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吉野家の誤算 最終赤字で路線修正…値下げの舞台裏と、値下げ競争再燃する業界の行方

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吉野家の誤算 最終赤字で路線修正…値下げの舞台裏と、値下げ競争再燃する業界の行方 – Business Journal(4月25日)

過当競争はダメだとあれほど…。(「吉野家 HP」より)

 牛丼チェーン、吉野家を展開する吉野家ホールディングス(HD)の経営が迷走している。

 吉野家は4月18日より牛丼並盛りを380円から280円へと100円値下げした。並盛りが280円になるのは牛海綿状脳症(BSE)問題で牛丼の販売を止める前の2004年以来9年ぶりのこと。期間限定ではない通常の値下げによる280円は株式を上場して以来の最低価格になる。

 吉野家はこれまで、ライバルの「すき家」(ゼンショーホールディングスが運営)、「松屋」(松屋フーズが運営)との低価格競争に距離を置いてきた。それが一転して価格競争に参戦したのは、吉野家が一人負けの状態から脱し切れないからだ。

 09年12月に、すき家と松屋は期間限定の値下げに打って出た。両社が既存店売り上げを伸ばすなか、吉野家だけが09年2月期から13年同期まで5期連続の決算で前年割れとなった。

「従来の価格では、満足できる売り上げに届かなかった。客が求める価値のうち、今は価格が最も大きい要素だ」。安部修仁・吉野家HD会長兼吉野家社長は、4月10日に開かれた13年商品戦略発表会で、値下げする理由をこう説明した。値下げしなければ売り上げを伸ばすことができない、と認めたわけだ。価格戦略の失敗をトップが公式の場で認めたのである。

 同時に、牛丼の定価を最大100円値下げすることで客を呼び込み、業績回復につなげるとの考えを示した。値下げ効果で客数が3割、売上高は15~20%伸びると皮算用した。

 価格戦争の標的にされて“負け組”に転落した吉野家HDの経営は迷走した。13年2月期の連結決算は発表直前になって、4億円の黒字から最終損益が赤字になった、と下方修正する失態を演じた。

 13年2月期の売上高は前期比0.8%減の1645億9900万円。本業の儲けにあたる営業利益は同60.9%減の18億7700万円。不採算店などの閉鎖に伴うロスを特別損失として計上したため、最終損益は前期の13億1000万円の黒字から3億6400万円の赤字に転落した。最終赤字は10年2月期以来、3期ぶりのことだ。

 業績をいかにして回復するか。黒字転換の切り札に据えたのが牛丼並盛りの100円の値下げだった。「安さ」を武器に客を呼び戻す作戦だ。14年2月期連結決算の売上高は5%増の1730億円、営業利益は60%増の30億円、最終損益は10億円の黒字となるとの見通しを明らかにしている。

 V字回復の根拠は2月の米国産牛肉の輸入規制緩和により、BSE問題で牛丼の販売を休止する以前に使っていた部位の肉を使用できるようになったことによる品質の向上と値下げの相乗効果で、国内の吉野家の売り上げが13%増と急回復するというのだ。

 しかし、これは見通しというより、願望に近い。価格競争が始まった当初は、値下げが集客力を高める効果があった。だが、消費者が値下げに慣れっこになったこともあり、値下げが集客に結びつかなかった。昨年春以降、すき家も松屋も低価格を前面に出した期間限定の値下げキャンペーンが鳴りを潜めていた。コメと牛肉価格の高騰で、軒並み業績が悪化したためで「牛丼(の価格)戦争は終った」とまで言われた。

 ところが、吉野家は反転攻勢に転じた。低価格戦略にカジを切ったのは吉野家HDの河村泰貴社長。名物社長だった安部修仁会長の後任として昨年9月社長に就任した。2代続いてのアルバイトからの叩き上げ社長である。吉野家の立て直し策として打ち出したのが低価格の実験店だった。

 店の名前は「築地吉野家 極(きわみ)」。12年10月、東京・板橋区と江戸川区に2カ店を出店した。メニューは牛丼並盛り(250円)と大盛り(400円)に絞った。並盛り250円は、すき家や松屋の280円を下回り、業界最安値だ。メニューを絞り込むことによって調理器具を少なくしたほか、床のコンクリートを打ちっ放しのままにして出店時のコストを約4割カットし、低価格を実現した。

 米国産牛肉の輸入月齢が緩和されれば牛肉の価格は下がる。それを先取りして、いち早く、低価格店を開店したわけだ。実験店の成果が上がれば、3年間で100店舗を展開する計画だった。

 ところが、「築地吉野家 極」は開店から3カ月後の13年1月1日に早くも値上げに踏み切った。牛丼並盛りは30円値上げされて250円から280円になった。業界最安値で大幅な来客数の増加を狙ったのだが、期待したほどは客数が増えず、経営は軌道に乗らなかった。

 しかも、この実験店はチェーンオペレーションの掟破りだった。チェーン本部がやってはいけない禁じ手をトップダウンで繰り出したことになる。チェーン店は北海道から沖縄まで同一商品を同一価格で売る「一物一価」が原則だ。河村社長が実験したのは「一物二価」制である。

 同一チェーンの店で価格差が生じると、あっちの店は高く、こっちの店は安いということになり、消費者の信頼が得られなくなる。公平の原則を保てなくなると、チェーンの経営は大ごとになるから、チェーン本部は契約解除をちらつかせるような強引な手を使ってでも一物二価をやめさせる。これが経営上の要諦である。ところが、吉野家HDはチェーン本部が率先して一物二価をやった。経営者として問題ありだ。

 実験店がうまくいったとは思えないのに、今度は全店で、継続的な値下げに踏み切った。エイヤとばかりに強行突破だ。

 吉野家が並盛りを280円に値下げすれば、値下げの効果を封じるために、ライバル2社が250円に値下げするのは確実だ。それが価格競争というものだ。値下げで国内の吉野家の売り上げが13%増えるようなら、吉野HDはここまで追い込まれなかったはずだ。

 皮肉なことに、吉野家の値下げの仕掛けが、ライバル2社の対抗心に火をつけ、業界最安値の250円へと誘(いざな)ったのである。「築地吉野家 極」は250円ではやっていけなくなったが、「すき家」、「松屋」が250円でやれることを実証したらどうなるのか。

 結局、また、吉野家が価格競争で敗者になるということなのではないのか。
(文=編集部)

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最終更新:2013/04/26 14:00

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