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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.234

ギレルモ監督は“メキシコ生まれの小泉八雲”だ! 異形の神々への深き愛情『パシフィック・リム』

PacificRim03.jpg演出中のギレルモ・デル・トロ監督。ロボットの造型で大きな影響を受けたのは押井守監督の『機動警察パトレイバー』だったと語っている。

 韓国のポン・ジュノ監督(1969年生まれ)も日本のSFアニメやコミックなどのポップカルチャーを浴びるように観て育ち、『グエムル 漢江の怪物』(06)という傑作を撮り上げた。本多猪四郎監督の『ゴジラ』に込められていた反戦や反核といったメッセージ部分はポン・ジュノ監督が受け継ぎ、ギレルモ監督は日本の怪獣映画が有する神話性や原始的宗教観をビジュアル化することに特化したかっこうだ。ギレルモ監督は『パシフィック・リム』の物語の中に安直な社会的メッセージを込めることはしない。イェガーやKAIJUたちの巨大さ、強さそのものがメッセージである。イェガーやKAIJUたちは現代に甦った異形の神々なのだ。

 菊地凛子演じる新人パイロット・マコの幼少期を演じた芦田愛菜によると、撮影現場のギレルモ監督は「ボクのことはトトロと呼んで」と笑顔で話し掛けていたそうだ。作品上のクリーチャーたちも“八百万の神”の仲間として敬う日本人の特殊な感性を、ギレルモ監督は愛して止まない。明治時代に日本を訪れ、日本固有の伝統文化や風習を敬愛したギリシア人作家ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲を思わせるではないか。小泉八雲は日本各地に残る怪異談を集めて『怪談』『骨董』などの怪奇文学を執筆し、ギレルモ監督は日本人が怪獣やロボットに注ぐ愛情を『パシフィック・リム』へと昇華させた。これからは、ギレルモ監督のことを“メキシコ生まれの小泉八雲”と呼びたい。
(文=長野辰次)

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『パシフィック・リム』
監督/ギレルモ・デル・トロ 出演/チャーリー・ハナム、イドリス・エルバ、菊地凛子、ロン・パールマン、芦田愛菜 配給/ワーナー・ブラザース映画 8月9日(金)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国公開 
(c)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND LEGENDARY PICTURES FUNDING,LCC <http://wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim

◆『パンドラ映画館』過去記事はこちらから

最終更新:2013/08/07 12:26
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