は、「価格.com」の最低価格を意識して、常に最安値の値付けを続けなければならない。だから、そんな顧客は本当はうれしい顧客ではない。

 実際、私自身は高額な商品を買う割には、価格敏感度が非常に高い消費者である。たとえば今月と再来月の2度、ニューヨーク出張をすることになっている。両方ともビジネスクラスの航空券を押さえているが、どちらも30万円未満の航空券だ。普通はこの路線のビジネスクラスは60万円台で、格安でも45万円程度だから、私のような、どこかから底値のチケットを探してくる消費者を相手にしていても航空会社は儲からない。

 しかし世の中は価格敏感度の高い人ばかりではない。ビジネスクラスに乗るような高額商品を買う人のおそらく3分の2は、平均的な45万円~55万円程度の割引航空券を選ぶし、3分の1は普通の60万円台の航空券でも疑問を挟まずに、気にせず購入する。

 そして会社に儲けを稼ぎ出してくれるのは、結局のところ、そのような価格を気にしない顧客をどれだけ多く抱えているかによるのである。

●価格を気にしない顧客の見つけ方

 ところで、あなたは企業が“価格を気にしない顧客の見つけ方”を一生懸命研究していることをご存じだろうか?

 昔からいろいろな手段が試されてきたが、ビッグデータがもてはやされる昨今では、世の中にかなり浸透してきた“ポイントカードを使う”という手が有効な入り口になっている。

 具体例を挙げて説明しよう。スーパーの食品売り場の場合、平均すると70%の商品が特売価格で売られ、30%の商品が通常価格で売られている。平均的な消費者も、だいたいこの比率で購入する。

 それはそうだろう。今日の夕食がカレーライスの予定で、牛肉とカレールーは特売品が売られているが、玉ねぎと人参はそうでもなかったとしたら、多くの主婦はそれらをまとめて買う。だからショッピングカートの中には、平均して70%の特売品と30%の通常商品が入っている。

 ところが私のような価格敏感度の高い顧客は、スーパーに入ってざっとそのような価格だとわかったら、その足で200m先の別のスーパーに入っていく。その別のスーパーでは逆に玉ねぎと人参が特売で、カレールーも最初のスーパーよりもちょっと安いことに気づくと、その3点を買って家に戻る。帰り道に最初のスーパーがあるので、そこでは特売の牛肉だけ買って帰る。こういう私のような底値買い・比較買いをする顧客は、本当はスーパーはあまり相手にしたくない。

 そこでポイントカードの出番である。顧客の利用履歴を分析して、支払額の中で特売品の比率が何%かを分析すればいい。すると顧客が3つのセグメントに分かれることがわかる。

 ・私のように特売品の比率が90%近い顧客。
 ・特売品の比率が60~80%台と平均的な顧客。
 ・特売品の比率が60%未満と平均よりも低い“価格を気にしない顧客”

である。

 この平均よりも価格を気にしない顧客を発見して、抱え込んで育てることが、会社が利益を確保するためには実に重要なのである。だから、とにかくまず最初に価格を気にしない顧客をリストとして把握することが大切である。

 次にこのリストを利用して、そういった顧客を囲い込んでいく。つまり大切な顧客として、私のような特売品しか買わない顧客と区別したサービスを提供していくといい。
価格を気にしない顧客は、カレールーだったらハウス食品の「ザ・カリー」以外は嫌だとか、牛肉は価格が高いほうが品質が高いと思っているとか、人参は低農薬の有機栽培でなければ買わないことにしているとか、玉ねぎと買い物メモに書かれていたら目に入ったものをカゴに入れるとか、理由はさまざまである。

 そこまでわかったら、あとはどう利益を上げる方法を考えるか。間違ってもそういった大切な顧客に「あなただけの30%引きクーポン」などを送ってはいけない。そうではなく、例えば有機野菜に特別なお金を支払う人には、特別な生産者から直に仕入れた食材を案内する。ないしは非常にブランドロイヤリティが高い商品がどれなのかがわかったら、それらの商品を目立たないようにちょっと値上げをする。実際に世の中の高収益小売業は、こういった経営努力をしているのだ。

●FBIは、スーパーの顧客のポイントカードからテロリストを見つけた?

 さて、最後にちょっと怖い話をしておこう。

 もしあなたが価格に敏感ではない人だった場合、そのことはできるだけ内緒にしておいたほうがいい。なぜなら、あなたのような人を、日本中の小売業者、サービス業者が求めているからだ。

 あなたが、ただいつものスーパーで割高な商品を買うだけではなく、実はちょっとした移動でもタクシーを使うし、スタバに入ったらカフェモカとついでにサイドオーダーも注文する人だと、もしわかってしまったら?

 そんなあなたが来店したとわかってしまうと、本来受けられるはずの割引が知らされなかったり、本当は必要ではないような高性能の商品を勧められてしまうかもしれない。

 個人情報保護法があるから大丈夫?

 でもあなたはポイントカードに加入した段階で、ポイント還元と引き換えに、あなたの個人データを使ってもいいという規約に同意しているはずだ。

 実際に、アメリカやイギリスといったビッグデータ先進国では、個人情報を詳細に把握しているのは政府機関よりもスーパーマーケットだったりするのだ。そして実際に、9.11テロの直後には、それらスーパーマーケットが進んでFBIなどの政府機関に個人情報を提供したことで、テロリストと類似した消費行動をしている顧客が政府の監視下に置かれ、その中から容疑者が浮かび上がったのだ。

 ポイントと引き換えにスーパーに提供している情報が、私のように「私は価格に敏感ですよ」という情報ならともかく、ビッグデータ活用をしようとしている企業にとって重要な「私は価格にそれほど敏感ではないですよ」という人の場合、最初からポイントカードになど入らないほうが身のためかもしれない。

 要所要所では現金で支払いをして、自分の購買行動の全容を知られないようにすべきだ。

 なぜなら少なくとも企業の側は、必死になってあなたのような人を特定しようと努力しているのだ。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

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最終更新:2013/04/10 14:00
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