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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

“見たくないもの”の中で、二人は――善意で世界を変える方法『いつ恋』第2話

itsukoi0127.jpgフジテレビ系『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』

 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の第2話は、練(高良健吾)と音(有村架純)が東京で再会するまでを描く。第1回ではぐれてしまった二人だが、音は練の住んでいる雪が谷大塚で暮らしている。生活圏も一緒で、お互い会いたいと願っている二人だが、すれ違ってばかりで会うことができない。恋愛ドラマとしての、正当ともいえる展開だ。

 この第2話では、出会えない二人の日々の暮らしを描いているわけだが、練は第1話で明かされた通り引っ越し屋で、東京に出てきた音は介護施設で働いている。このドラマの脚本を務める坂元裕二は、特に『Mother』(2010年、日本テレビ系)以降は現代劇に社会性をまぶすのを得意としているが、この職業の選び方も、まさに現代ならでは。どちらも、いわゆるブラック企業としてスポットライトを浴びることが多い職種だ。

 実際、練は引っ越しの最中に商品を壊したという濡れ衣を着せられて、自腹での弁償を命じられる。音は音で、過酷な労働環境に苦しんでいる。練の上司が言う「今は、どこの従業員も自腹だよ」という言葉と、音の上司が言う「みんな頑張ってるし、ワガママ言わないよね」という言葉は、ブラック企業の体質そのものだ。“みんなつらいのだから、お前もつらくあれ”という、論理的でないのに説得力のあるその考え方は、現代の日本社会の闇を感じさせる。

 ブラック企業では、誰かの善意で仕事が成り立っている。たとえば音は、すれ違いざまに先輩から「お風呂の掃除、お願いできる?」と言われ、自分が犠牲になることでその役目を担う。介護職も、引っ越し屋も、あるいはほかのあらゆるブラック企業も、誰かが善意を持って犠牲になることで成立している職種だ。それは、最近ニュースで取り上げられるバス業界も食品業界も同じことで、言ってみれば、誰かの善意を犠牲にすることによって企業の収益を効率化するというのが、ブラック企業の仕組みである。

 旧来のドラマであれば、その仕組みを壊してカタルシスを得るという手法が取られるのだろう。その善意が、間違った人を改心させる、あるいはその善意が誰かから感謝されるというような形で。だが、坂元はそうしない。それが2016年のリアリティだ。弁償を命じられた練は「腕立て伏せを300回したら、金を払ってやる」と先輩に言われ、チャレンジするのだが、それを見た先輩や上司は改心などしない。むしろ、見たくないものを見てしまった、という顔を浮かべてその場を立ち去ってしまう。善意で世界を変えることはひどく難しいものだ、というリアリティと残酷さがそこにはある。


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