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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.391

これはエマ・ワトソン主演版“愛のむきだし”だ!! 実在したカルト教団からの脱出劇『コロニア』

colonia01あの“魔法少女ハーマイオニー”ことエマ・ワトソンがカルト教団に潜入する社会派サスペンス『コロニア』。無事に生還できるのか?

 現在も「アーレフ」と「ひかりの輪」に分裂して活動を続けるオウム真理教、900人以上もの信者が一斉に集団自殺を遂げた人民寺院、映画監督ロマン・ポランスキーの妊娠中の妻シャロン・テートを惨殺したチャールズ・マンソン率いるザ・ファミリー……。様々なカルト集団がこれまでにショッキングな事件を引き起こし、世界中を驚愕させた。これらのカルト集団はそれぞれの教祖が考え出した終末思想に基づくXデーの決行によって、皮肉にも組織の内情が明らかになっていったが、国家権力と巧妙に結びつき、長きにわたって楽園時代を謳歌しているカルト系教団も少なくない。エマ・ワトソン主演映画『コロニア』は南米チリに実在した「コロニア・ディグニダ」を題材にし、カルト系コミュニティーの実態をリアルに再現している。恋人を拉致監禁されたヒロインが、カルト教団に入信し、恋人を助け出そうとする社会派サスペンスとなっている。

 コロニア・ディグニダは元ナチスの軍曹パウル・シェーファー(1921~2010)が逃亡先のチリで1961年に設立したドイツ系移民のコミュニティー。表向きはパブテスト系の慈善団体を装っていたが、チリのピノチェト独裁政権と裏で繋がっており、ピノチェト政権に逆らう思想犯たちを拷問&洗脳する秘密研究所、および武器貯蔵基地としての役割を担っていた。アウシュヴィッツ収容所で人体実験を行なった殺人医師ヨーゼフ・メンゲレも一時的に匿われていたと言われている。有刺鉄線のフェンスで囲われた広大なコロニア内には民間人は誰も手を出すことができなかった。チリの民主化が進んだ1990年代後半になり、少年たちへの性的虐待からシェーファーに逮捕状が出るまで、シェーファーはこのコロニア内の絶対的な支配者“教皇”として君臨し続けた。

 こんなヤバいカルト教団への潜入を試みるのは、『ハリー・ポッター』シリーズの魔法少女ハーマイオニー役でおなじみのエマ・ワトソンだ。本作でのエマの役は、ドイツの航空会社に勤めるキャビンアテンダントのレナという普通の女性。フライトでチリの首都サンディアゴを訪れたレナ(エマ・ワトソン)は、ジャーナリストで恋人のダニエル(ダニエル・ブリュール)との逢瀬を楽しむ。アパート内で延々といちゃついていた2人だったが、折しもチリは軍事クーデターの真っ最中。民主的に選ばれた社会主義政権から軍事政権へと逆戻りし、街中にきな臭さが充満していた。軍事政権は外国人にも容赦なく、反ピノチェト勢力を支援していたダニエルは拉致され、洗脳施設であるコロニア・ディグニダへと送り込まれてしまう。ピノチェト政権に反対していた人々も、悪名高いコロニアは恐ろしくて誰も関わりたがらない。彼を救い出せるのは自分しかいない。そう腹を括ったレナは、コロニアの門を叩き、入信希望者として潜入する。

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