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ネタにマジレスするなんてカッコ悪い……ネトウヨが大勝利宣言する松江市『はだしのゲン』閲覧制限問題の真相

gtaegetas.jpgはだしのゲン-全10巻

 行政がまさかのネトウヨに敗北か……? 島根県松江市の教育委員会がマンガ『はだしのゲン』について、昨年12月から市内の全小中学校に対して、教師の許可なく閲覧できない閉架措置を要請し全校が応じていた事件が注目を集めている。

 松江市教育委員会では、閉架措置を決めた契機として市民の一部から「間違った歴史認識を植え付ける」として撤去を求める陳情があったことを挙げている。昨年8月に行われたこの陳情は、12月に不採択になったものの、市教委は「旧日本軍がアジアの人々の首を切ったり女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」とし、その月の校長会で同作を閉架措置とし、できるだけ貸し出さないよう口頭で求めたとしている。

 新聞などの報道ではいずれも「市民の一部」からの陳情がきっかけとなっているが、実は陳情は松江市民が行ったものではない。なんと、遠く離れた高知市在住の人物が行った者なのである。

 陳情者は、中島康治を名乗り「中島康治と高知市から日本を考える会」なるブログを運営している人物。ブログ内の記事やリンク先を見るに、正統派のネトウヨ……いや「行動する保守」の人物だと思われる。

 松江市の小中学校で閉架措置が行われていることが報じられて以降ブログでは「祝〓ニュース速報」のタイトルで

<嘘出鱈目はだしのゲンが、松江市の全小中学校で、自由に閲覧できない「閉架」扱いになったようです。いや~陳情やらなんやらで地味に動き回ってよかったです。>

 と記し、陳情書の画像などを公開している。

 また、過去のエントリーを見ると、この中島氏は地元高知県でも『はだしのゲン』を学校図書館から撤去するように求める陳情を行うも否決されている。

 つまり、松江市教育委員会では陳情が否決されているにもかかわらず「残虐性」を主たる理由として、閉架措置に踏み切ったのである。作品中に描かれた主義主張には、さまざまな意見があるのは確かだ。しかしながら、今回の件は「残虐性」を言い訳にして、特定のイデオロギーに寄った図書を排除しようとする行為いるのだから、トンデモないことである。これがスルーされたら、思想の左右によらず、排除の方便に「残虐性」が使われることになってしまいかねない。

 「市民の意見」といいつつも、実態は、遠く離れた土地に住む別の自治体の市民の意見に屈した松江市教育委員会。

「松江市は伝統的に右派的な意識の強い土地です。ですので、こうした意見に応じてしまったのではないか」

 と、ある図書館問題の研究者は語る。発端となった陳情者のブログへのアクセスも増えているようで、「市民って松江市民じゃないのか!」と批判が殺到するのは必然であろう。

■描かれる主張は掲載誌の空気を読んだだけ?

 さて、随所に見える「反日(ネトウヨ視点)」的な主張ゆえに、左翼による左翼のためのマンガのように批判される『はだしのゲン』。しかし、この作品が汐文社から単行本として刊行され、現在に伝わるまでには思想の左右を超えた運動があったことは、あまり知られていない。

 当初『はだしのゲン』は「週刊少年ジャンプ」1973年25号から1974年39号まで連載(現在の単行本で4巻目まで)された。しかし、集英社は単行本化を躊躇し、原稿は中沢啓治に戻されていた。

「そこで、日本共産党の同調者でもあったマンガ評論家の石子順氏が、共産党系の出版社である汐文社に単行本化を働きかけました。ところが、当初は共産党の関係者は“マンガなんて……”とひどく抵抗したんです。そうこうしているうちに、単行本化の運動は広がっていき、共産党の一部、自民党の国会議員から日学同(日本学生同盟=民族派学生組織)までが参加するようになっていました」

 と、当時の単行本化に至る経緯を知る関係者は語る。今では左派の側の伝統的な平和学習教材として使われる『はだしのゲン』だが、それが「たかがマンガ」と軽んじられていたとは驚きだ。


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