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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.386

高齢者のセックスや懐エロ特集ばっかでいいの? スクープ報道に注ぐ情熱と誤算『ニュースの真相』

truth-movie02『ヴェロニカ・ゲリン』(03)と『大統領の陰謀』(76)でそれぞれ新聞記者を演じたケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォードが初共演。

 さらにメアリーを悩ませる難問が生じる。ダン・ラザーがキャスターを務める『60ミニッツ』はCBSの良心と言える番組だったが、報道番組は製作費がかさむものの思ったほど視聴率が伸びないため、最近は高視聴率が約束されているカリスマ宗教家や人気心理学者の特番がプログラムされるようになり、このスクープを報道するには一カ月後の『60ミニッツ』しか空いていなかった。それでは他のメディアに先を越されてしまう可能性が出てくる。CBSの社員プロデューサーが「いっそのこと、5日後の『60ミニッツ』でやる?」と提案する。世界最大の権力者である米国大統領の去就を左右しかねない大スクープを、限られた僅かな時間できっちり精査してオンエアする。無茶を承知でメアリーは5日後のオンエアを呑む。スクープにはリスクが付き物だ。別件の取材に追われるダン・ラザーに叱咤されながら、メアリーたちは裏取り作業に奔走する。

 ブッシュ大統領の軍役詐称問題は2004年9月の『60ミニッツ』でオンエアされ、大きな波紋を呼ぶ。喜びを分かち合うダンとメアリー。だが、無上の快感を味わえたのはその夜だけだった。オンエア直後には保守系のブロガーが「キリアン文書は捏造されたもの」と指摘し、CBSに度々スクープを奪われてきた他局もこのブロガーの主張に追随し、番組責任者であるメアリーとダンへのバッシングを始める。キリアン文書の疑わしさよりも、ブッシュの軍歴詐称のほうが重大ではないかというメアリーの声はバッシングの嵐に掻き消されてしまう。人気キャスターとして華々しい人生を歩んできたダン・ラザーはガセネタをつかまされた男として晩節を汚すことに。メアリーも査問委員会に呼び出される。

 ブッシュの軍歴詐称疑惑問題は、単にメアリーが犯したミスでは済まなかった。テレビという巨大メディアの報道番組全体に影を落とすことになる。伝統ある米国の主要新聞も「イラクは大量破壊兵器を隠している」というブッシュ政権を支持したことで、すでに権力構造を監視するという立場を失っていた。新聞、そしてテレビからジャーナリズムが失われていく。代わって、メアリーたちを苦境に追い込んだネットメディアが台頭していくことになる。

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