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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.416

もののけと肉体関係を結ぶという至高の背徳感! 小泉八雲の世界を実写化した官能ホラー『雪女』

もののけと肉体関係を結ぶという至高の背徳感! 小泉八雲の世界を実写化した官能ホラー『雪女』の画像1杉野希妃主演・監督作『雪女』。雪女は人の精気を吸い取る魔物として村人たちから恐れられていた。

 人間ならざる美女と出逢った若者の心に刻み込まれた死への恐怖心と背徳的な性欲とがもたらした奇妙なラブストーリー。ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲が書き残した『怪談』の中の一編『雪女』は、エロス&タナトスに彩られた珠玉のエピソードだ。ギリシャで生まれ、アイルランドで育った小泉八雲は日本での質素な生活を愛し、妻・節子に日本の昔話を語らせることで『怪談』を書き上げた。『アラビアンナイト』の語り部・シェヘラザードのように、節子は夜ごと艶かしく日本に言い伝わる不思議な物語を夫・八雲に語って聞かせていたのだろうか。杉野希妃監督&主演作『雪女』は“もののけ”と人間との禁断の愛を官能シーンを交えながら描いている。

 小泉八雲が書き伝えた掌編『雪女』をベースに、杉野監督は独自の解釈を加え、上映時間96分の長編映画に仕立ててみせた。時代設定は明確にしていないが、昭和時代を思わせるのどかな山村が舞台だ。若い猟師の巳之吉(青木崇高)は仲間の茂吉(佐野史郎)と冬山へ猟に出たが、激しい吹雪に遭い、狭い小屋で夜を明かすことになる。夜更けに目が覚めた巳之吉は茂吉の上にひとりの女が覆い被さり、茂吉の命を吸い取る瞬間を目撃してしまう。白装束姿の女は雪女(杉野希妃)だった。巳之吉が恐ろしさのあまり身動きできずにいると、雪女は「このことは誰にもしゃべるな。もし、しゃべったら、お前の命を奪う」と言い残して姿を消す。巳之吉は恐怖心と共に、この世のものと思えない雪女の美しさが忘れられなくなる。それから1年後、巳之吉は山道で迷っている若い娘・ユキ(杉野2役)と出逢う。ユキが雪女とそっくりなことに巳之吉は驚くが、巳之吉は母親(宮崎美子)が待つ我が家へとユキを案内する。母親はひとり者の息子が若い娘を連れてきたことに大喜びした。

 人里離れた一軒屋で若い男女が一緒に暮らせば、夜の契りを交わすことは自然な流れだった。ある晩、2人で湯治へと出掛け、ユキは巳之吉に何か伝えようとするが、巳之吉はユキの口を激しく吸い、ユキが秘密を明かそうとするのを塞いでしまう。ユキのひんやりとした白い肌を、すでに巳之吉は手放せなくなっていた。しばらくしてユキは身籠り、ウメという女の子を産む。利発な少女へと育っていくウメ(山口まゆ)。ユキは出逢ったときのまま、いつまでも若々しい。猟師をやめて、村にできた工場に通うようになった巳之吉だったが、幸せで満たされた日々だった。だが、この穏やかな生活はいつか壊れてしまうのではないかという不安感も常に心の奥には潜んでいた。そんな折り、村で謎めいた凍死体が立て続けに見つかり、ユキ母子に疑惑の目が向けられる──。

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