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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第115回

ダメな奴らは、かわいらしい――NHK×松尾スズキ『ちかえもん』という虚実皮膜の痛快娯楽劇

 ここで描かれる近松は、プライドが高いのに自信はないという優柔不断な男。武士を辞めて浄瑠璃書きとなるが、誘われると今度は歌舞伎作家になって、ちやほや持ち上げてくれた男がいなくなると、浄瑠璃に戻ったという経歴。だが、スランプに陥って、劇場は不入りが続いている。そんなときに、親不孝を称賛する歌を歌いながら「不孝糖」なる飴を売り歩いている謎の渡世人・万吉(青木崇高)と出会ったことから、物語が始まる。その万吉が一目惚れする遊女が、お初(早見あかり)だ。そして豪商・平野屋の放蕩息子・徳兵衛(小池徹平)との三角関係を、おそらく近松が間近で見て、『曾根崎心中』の着想を得ていくのだろう。

 こうした物語自体も、もちろんこのドラマの見どころではあるが、最大の魅力はそのキャラクターだ。特に、松尾スズキ演じる近松門左衛門の異常なかわいらしさだ。あふれ出す、心の声のボヤキ。それに合わせた豊かすぎる表情がものすごい。

 例えば、こんなシーン。徳兵衛が遊女たちと遊んでいる最中に万吉が騒ぎを起こしてしまい、台なしにする場面だ。

万吉 「すんまへん」
徳兵衛 「待てえ。そないな謝り方で済む思うてんのか?」
近松 (あ!)
徳兵衛 「私を誰やと思ってるや。平野屋の跡継ぎやぞ」
近松 (そやった! こういう奴やった、このお人は!)
万吉 「へい。それがなんでっしゃろ?」
近松 (そしてこいつはこういう奴やぁ~~!)「すみまへん。こいつ、ちょっと変わりもんでんねん」
徳兵衛 「近松つう、物書きか?」
近松 「へえ」(呼び捨てぇ~? 年長者つかまえて、呼び捨てぇ~?)
徳兵衛 「お前の知り合いか?」
近松 「お前~?」

( )の中は心の声だ。その間中、松尾は表情筋が人の2~3倍になったかのように、形容しがたいほど顔を変形させている。さらに、土下座を要求されると(誰がそないなことするかい! けど、しゃーないや~ん!)(浄瑠璃書けなくなったら困るも~ん!)と、心の中で叫びながら頭を下げようとするのだ。

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