日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 戦争が起きれば“防波堤”となるのは
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.419

戦争が起きれば“防波堤”となるのはどこなのか? 三上智恵監督の最新ドキュメンタリー『標的の島』

戦争が起きれば防波堤となるのはどこなのか? 三上智恵監督の最新ドキュメンタリー『標的の島』の画像3沖縄本島では辺野古・高江で米軍基地建設をめぐり、機動隊や警察と地元住人側との間で激しい攻防が繰り広げられている。

「本当は宮古のパーントゥや石垣のアンガマといった昔から島に伝わる伝統文化を中心にしたドキュメンタリーにしたかったんですが、やはり辺野古や高江の問題も放っておけませんし、軍事評論家によるエアシーバトル構想の解説もあり、かなり雑多な内容になったかもしれません。山里節子さんは石垣では有名な方で、節子さんの言葉と歌はとても印象的ですよね。宮古や石垣は目には見えない精神文化が先祖代々受け継がれてきている土地なんです。かつては沖縄本島も日本本土そうだったはず。沖縄の島々では“弥勒世果報(みるくゆがふ)”という言葉が祭りの場などでよく使われます。今はつらい世の中でも、神の力を借りていつか豊かな世の中になるよね。あなたと私は今は対立しているけど、いつかみんなで幸せに暮らせる時代になるよね、という意味合いで使われているものなんです」(三上監督)

 先祖が代々汗を流し、体を張って守ってきた土地に感謝し、自分の子や孫たち子孫にもきちんと残し伝えていきたい。それゆえ島で暮らす人たちの多くは、島を軍事要塞化し、戦争を呼び寄せる事態に異議を唱える。弥勒世果報が訪れることを祈り、一人ひとりがそれぞれ小さな防波堤となれば、戦火を煽る状況を防ぐこともできるはず。第3の防波堤は映画を観ている自分自身であることを本作は気づかせてくれる。
(文=長野辰次)

戦争が起きれば防波堤となるのはどこなのか? 三上智恵監督の最新ドキュメンタリー『標的の島』の画像4

『標的の島 風かたか』
監督・ナレーション/三上智恵 プロデューサー/橋本佳子、木下繁貴 
撮影監督/平田守 音楽プロデューサー/上地正昭
配給/東風 3月11日より沖縄・桜坂劇場 3月25日(土)より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー
http://hyotekinoshima.com
(c)「標的の島 風かたか」製作委員会

ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『24時間テレビ』強行放送の日テレに反省の色ナシ

「愛は地球を救う」のキャッチフレーズで197...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真