今年も“劇場アニメ”の隆盛は続く!? 「今」を見据えた神山健治節が唸る『ひるね姫~知らないワタシの物語~』レビュー
『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』など、絶好調の域を超えるほどであった2016年国産アニメーション映画の勢いは、2017年も留まることなく、むしろ加速するばかりの様子ではある。また、ちょうど今年は国産アニメーション映画生誕100周年。それを記念するかのような意欲的な新作も続々登場し始めてきた。
神山健治監督の『ひるね姫~知らないワタシの物語~』も、まぎれもなくその1本であり、国産アニメ映画としてもこの春一番の話題作と言って過言ではないだろう。
2020年の東京オリンピックを間近に控えた夏の岡山県倉敷市。小さな自動車修理工場を営む元ヤンの父・モモタローと二人で暮らす高校生の森川ココネは、最近よく同じ夢を見る。それは機械づくりの国ハートランドを舞台にした、魔法を使える姫君エンシェンのファンタジックな冒険譚であった……。
そんなある日、突然モモタローが警察に連行され、同時に何やら怪しい男たちがココネを訪ねてくる。彼らは夢の中の世界で悪漢として登場してくる者たちであり、当然ながら現実世界でもワル。要は東京の大手自動車メーカー志島自動車取締役・渡辺一郎らが、モモタローのタブレットを奪おうと躍起になっているのだ。
やがてココネは渡辺らの追及をかわし、真実を探るべく幼なじみのモリオとともに、東京へ赴くが……。
今回は神山監督自身が創作したオリジナル・ストーリーの映画化だが、これまで彼が手掛けてきた『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』シリーズ(02年~)や『東のエデン』シリーズ(09年~)『009 RE:CYBORG』(12年)など近未来SFポリティカル作品群とは似て非なる味わいに満ち溢れている。
押井守が主宰した押井塾出身というキャリアも手伝ってか、その弟子筋といったイメージが強く、現代社会をリアルに見据えながらハードSFを構築していくクールな旗手といったイメージが強い神山監督ではあるが、その実『精霊の守り人』(07年)のようなヒューマニステックなファンタジーものにこそ、この人の本領が発揮されているのではないかという気もしていただけに、今回はまさにドンピシャリの内容であった。
(その伝では、同じく押井の弟子筋・沖浦啓之が00年に異世界ポリティカル・サスペンス『人狼JIN-ROH』で監督デビューを果たした後、12年にほのぼのオバケ・ファンタジー『ももへの手紙』を発表したこととも、どこか相通じているように思える)。
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