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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.393

北朝鮮版“ゴジラ”は歪んだ映画愛が生み出した!『将軍様、あなたのために映画を撮ります』

shogunsama02「事実をそのまま描くこと」を条件に、インタビューに応じた最近のチェ・ウニ。北朝鮮で生死を共にしたシン・サンオクとは復縁を果たす。

 金正日から白羽の矢が当てられたのは、1960年代に韓国で多彩なヒット作を飛ばしたシン・サンオク(申相玉)監督。彼を北朝鮮に連れてくるために、北朝鮮の工作員たちは綿密な計画を練り上げる。1978年1月、まずシン・サンオク作品のミューズとして活躍した女優で元妻であるチェ・ウニ(崔銀姫)が香港で拉致される。当時、チェ・ウニは愛人を囲っていたシン・サンオクとは離縁状態だったが、元妻が香港で行方不明になったことからシン・サンオクはみずから現地で捜索に乗り出す。チェ・ウニ失踪から6か月後、今度はシン・サンオクが消息を絶つ。2人とも北朝鮮へ強制連行され、5年間にわたって個別にチュチェ思想と将軍様の恐ろしさを学ぶことになる。北朝鮮に入国したチェ・ウニは金正日が笑顔で出迎え、表向きは手厚く扱われる。ソ連映画『女狙撃兵マリュートカ』(56)を金正日と一緒に鑑賞するが、主人公が射殺されるラストシーンを観て、チェ・ウニは「裏切ったら容赦なく殺しますよ」という金正日からのメッセージだと気づく。シン・サンオクは元妻に一度も逢えないまま、強制収容所で拷問責めの日々を過ごす。絶望感に打ちひしがれた頃を見計らい、金正日の立ち会いのもとでシン・サンオクとチェ・ウニは劇的に再会。2人は金正日に忠誠を誓い、北朝鮮で世界最高の映画を作ることを約束する。

 シン・サンオクが監督と撮影を兼任し、国際派女優として鳴らしたチェ・ウニが助監督をつとめるという二人三脚体制で、1983年〜1985年の3年間で17本もの映画が作り出された。金正日がプロデューサーなので、予算は使いたい放題だった。集大成とも言える最後の17本目の作品が、北朝鮮初の特撮大作『プルガサリ』となる。特技監督の中野昭慶、スーツアクターの薩摩剣八郎ら『ゴジラ』シリーズに参加していた精鋭スタッフを日本から招き(拉致ではないが、常に監視された状態だった)、『プルガサリ』を本家ゴジラと遜色のないスペクタクル大作に仕上げてみせた。DVD化されている『プルガサリ』を改めて観ると、民衆を弾圧する悪い国王が巨大化したプルガサリに踏み潰されるクライマックスは、独裁者としての立場を確固たるものにしつつあった金正日への返歌的メッセージとしても解釈できる。金正日はそのことに気づいていたのか。それともシネフィルでもあった金正日は“権力者はいつの時代も愚民から批判されるもの”と冷静に受け止めたのか。世界公開を目指して作られた大作『プルガサリ』だったが、結局のところ完成直後にシン・サンオクが引き起こした事件によってお蔵入り状態となる。


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