信仰だけではない“楽しめる場”としての神社へ──宮司も期待を寄せる神田明神の新スポット「明神カフェ」
一流の素材に、一流のシェフの監修。これで、美味くなければ、逆にオカシイ。また、ランチタイムにはサンドイッチがメインのセットも用意されている。そんな店内で目立つのは、美しい乙女たち。これから芸に磨きをかけるであろう声優や声優の卵である。乙女たちの給仕で、一流店の味。そして、アニメとのコラボメニューが楽しめるのが「ビストロエンターテインメント」の意味するところだ。
スライドを用いた説明の後、集まった報道陣は、並べられた料理の試食を勧められた。
オープンの2日後に備えて、その間も面接の女性が次々とやってきたり、店内は慌ただしかった。報道陣に給仕する乙女たちの動きは、まだぎこちないが、その初々しさが、何がしかのエンターテイメント性を感じさせていた。ここから、大きなホールを埋め尽くすような人気声優が育っていくのだろうか、と思った。
■神様に関わるなら、学ばなくてはならない
ようやく一息ついた和田と、まだ慌ただしく準備をする人が行き来する店の中で話を聞いた。座る椅子はターコイズブルー。これも、最近パリのカフェで流行っている配色なのだという。いくつか基本的な質問をした後、ずっと疑問に思っていたことを尋ねてみた。
「和田さん、大みそかの時に……」
「いやいや、覚えてますよ!」
半笑いのような泣き笑いのような顔をしながら、途端に和田は、身体を大きく揺らした。
「いや、あの時は本当に勉強不足でした」
なおも、身体を揺らして笑顔を作りながら、和田は言った。
「あれから、どういう変化があったんですか。単にビジネスとしてだけではないのでしょう……」
「んー……」
少し考えてから、私に正対して和田は語り始めた。
「自分も20代の頃までは、髪を青く染めてバンドとかやってたんですけど……」
今では、ふくよかな体型の和田だが、いつだったか昔の写真を見せてくれたことがある。ステージでギターを抱えている和田は、体重も今の半分くらい。何より、道で出会ったら、必ずこちらが危険を感じて道を譲ってしまうようなファッションだったと記憶している。
それでも、神社にまったく興味がないわけではなかったと、和田は言うのだ。むしろ、興味を感じながらも、深く知るきっかけがなかったのだ、と。
「会社の事業の中で、偶然のきっかけですが、京まふ(京都国際マンガ・アニメフェア)のときに、平安神宮の境内での奉納公演を手伝ったり、神田明神とも、仕事で関わることになりました。その中で、自分でも神様や神社とはどう関わっていくかを考えるようになりました。参拝の作法とか、行事とかも。せっかくここまで神様に関わらせてもらっているのなら、ちゃんとやらなきゃいけないな、と」
謙遜なのだろうか、和田は、まだ自分は「にわか」だとも語った。けれども「信心深くなったのは確か」だとも。
これも、神様の采配なのだろうか、と考えた。正直なところ、あちこちにアニメのポスターや売店も出来た神田明神の境内には、少しばかりの違和感がある。神社としては、少し賑やかすぎるのではないかとも思うのだ。
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