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セーラー服の少女が男たちの首を斬り、腸をえぐる! 終戦直後の日本の“裏社会”を生きる美貌の殺人鬼を描く

■「もうちょっと読みたい」のちょうどよさ

——ところで、ずっと聞いてみたかったんですが、漫画のタイトルって小原さんが考えてるんですか?

小原 編集の人の意見が入ることもありますけど、だいたいは自分で考えてますよ。漫画を描きながらタイトルを考えて、徐々に案を絞ってくんですけど、結局、決まるのはいつも一番最後ですね。ギリギリまで考えちゃうんで、予告の時には「なんだったら(仮)ってつけておいてください!」ってことがよくあります。

——全体像が見えないと、タイトルつけるのって難しいじゃないですか。その点、漫画っていつまで続くかとか始まった段階では決まってないことも多いし、悩むだろうなって思います。

小原 考え始めると、「まだ何かほかにいいのがあるんじゃないか」って、ずっと思いますしね。例えば『星のポン子と豆腐屋れい子』(講談社)は、俺が原作を書いて、トニーたけざきさんが作画してるんだけど、俺の考えたタイトルは『ポン子とれい子』だったんですよ。それが最初に浮かんで、それからはもう何も出てこなくて。でもトニーさんが、最後の最後まで「もうちょっと、もうちょっと」って、こだわったんですね。

——たまたまその時に、お会いしましたよね?

小原 そうそう(笑)。最初は、俺の仕事場で、俺とトニーさんと編集の人と3人で考えてたんですけど、1時間以上かかって、タイトルを書いた紙が山のようになっても決まらなくて。「もうここでこれ以上考えても出てこないから、メシ食いにいきましょう!」って外に出て、それから、ぶっちょさんのお店(ぶっちょ柏木氏がオーナーを務めるバー「なんば紅鶴」)に行って、そこでもトニーさんが「これかな? これかな?」って粘ってたんですよね。

——トニーさんが店にいる人に、「豆腐っていうたら、なんや?」って聞いて回って、「◯◯です!」って答えたら、「それはもう出たんや!!」って怒られるという(笑)。

小原 お客さんは何がもう出てるかなんて知らないのに、ほんと理不尽でしたよね(笑)。でも、おかげで決まったタイトルが、『星のポン子と豆腐屋れい子』。ひとりで描いてたら『ポン子とれい子』で終わってたんで、これが合作の面白さだなと思いました。

——個人的に、『星のポン子と豆腐屋れい子』、すごく好きなんですよ。豆腐屋の子ども・れい子とヒロシが出会った奇妙な生物ポン子が、宇宙から来たセールスウーマンで、豆腐屋の再建を手助けする……って、一見ほのぼのSF系かと思いきや、いきなり予想外の展開になったり、いい意味で期待を裏切られるというか。話にまったく無駄がないなと思いました。

小原 それは嬉しいですね。それは、「アフタヌーン」(講談社)での掲載が決まった段階で、単行本1冊で完結するって決まってたんです。なので、最初からオチを決めることができたし、あとはもう、そのオチに向かうために“騙し”とかをどうしようって考えることができて。

 終わりが見えてるからこそできた作品というか、あれが長期連載だったら、途中で破綻してた可能性がある。もちろん、上手い人なら破綻させずに見せていけるんですけどね。『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)とか、どんどん話をひっくり返しながら続けて、上手いやないですか。でも、そういうストーリー作りは、俺は1冊が限界かな、と思ってたんです。

——冒頭の話から、1話完結と言われてもおかしくない感じだったんで、入りやすかったですね。それでいて、どんどん急展開していくから、飽きずに読めて、「もっと読みたい」という感じで終わる。

小原 漫画って、「もうちょっとだけ読みたい」くらいがよくないですか? それが俺のベストです。「この先どうするんやろう」的な“気持ち悪さ”っていうのが、欲しいんです。読んだ人の頭の中で、何度も繰り返して反芻する余地が残ってるほうが個人的に好きなので。ほら、『エヴァンゲリオン』だって、テレビじゃ終わってないですか(笑)。

——そうか! だから『エヴァ』は人気があるんですね!

小原 いやいや、もちろんそれだけじゃないと思うけどね(笑)。

(インタビュアー/ぶっちょ柏木)

■小原愼司(おはら・しんじ)
1969年、大阪生まれ。93年、アフタヌーン四季賞春のコンテストにて『お姉さんといっしょ』(『ぼくはおとうと』第1話)で四季大賞を受賞し、デビュー。『菫画報』(講談社)、『地球戦争 THE WAR OF THE HUMAN』(小学館)など、古典SF系ストーリーを得意としている。08年には、『二十面相の娘』(メディアファクトリー)がテレビシリーズとしてアニメ化された。

■イベント情報
青猫について 単行本発売記念トークイベント! 〜Web漫画の現在とこれから~
会場:なんば紅鶴(〒542-0074 大阪府大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F
日時:10月29日(土) start 19:30
入場料:2000円 (1drink別)
出演 :小原愼司、凸ノ高秀、B・カシワギ、林人生

『菫画報』『二十面相の娘』『地球戦争』と独自のレトロ感漂う世界観を描き切る漫画家・小原愼司の最新作、『青猫について』の単行本1巻が発売された。これを記念して、「なんば紅鶴」では小原氏のトークイベントを敢行!  この『青猫について』は、「やわらかスピリッツ」(小学館)というWEB媒体での連載作品である。現在、紙媒体とネット媒体の移り変わりの過渡期でもあり、我々読み手も、そして漫画の描き手もその変化に何を感じているのか? また、表現は変わるのか?——そんなテーマについても言及すべく、WEB上でも広く活動する漫画家・凸ノ高秀氏もゲストとしてお招きし、これからのWEB漫画の可能性についても掘り下げていきたい。当日はWEBでは見れない生原稿も公開! 詳細は、公式サイトへ→http://benitsuru.net/archives/15935

最終更新:2016/10/16 07:15
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