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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.389

孤独な男たちから財産をむしり取る悪魔の所業! 大竹しのぶ主演のドス黒系犯罪映画『後妻業の女』

gosaigyo03尾野真千子と大竹しのぶとの新旧演技派女優バトル。焼肉屋での肉弾戦シーンは長回しで撮られ、女子プロレスばりの盛り上がりを見せる。

 本作を撮り上げたのは読売テレビ出身の大ベテラン・鶴橋康夫監督。読売テレビを退職後もフリーのディレクターとして活躍し、脚本家・野沢尚の遺作『砦なき者』(テレビ朝日系)や池端俊作脚本作『ぶるうかなりあ』(WOWOW)などの意欲作・問題作を次々と放ってきたテレビ界の生き伝説だ。映画監督として『愛の流刑地』(07)と『源氏物語 千年の謎』(11)を撮っているが、どちらもセックスと死を題材にしたもので、本作と繋がるものを感じさせる。男は射精した後の虚無感に耐えきれず、身近にいてくれる女性に愛情を覚えるのかもしれない。見ようによっては、大竹しのぶ演じる小夜子は家族と疎遠になった老人たちの最期を看取る死神であり、また聖女のようでもある。2014年に刊行された黒川博行の原作小説『後妻業』(文藝春秋)は生々しい犯罪ものだったが、鶴橋監督は大竹しのぶから陰と陽の相反する魅力を引き出した上で、したたかに生きる女性賛歌の犯罪コメディへと大胆にアレンジしてみせた。

 悪魔のような女・小夜子への反撃を耕造の娘・朋美は試みるが、では朋美は心が清らかな女性かというとそうでもない。建築デザイナーである朋美は、仕事が忙しいことを口実にボケ始めた父親の世話をすることから逃げてきた。そんな自分に後ろめたさを感じていたがゆえに、弱みにつけこんできた小夜子が余計に許せない。焼肉屋で、大竹しのぶと尾野真千子が激しくしばき合うシーンは本作の見どころだ。さらに大竹は笑福亭鶴瓶とのベッドシーンも演じてみせる。大竹の熱演に触発されたのは尾野だけではない。柏木の情婦役を演じる若手女優・樋井明日香は『さよなら歌舞伎町』(15)でもフルヌードになったが、今回はさらに気持ちのよい脱ぎっぷりを見せる。『後妻業の女』に登場する女優たちはみんなキラキラと輝いている。いや、ギラギラと輝く。女たちが眩しく輝く姿に、男はもうひれ伏すしかない。
(文=長野辰次)

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『後妻業の女』
原作/黒川博行 監督・脚本/鶴橋康夫 出演/大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ、風間俊介、余貴美子、ミムラ、松尾論、笑福亭鶴光、樋井明日香、梶原善、六平直政、森本レオ、伊武雅刀、泉谷しげる、柄本明、笑福亭鶴瓶、津川雅彦、永瀬正敏
配給/東宝 PG12 8月27日(土)よりロードショー公開
(c)2016「後妻業の女」製作委員会
http://www.gosaigyo.com

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