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三光作戦なんてウソなのは当然……それでも『はだしのゲン』を図書館から排除してはいけない理由

gtaegetas01.jpg『はだしのゲン-全10巻』(汐文社)

 8月22日、日本図書館協会は「図書館の自由委員会」の西河内靖泰委員長名義で、「中沢啓治著『はだしのゲン』の利用制限について(要望)」という要望書を島根県松江市に送付。26日に、同市教育委員会が各校への制限指示を撤回する騒動があった。

 その際に送付された文書で着目すべきは、作品の評価うんぬんではなく「図書館の自由に関する宣言」を元に、閲覧制限に懸念を示していることだ。要望書の中では「図書館の自由に関する宣言」を引用して

<図書館は国民の知る自由を保障することを最も基本的な任務とし、図書館利用の公平な権利を年齢等の条件によって差別してはならず、「ある種の資料を特別扱いしたり、書架から撤去したりはしない。」と明記しています>

とし、

<子どもたちは、学校図書館を、蔵書の内容によっては自由に手に取り、読むことを抑制する場であると受け止めるのではないでしょうか。学校図書館の自由な利用が歪むことが深く懸念されます>

と指摘している。ある図書館関係者は、この要望書の意義を次のように語る。

「日刊サイゾーの記事(記事参照)でも触れられているように、『はだしのゲン』の4巻以降は共産党系雑誌、次いで日教組の機関紙に連載された、いわば内輪のサークル向けの大人の読み物です。おそらくそのことが、閲覧制限を働きかける要素のひとつになったことは想像に難くありません。しかし、図書館は作品の評価を判断するところではありません。この要望書は、それを踏まえた上で閲覧制限のみに焦点を当てています」

 さらに、別の図書館関係者からはこんな指摘も。

「閲覧制限を陳情した人物が指摘するように、『はだしのゲン』が歴史的事実ではないことを記しているのは明らかです。妊婦の腹を切り裂くといった残虐行為や三光作戦は、日本軍ではなく中国軍の行っていたことです。しかし、そうした間違いがあるとしても、閲覧を制限するのは、図書館としてはやってはならないことです」

 これまで、図書館関係者が特定の思想に依拠して蔵書を閲覧制限したり、廃棄してしまう事件は幾度もあった。2002年に発覚した船橋市西図書館蔵書破棄事件は、最もよく知られる事例のひとつだ。

 この事件は、船橋市西図書館の司書が自らの政治思想に基づいて、「新しい歴史教科書をつくる会」関係者の著書など計107冊を勝手に廃棄していたものだ。

 この事件の時に、日本図書館協会は調査の上で、司書の行った行為を「図書館界全体の信頼を低下させ、また、図書館員の社会的地位の向上と図書館事業の進歩発展を図る日本図書館協会の活動を阻害するものである」と厳しく非難している。

 図書館がどのような本を購入し、利用者に提供するかは司書の判断に委ねられる。これは非常に困難な作業ではあるが、司書が職権を利用して個人の思想や好き嫌いで選書することはあってはならないし、特定の利用者の意向ばかりを反映することは許されない。

 08年に大阪の堺市立図書館で起きたBL小説廃棄要求事件は、選書の困難さを知らしめた事件のひとつだ。この事件は、堺市立図書館に対して市民から「所蔵しているBL図書を排除せよ」とする要求から始まったもの。図書館側は、該当する図書を選別の上で閉架へ移動、今後の収集・保存は行わないという対応をとった。ところが、実施後に今度は図書館側を非難する意見が殺到、一転して従来通り貸し出しを行うことになったのである。

 この事件は全国的に注目され、途中から「ジェンダーの問題」うんぬんになってしまい、いくつもの議論すべき問題も沙汰止みになってしまった。特定の図書の排除は、決して許される問題ではない。しかし、堺市立図書館では特定の利用者の要望に応える形で5,000冊以上のBL図書を収集していたのだ。

 たとえ利用者からの要望だとしても、地域の図書館が特定のジャンルの図書を半ば際限なく収集すること、また「女性向けのエロ本」ともいうべきBLを公共図書館が収集することは妥当なのか? 利用者の要望に全面的に応えるというのならば、男性からエロ本のリクエストがあった時も応じなくてはならなくなるのではないか? これらの問題は、いまだに結論が出ていない。


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