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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.390

本命とはエッチせず、非本命とエッチしちゃう! 肉体言語としてのSEX『好きでもないくせに』

sukidemonaikuseni03大胆な濡れ場は撮影初日に行なわれた。璃子いわく「上京してすぐの頃は若気の至りの黒歴史があった。今でも好きな人とはできないです」。

 新人女優・璃子の体当たりの濡れ場を、臨場感たっぷりに描いてみせたのは1978年生まれの吉田浩太監督。これまでにも、江口のりこ&染谷将太主演の匂いフェチもの『ユリ子のアロマ』(10)、女子校の拷問部を舞台にしたガールズSMムービー『ちょっとかわいいアイアンメイデン』(14)など、変わった性癖を持つ若者たちのビミョーな感情をモチーフにしてきた。ピンク映画とはひと味異なる、ライト感覚な官能コメディを得意とする監督だ。恋愛対象ではないもののエッチしまう本作の琴子と元気の関係は、世間的にはセックスフレンド、ヤリ友になるわけだが、裸と裸のお付き合いを重ねることで2人の間には恋愛感情とは違う、“セックスフレンドシップ”とでも呼ぶべき奇妙な感情が芽生えていく。あまりクローズアップされることのないレアな心理なだけに、より興味をそそる。

 セックスを単に生殖を目的にした行為として定義してしまうと、性欲を伴って生きる人生はとても窮屈で、息苦しいものになってしまう。その点、フィクションである映画の世界では、セックスはもっと大らかなもの、人と人とを繋げる自然な営みとして描かれる。琴子も元気も陸もFacebookやLineを使って頻繁に他者とのコミュニケーションを図るけれど、男と女の間に横たわる大きな大きな溝の問題は、最新のコミュニケーションツールを駆使しただけでは到底解決できない。言葉よりも、もっと饒舌な肉体言語としてのセックスの在り方を本作は浮かび上がらせる。“謎の聖女”璃子はカメラの前ですっぽんぽんになることで、心の中に渦巻く言語化されていない感情を繊細かつ雄弁に語ってみせる。
(文=長野辰次)

『好きでもないくせに』
監督・脚本/吉田浩太 出演/璃子、根岸拓哉、川村亮介、神戸浩、藤田朋子 
配給/太秦 9月3日(土)よりシネ・リーブル池袋にてレイトショー公開 ※18歳以上のみ鑑賞可能
(c)2016 キングレコード

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