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教育改革は宗教から始まった? 歴史から見る宗教と教育の深〜いカンケイ

■神道は、なぜ教育で後れをとったのか?

 だが、明治時代には、国家神道【註1】が推し進められるなど、国策と密接にかかわってくる。

「維新当初、神道による国民教化を図ろうとした政府は、試行錯誤をへて、神道の中でも特に、神社は宗教ではなく”祭りごと”であるという方針をとるに至りました。このことで教育によって人々を神道教化する道は大きく狭まりましたが、他方で、神社崇敬は日本人なら当たり前という、現在も一定程度保たれている共通の認識を広めることには成功しました」

 戦後すぐに、宗教法人令が公布され、神社も宗教法人のひとつとなった。現在、神道系の大学としては、国学院大学と皇学館大学の二つがあるが、「その数がほかの宗教系の学校に比べると圧倒的に少ないのは、こうした背景が影響しているため」だという。

 さて、敗戦後、GHQによって国家神道は解体され、宗教は自由競争時代に入る。キリスト教、さらに新宗教も、戦前に比べると遙かに自由に布教することができるようになった。

1004_soukadaigaku.jpg学校法人・創価学園
宗教法人・創価学会系列の学校法人。19
67年に創価学会会長(当時)・池田大作氏
により設立。当初は創価中学・高等学校の
みだったが、71年には創価大学が設置され、
現在では幼稚園から大学までの機関が、
東京、大阪、札幌にある(写真は東京都
八王子市にある創価大学)。

「しかし、教育を通しての布教という点では、キリスト教は以前ほど熱心ではなくなりました。社会的に認知を得たこともあってか、受験校や進学校として有名になったり、父母が躾を期待して入学させたりということが目立ってきます。キリスト教の布教の意欲が、戦前ほど強くないことも関係しているでしょう」

 戦後という混乱する時代の中に、人々の抱える問題に対し、伝統宗教よりも積極的に人々に向かいあうことで組織を拡大したのが新宗教【註2】である。

 都市化、産業化など急激に発展した社会情勢の中で生まれた新宗教は、都市部を中心に信者を増やしていった。こうした中、学校法人を持つ代表的な新宗教としては、すでに戦前に金光教(1897年に金光中学設立)、天理教(1908年に天理中学を開設)の例があるが、戦後は創価学会(68年に創価高等学校を開設)、立正佼成会(56年に佼成学園中学・高等学校を開設)、PL教(55年にPL学園高等学校を開設)など一気に数が増加した。では、なぜ新宗教に教育機関が必要になるのだろうか?

「大きくいうと、その理由は2つあります。社会的な認知に関係することと、後継者の育成をすることです」

 創価学会を見てみると、前身である創価教育学会を設立した牧口常三郎は教育者だった。

「牧口氏は独自の教育論を展開し、小学校教員などを中心に会員を増やしました。実際に会を大きくしたのは、2代目の戸田城聖氏、3代目の池田大作氏ですが、10代で信念を固めれば生涯信仰を持ち続ける割合が高くなると、牧口氏は教育の重要性を自身の体験から感じ取っていたと思われます。この考えは戸田氏以降にも引き継がれ、教育機関を持つ前の50〜60年代の初期の段階から、若い人を積極的に折伏しました。教団が社会的に認知され、信者が一定数に達し、お布施などによる財源もある程度安定的に得られるようになると、信者育成の面でも宗教教育を手がけ、学校を持つというのは当然生まれてくる発想ということになります」

 かといって、宗教系の教育機関すべてが、熱心に宗教教育を施しているかといえば、そうではない(創価学会の教育については、当特集【3】を参照)。確かに、天理教のように教団の教義を取り入れ、積極的に信仰を育む学校もあるが、特別な宗教教育を行わない学校も少なくはないのだ。

「それは信者の割合を見れば明らかです。天理大学は、生徒や先生の多くが天理教関係者ですので、天理教に根ざした教育に力を入れています。また、創価学園は宗教教育を行なっていないと表明していますが、実際の教育環境からするなら、学生のほとんど、また教授の多くは信者ですから、実質的に宗教教育がなされているとみなせます。

 一方、信者以外の生徒が多数いる学校として、立正佼成会の佼成学園や、霊友会の明法学院などがありますが、これらの学校の授業に宗教色はほとんどありません」

 こうした違いは、宗教上の理念や規模によるという。一般の人から見ると新宗教は、まったく新しい宗教と思えるかもしれないが、教義や実践内容は、基本的に伝統宗教をふまえている。

「新宗教には、自分たちの独自性を前面に出すタイプと、それほどでもないタイプがあり、これが教育への関わりにも影響していると考えられる。一般社会の教育理念とあまり変わらないなら、宗教教育はそれほど推進しなくても、儀礼への参加などを通して、宗教的情緒を養うといったことでもそれほど問題はありません。しかし、その教団の理念がかなり特徴的である場合には、教育もまた独自にほどこす割合が高くなると考えられます」

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