新年は危険なゲームで運試しに挑戦! 神経質な現代社会をバーチャル化してしまう『NERVE/ナーヴ』の世界
「NERVE」の挑戦者となったヴィーに与えられた最初のミッションは、【ダイナーで知らない男とキスすること】。意を決したヴィーはダイナーに一人で佇んでいた青年・イアン(デイヴ・フランコ)へのキスに成功。この様子はヴィーのスマホを通じてネット中継されており、ファーストミッションをクリアしたヴィーは賞金と視聴者からの声援を浴び、今まで感じたことのない高揚感を覚える。実はイアンも「NERVE」の挑戦者で、2人はタッグを組んで次々と難易度が上がっていくミッションに挑む。それまで地味で冴えない存在だったヴィーが、危険なミッションを体当たりでクリアしていくことで、イケてる女の子としてキラキラと輝き始める。「誰でも15分間はスターになれる」とはアンディ・ウォーホルが残した名言。そんな言葉が相応しい、ネットセレブとなったヴィーにとって最高に刺激的な一夜が過ぎていく。
知らない相手から電話でミッションを与えられ、クリアすると高額の報酬がもらえるというプロットは、タイ映画『レベル・サーティーン』(06年)とほぼ同じ。『レベル・サーティーン』ではツールがまだ携帯電話だったが、『NERVE』ではスマホへとバージョンアップ。また、冴えない男性サラリーマンが主人公だった『レベル・サーティーン』では【ウ●コを完食せよ】といった強烈グロ系ミッションが用意されていたが、『NERVE』では【目隠しをしてバイクで疾走】といった尾崎豊系“危険な青春”ミッションへとシフトチェンジ。まぁ、ここらへんはハリウッド映画らしいアレンジですな。
下流人生を歩んでいた主人公たちが危険なゲームに身を投じる作品は、藤原竜也と香川照之が顔面バトルを繰り広げた『カイジ 人生逆転ゲーム』(09年)、ゲテモノ喰いがお好きな方にお勧めな『ザ・スリル』(13年)、緊迫のロシアンルーレットを題材にした『13/ザメッティ』(07年)など、世界各国で今世紀以降いろいろと作られている。それらの作品では金欠状態の主人公がお金欲しさで違法なゲームに参加することになるが、『NERVE』の主人公は自己承認と刺激を求めてゲームに参加するという動機が異なっているところがポイント。ヴィー役のエマ・ロバーツはジュリア・ロバーツの姪っ子、デイヴ・フランコはジェームズ・フランコの実弟と身内の七光りで芸能界入りした主演の2人だが、本作ではなかなかの熱演ぶりを見せている。七光りだけで生き残れるほど、ハリウッドの世界もあまくはないようだ。
ゲーム中、ヴィーとイワンはブランドショップでの万引きまがいの行動やストリップ、さらにはバイクでの危険走行など、違法行為の数々をやらかしてネット上で人気者になっていく。バカッターや過激ユーチューバーを思わせる展開だが、執拗にモラルやマナーを求めたがる息苦しい現代社会への反発心、同調圧力からの脱出願望がそこには感じられる。ただし、視聴者の考えるミッションはどんどん過激になり、挑戦者たちを追い詰めていく。ゲームを勝ち進んでいったヴィーたちは、やがて「NERVE」というゲームを考案した主宰者と対峙することに。暴走化したゲーム「NERVE」を、ヴィーは止めることができるだろうか。
学校や職場でも、セルフプロデュースによってキャラクター化された自分を演じることが日常となっているスマホネイティヴ世代。彼らにとって『NERVE』は共感度が高い作品だろう。
(文=長野辰次)
『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』
原作/ジーン・ライアン 監督/ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン 脚本/ジェシカ・シャーザー 音楽/ロブ・シモンセン
出演/エマ・ロバーツ、デイヴ・フランコ、ジュリエット・ルイス
配給/プレシディオ 1月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
(c)2016 LIONSGATE ENTERTAINMENT INC.ALL RIGHTS RESERVED.
http://www.start-nerve.jp
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