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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

視聴者が主体として考える作品とは──開始3分で面白さを伝える方法『いつ恋』第4話

itsukoi0210フジテレビ系『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』

 ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の第4話、今回も怒濤の展開と丁寧な描写によって視聴者を涙に暮れさせたわけだが、視聴率は8.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と振るわなかった。この連載では、視聴率に対してどうこう言ったりくさしたりということではなく、あくまでも作品について書いているが、しかしなぜこれほどの作品が、この程度の視聴率しかないのかについては考えておきたい。作品の質と視聴率が、あまりにもかけ離れている。

 結論からいえば、この作品は面白すぎるのではないか。言葉を換えれば、作品としての密度が高すぎるのではないか、といえるかもしれない。

 好き嫌いは感性の問題だが、面白いかそうでないかは、多くの部分を理屈が占めている。特にフィクションの脚本という観点からいえば、好き嫌いを別にして、面白いかそうでないかを理詰めで判定することは可能だ。第4話では、開始わずか2分でそれがわかる。このドラマは、明らかに面白いということが。

 前回の最後で、交際相手に殴られて入院した木穂子(高畑充希)を練(高良健吾)が見舞っている、そのシーンだ。木穂子は練の後ろから「あんな長いメール送られて、正直引いた人」と尋ね、練の右手をつかんで「はい」と言って手を挙げさせる。さらに「この女、ウソばっかりついてって思った人」と尋ね、再び「はい」。そして3度目、「ちょっと重いから、別れたいって思ってる人」と尋ねて手を挙げさせようとするが、練は力を入れて拒否する。練、向き直り、「木穂ちゃんは木穂ちゃんです」と言って、自分で手を挙げる。そして2人はお互いを抱き寄せ、木穂子はか細い声で「もう駄目かと思ってた。普通の恋人同士になろうね。なれるよね」と練に言うのだった。ここまでで、ドラマの第4話が開始してからおよそ3分だ。

 ドラマとはこういった脚本の上に、役者が演技でニュアンスを表現し、監督が演出を加えることにより、情報量が足されていく。基本的には情報量と面白さは比例関係にあり、情報量が多く含まれた映像作品は面白い、あるいは見応えがあるといった表現で評される。だがそこでは、見る側の意識も試される。ただ漫然と流れてくる映像を目にするのではなく、作品の情報を深く知ろうとする姿勢が、情報量の多い映像作品では必要になる。

 例えば先ほどのシーンでいえば、会話という情報のほかに、特に木穂子のパーソナリティが情報として隠れている。彼女はそのまま本音を言うのが苦手な人で、それは練の後ろに立って顔を見られないようにしていることからわかる。言葉と仕草が本心とずれていることから、言葉で気持ちを伝えるのが得意だとは思っていないということも。そして、思っていることと逆のことを言うという木穂子のパーソナリティは、その後の「普通の恋人同士になろうね。なれるよね」という言葉を不安なものにする。口ではそう言いながらも、実は彼女はそうできると信じていないのではないか、という暗い予兆までもが、この3分間に情報として潜んでいる。それは決して偶然にそうなっているのではなく、そうやって作られているのだ。


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