日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 法廷ドラマ『グッド・ワイフ』
ベテラン海外ドラマライター・幕田千宏の「すごドラ!」

浮気された妻が大変貌! ヒラリー・クリントンをモデルにした法廷ドラマ『グッド・ワイフ』

とはいえ、あまりに争いばかりでは疲れるとの配慮なのか、基本的にはシリアス路線ながら、なぜか面白キャラが集中しているのもこのドラマにおける法曹界。マイケル・J・フォックスが演じる、自身の病気をしたたかに利用し、露骨な同情戦法を得意とする食わせ者弁護士ケニングや、とっぴな行動が多く、常人には理解不能な変わり者だが、弁護士としては超一流なエルズベス(ちなみに、同じく弁護士である元夫も相当の変わり者)などは、ゲスト・キャラクターながらレギュラー・キャラクターに負けず劣らずの人気を集め、法廷では絶対的な存在である判事にも、ちょいちょいとクセ者・変わり者キャラが登場する。そんな彼らをどうあしらっていくのかも、このドラマの楽しみのひとつだ。

そして、シーズンを重ねるほどに色濃くなっていくのが、政治ドラマとしての側面だ。夫のセックス・スキャンダルを乗り越えた人物といえば、第一に名前が挙がるのがヒラリー・クリントンだが、アリシアのキャラクターは彼女を含めた実在する複数の人物がモデルとなっている。シーズンが進むにつれ、アリシアの生活は、政治の世界に巻き込まれていくが、もはや夫婦生活は破綻していながらも、アリシアは夫のキャリアのために離婚はせず、表向きは夫を支える良き妻を演じながら、友人だったウィルとの関係に揺れ動く。そんな危険なスキャンダルをはらみながら、政治の世界の舞台裏がリアルに描かれ、夫のキャリアが地方検事からどんどんスケールアップしていくに従って、一筋縄ではいかない政治ドラマが展開される。

 この政治ドラマの中で肝となるのが、夫・ピーターの選挙参謀であるイーライ・ゴールド。表に立つのはピーターであり、妻アリシアであっても、その絵図を描いていくのは裏方であるイーライだ。いかに対立候補を出し抜き、ピーターとアリシアのイメージアップを図り、スキャンダルをもみ消すか。法廷ドラマだけでなく、政治の世界ならではの頭脳戦の面白さにも注目だ。時代性も積極的に取り込んでいる本作は、ファイナル・シーズンでは現在進行形のアメリカ大統領選挙の予備選がクローズアップされている。この点においても、まさに今こそ見ておきたいドラマだ。

★このドラマにハマった人におすすめ!
『スキャンダル』
『ハウス・オブ・カード』
『殺人を無罪にする方法』

●まくた・ちひろ
映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

最終更新:2016/09/30 18:14
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